コロナ禍以降の社会の急速なデジタル化の中で、地方自治体職員に求められる知識・スキルが近年大きく変容しています。そうした中、人材育成の具体的な手法や、「人材育成を行うための人材」について課題を感じている団体も多いのではないでしょうか。
今回は、スマートシティや地方創生、官民連携事業を推進されながら、職員の人材育成にも重点的に取り組まれている三木市役所総合政策部縁結び課主幹兼地方創生係長
清水 暁彦 氏にお話しを伺いました。
人材育成に係る課題はどこの組織に所属していても同様であると思います。特に行政においては、様々な業務に従事する必要があることから仕事ごとに役割分担を明確にしているため、横のつながりをコーディネートする人材が不足していると感じています。さらに、民間事業者との協働という部分での経験が不足しており、これらの課題に対しチームとして取組むことにチャレンジする風土づくりが必要であると考えています。そこで、どのようにして上職者や民間事業者と協働すればうまくいくのかという視点に加え、「思い込みや経験に頼るのではなく、課題を明確にし、解決に向けた仮説を立て、データを用いて分析し、ストーリーを描くこと、さらにその内容を人に伝え、共感を得ることではじめて自分事として、自分の意志で楽しみながら仕事を進められる」、そんな人材育成ができたら良いなと考えています。行政だけではできないことでも近畿経済産業局さんや日本オラクルさん等のお力を借り、職員が様々な人材に触れながら学ぶきっかけを創りたいと思い、そこに向けて動いてきました。
とにかく狭い井戸の中で物事を完結せず、井戸のてっぺんに上り外の世界という広い視点で、無いものは他者と組む。そのために「今あるものを見つめ、磨き、それぞれの強みを最大限生かす」、そのような、現状と課題を分析し、考え、動く人材が少しでも増えるよう日々井戸の水を増やし、水かさが増すことで外の世界が見えやすいようにする環境づくりに努めています。
参加者からは、「データの具体的な加工方法を学ぶことができて良かった。また、自分たちで準備したデータを活用して、分析結果を見ることができたのは貴重な経験であった」、といった感想がありました。また「分析するうえで問題となってくるのは、作業時間と必要なデータをどのように整理するかということになるので、その部分に対してどう対策するか考える必要があると思います。」といった問題提起もありました。
アンケートではワークショップの内容に「大変満足している」、「満足している」との回答が約9割となっており、多くの学びを得られたのではないかと思っています。
今年1年の全庁的な人材育成テーマとしてデータ活用・分析を掲げている中で、プロの目線でどのように考えているのか今回学ぶ良い機会となりました。今後別の事業者と協業したツール活用の研修も行う予定であり、そこで今回学んだことを生かせると思います。どういうゴールを目指して、どういうデータを取得するのか、取得できないデータについてはどのようにするのか、そこまで考えていくことが重要です。 データの量と質を上げていきながら繰り返し仮説を立てて、検証していくことが大事ですし、そういう意味でも今回の研修で学んだことを一過性のものとせず、定常業務でも活用していきたいと思っています。
行政だけでは解決できない課題が山積し続ける中で、我々に無いスキルやノウハウをともに共有いただきたいです。人口減少・少子高齢化という世界の潮流と真逆に動く日本において地方自治体の力になることを期待したいです。そのためにも、同じ志やビジョンを持つ様々なステークホルダーや仲間とともに、出来ない理由を並べるのではなく、どうすれば出来るのかを考え、前に進みながら実証し、確認、改善を繰り返しながら地域課題解決型のビジネスモデルの構築を図っていただきたいと思っています。
清水 暁彦 氏
三木市役所総合政策部縁結び課主幹兼地方創生係長
ゼネコンで建築部門、現場監督を17年、国内外のプロジェクトに従事し、異分野である、行政業務にチャレンジ中。
2015年三木市役所入庁。地方創生の取りまとめ及び推進や、インバウンド、官民連携、地域資源のブランド化、
戸建住宅団地再耕プロジェクト等、営業課、企画政策課を経て、現在、総合政策部縁結び課に従事しながら推進中。
三木市は兵庫県南部に位置する人口約7.4万人の都市。山田錦(酒米)の主生産地であり、三木金物ブランドも全国的に有名。市域内を中国及び山陽自動車道が通過するなど、全国的にも交通の要衝として注目され、数多くのゴルフ場が立地するほか、多彩な観光資源を有する。直近ではSDGs未来都市、万博国際交流プログラム推進自治体、兵庫県スマートシティモデル地区に選定されるなど、環境 ・ インバウンド観光 ・ スマートシティ等にも注力している。