ハイブリッド・クラウドとはユースケース、長所と短所

Chris Murphy | オラクル・コンテンツ・ディレクター| 2024年2月29日

ハイブリッド・クラウドによりコンピューティング・ニーズを満たす企業は、自社のオンプレミス・データセンターとパブリック・クラウド・プロバイダーによるサービスの両方を両方を使用します。「ハイブリッド・クラウド」という用語は、この記事で詳しく説明するように、さまざまな導入モデルやビジネス・ユースケースを含む広範なIT戦略を表すようになりました。

ハイブリッド・クラウドとは

ハイブリッド・クラウドは、企業のオンプレミス・データセンターで稼働するハードウェアとソフトウェアと、サードパーティ・プロバイダーが運営するパブリック・クラウドのコンピューティング容量を組み合わせたコンピューティング環境です。ほとんどの組織は、オンプレミスとパブリック・クラウドベースのリソースを含む、使用するITシステム全体に適用されるガバナンス、セキュリティ、プライバシーポリシーを策定します。このような高レベルのポリシーをインスタンス化するために使用されるツールはさまざまで、パブリック・クラウド・プロバイダーはネットワークおよびコンピュート・ストレージ・リソースの管理負担を顧客と共有しますが、オンプレミスのシステムは組織の内部スタッフによって管理されます。

ハイブリッド・クラウドは広く使用されている表現ですが、正確な意味を持つ専門用語ではありません。「一部はクラウドに、もう一部はデータセンターに」というIT用語だと考えてください。

ハイブリッド・クラウドの概念は、さまざまなシステム、構成、管理方法を含むことのある幅広いものです。より具体的な用語は、一般的に、ハイブリッド・クラウドとして認められるバリエーションを表現するために使用されます。

たとえば、分散クラウドは、パブリック・クラウド・サービスを複数の地域にわたって分散させるモデルです。これにより、企業はパブリック・クラウド・インフラストラクチャの分散という特性を活用しながら、運用、ガバナンス、更新を一元管理することができます。

マルチクラウドも、ハイブリッド・クラウド・モデルのもう1つの重要かつ拡大しつつある側面です。マルチクラウド戦略をとる企業は、2つ以上のクラウドを使用し、あらゆるワークロードに最適なオプションを選択します。これは、異なるクラウド・プロバイダーから提供されるサービスを選択したり、自社のデータセンターのシステムを活用することを意味する場合があります。

これらやその他の改善点は、ハイブリッド・クラウド・アプローチが実行可能な戦略として広く受け入れられており、さまざまなアーキテクチャや導入モデルを使用して導入されていることを示しています。

主なポイント

  • ハイブリッド・クラウドにより、企業はオンプレミスのデータセンターと複数のクラウドの両方を使用することができ、管理・セキュリティ・ガバナンスポリシーを共有し、データ統合を簡素化することで環境を連携させることができます。
  • ハイブリッド・クラウドを使用することで、企業はオンプレミスのデータセンターによる管理を維持しながら、最新のテクノロジーへのアクセスと新しいビジネス・ニーズへの迅速な対応など、パブリック・クラウドの優れた機能の一部を利用することができます。
  • 企業が100%クラウドの導入ではなくハイブリッド・クラウドを選択する理由は、データ・レジデンシーのルール、段階的なクラウド移行への関心、低レイテンシのニーズ、特定の規制への準拠などさまざまです。
  • ハイブリッド・クラウドにはさまざまな導入モデルがあります。

ハイブリッド・クラウドの説明

ハイブリッド・クラウドは、企業のオンプレミスのハードウェアとソフトウェアを、クラウド・プロバイダーのコンピューティング容量と連携させます。企業は複数のパブリック・クラウド・プロバイダーを利用することがよくあります。これらのクラウドおよびオンプレミスのコンピューティング環境は通常、ある程度の共通した管理およびセキュリティ・ポリシーに加え、実行場所に関係なくアプリケーションを統合する機能を共有しています。

パブリック・クラウド・コンピューティング・リソースには、ERPや CRMアプリケーションなどのSoftware-as-a-Serviceアプリケーションや、コンピュート、ストレージ、クラウド・データベース、開発環境などのInfrastructure as a ServiceやPlatform as a Serviceが含まれることがあります。オンプレミスのリソースも同じ範囲を網羅します。たとえば、クラウドベースのCRMアプリケーションとデータを共有する必要があるレガシー請求システムのように、オンプレミスのデータセンターは、まだ役割は果たしているものの、クラウドアプリケーションと統合される必要があるレガシー・アプリケーションをサポートする場合があります。あるいは、オンプレミスのeコマース・アプリケーションは、顧客の需要が急増した場合、バースティング容量に対応するためにパブリック・クラウドを利用する場合があります。

ハイブリッド・クラウドの仕組み

クラウド環境とオンプレミス・コンピューティング環境は、ハイブリッド・クラウド・アーキテクチャで連携します。ハイブリッド・クラウドとは、クラウドとオンプレミスのソフトウェアとインフラストラクチャが何らかの形で統合され、データ交換を行うことを指す幅広い用語です。

ハイブリッドは通常、パブリック・クラウド・プロバイダーと社内のITスタッフの間で管理責任が共有されることを意味します。たとえば、サービスはプロバイダーによってリモートで管理されながらも、企業内のデータセンターに設置されているクラウドの場合、社内のITチームはデータセンターの電力、冷却、運用を管理し、パブリッククラウド・サービスプロバイダーは、提供されるサービス(SaaS、PaaS、IaaS、またはその3つの組み合わせ)に応じて特定のハードウェアやソフトウェアのメンテナンスとアップデートを行います。

管理システムはハイブリッド・クラウド環境の全体像を提供し、システム・マネージャーは相互接続されたノードをモニターすることができます。システムはまた、企業のITアーキテクトが確立する必要がある、共有のセキュリティ・ネットワーク、データ統合ポリシーおよびアプローチで連携されます。システム・マネージャーは、ハイブリッド・クラウドの各要素の構成とトラブルシューティングを行うために、各環境でベンダーのツールを使用します。

ハイブリッド・クラウドを使用する理由

組織がハイブリッド・クラウドを好む理由はさまざまです。中には、コンピューティングのワークロードを1つ、あるいは複数のパブリック・クラウド・プロバイダーに段階的に移行するため、クラウドとオンプレミスのリソースを一時的に混在させることを意図している場合もあります。段階的なアプローチを使用して、オンプレミスのデータセンターから完全に撤退することが目標です。

また、ハイブリッド・クラウドの設定を無期限に維持することを計画している企業もあります。データ・レジデンシーに関する要件と管理ポリシーへの懸念が、その大きな理由の1つです。企業によっては、多くの、あるいはほとんどのアプリケーションとデータベースをパブリック・クラウドに置いても問題ない場合もありますが、たとえば特定の顧客データや製品開発情報は、規制や企業ポリシーによってオンプレミスに置く必要がある場合があります。

また、組織によっては、オンプレミスに置いておくことが最適と思われるアプリケーションがある場合もあります。ERP、人事、CRMアプリケーションなど、多くのアプリケーションをSaaSに移行することを決定する場合もありますが、ニッチなアプリケーションやカスタム・レガシー・アプリケーションをオンプレミスに残し、クラウド・システムと通信する必要があることもよくあります。

帯域幅の問題も、企業がハイブリッド・クラウドを選択する理由の1つです。レイテンシが特に容赦ない特定のアプリケーションやワークロードがあり、その運用が、そのレイテンシを除去できるほどクラウド・データセンターに地理的に近くない場合、システムをオンサイトに維持することは理にかなっています。

ハイブリッド・クラウドのメリット

ハイブリッド・クラウドにより、企業はパブリック・クラウドまたはオンプレミスの運用の好きな要素と、許容できるトレードオフを選択できます。ハイブリッド・クラウドの導入モデルの選択肢が増えたことで、企業はクラウド・サービスとオンプレミス・サービスの混在を、よりニーズに近い形に合わせることができるようになりました。ハイブリッド・クラウドのメリットの一部を次に示します。

  • 管理の強化。企業によっては、特定のデータやコンピューティング・ワークロードをサードパーティ・プロバイダーに直接管理させることに抵抗を感じます。懸念される領域には、ストレージ・バックアップシステムの物理的コントロール、インフラストラクチャ構成の意思決定、ビジネス・プロセスの実行に使用されるアプリケーションの管理などがあります。現在、数多くのハイブリッド・クラウド・モデルが利用可能となっているため、企業は特定のデータやリソース管理のニーズにきめ細かく対応し、クラウドの多くのメリットを得ながら、必要な管理を維持することができます。
  • データレジデンシー データ・レジデンシーは、ハイブリッド・クラウドを選択する強力な理由です。ハイブリッド・クラウドを利用することで、組織はパブリック・クラウドのメリットを一部得つつ、データを自社内または特定の国の境界内に保持することで、データ・レジデンシーに関する要件を満たすことができます。
  • 規制コンプライアンス データ・レジデンシーだけでなく、一部の運用にパブリック・クラウド環境を使用することで、企業による、クレジット・カードの処理に関するPCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)、患者のプライバシーに関するHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)規則、GDPR(General Data Protection Regulation)、さらには米国のFedRAMP連邦政府基準などのセキュリティ基準など、特定のコンプライアンス認証を支援することができます。
  • セキュリティの向上。パブリック・クラウド・プロバイダーは、セキュリティ・モニタリングとアップデートのために、ほとんどどの企業よりも多くの資金と専門的なトレーニングを受けた人材を投入することができます。組織のITチームはパブリック・クラウド上のデータ・セキュリティの責任を共有しますが、ハイパースケール・プロバイダーと連携することで、最新の脅威に対してシステムにパッチ適用が行われる確率が高まります。ハイブリッド・クラウド環境では、管理、レイテンシ、その他の理由で一部のコンピューティング環境をオンプレミスのデータセンターに維持する必要がある場合でも、企業はクラウドベースのセキュリティの利点をさまざまなワークロードに活用できます。
  • コストの最適化 ハイブリッド・クラウドにより、企業は常時稼働するテストケースを利用し、アプリケーションを社内で実行した場合とパブリック・クラウドで実行した場合のコストを常に比較することができます。オンプレミス・システムは資本集約的な投資であり、ハイブリッド・セットアップにより、組織は一部のコンピューティング・コストを資本費用から、より予測可能な運用コストに変換することができます。また、パブリック・クラウドの要素により、企業は使用した分だけ料金を支払うことができ、これはリソースの需要が変動するワークロードでは特に有益です。
  • ビジネス・ニーズへの対応力。パブリック・クラウドを利用することで、ITチームは新しいまたは繰り返し発生するビジネス・ニーズに対応するために容量を迅速に追加することができます。たとえば、パブリック・クラウドを利用することで、オンプレミスのシステムで需要の急増に対応できるよういわゆる「クラウド・バースティング」と呼ばれる弾力的な容量の追加や、社内では数週間かかる場合がある新しい開発環境追加の数分または数時間での実行、従来のオンプレミス・アプリケーションのインストールおよび構成よりもはるかに迅速なSaaSアプリケーションの立ち上げと実行が可能になります。
  • AIを含む最新のテクノロジーへのアクセス。パブリック・クラウド・サービスをオンプレミスのデータセンターに連携させることで、チームはテクノロジー・イノベーションにアクセスすることができます。たとえば、パブリック・クラウド・サービスは、企業が継続的に必要としない可能性のあるハードウェアを事前に購入することなく、膨大なデータセットでAIモデルをトレーニングするために必要な高パフォーマンス・コンピューティングを提供することができます。
  • マルチクラウド・オプション。マルチクラウド環境では、企業はクラウドの機能とコストに基づいて、ワークロードに適したパブリック・クラウドを選択できます。これは、ITリーダーに選択肢とサードパーティ・プロバイダーの活用をもたらします。マルチクラウド・アプローチではハイブリッド・クラウドの設定は必要にならず、企業は複数のパブリック・クラウド上ですべてのワークロードを実行することができますが、企業はハイブリッド戦略でオンプレミスのデータセンターとマルチクラウド環境を使用することがよくあります。
  • ディザスタ・リカバリとリスクの軽減。コンピューティングにオンプレミスとパブリック・クラウドの少なくとも2つの環境を使用することで、組み込みのリスク軽減が可能になり、ディザスタ・リカバリ計画もよりシンプルにできます。

ハイブリッド・クラウドの課題

オンプレミスのデータセンターでは、建物の所有やリース、ハードウェアの取得とメンテナンス、インフラストラクチャやアプリケーションの運用とメンテナンスに必要なスキルの高いスタッフの雇用など、多額の固定費がかかります。パブリック・クラウド・サービスには、データ・レジデンシーや管理に関する懸念など、独自の制約があります。また、ハイブリッド戦略はいくつかのメリットを提供する一方で、以下のような独自の課題も伴います。

  • データレジデンシーデータ・レジデンシーに関する規定はさまざまで、特定のデータを国や地域に保存することが必要となる場合もあります。企業はパブリック・クラウドで規制対象のデータが保存されている場所を追跡する必要があるため、コンプライアンスが複雑になります。多くの場合、コンプライアンスを確保するために、機密情報をオンプレミスに保存することが答えになります。重要なのは、機密データや規制対象データをどこに置くかをよく考えることです。
  • コスト:オンプレミスのデータセンターを維持するということは、その施設を稼働させ続けるための建物、メンテナンス、電力、冷却、人件費を企業が負担するということです。オンプレミスのデータセンターに加え、複数のクラウド・プロバイダーを利用することで、特定のプロセスにおける総テクノロジー・コストの評価が複雑になる可能性があります。
  • 管理:それぞれの環境は、独自の管理ツール、呼称、管理ポイントを持つ傾向があります。システムのモニタリングと管理を担当するITスタッフは、オンプレミス環境とクラウド環境の両方を管理するエキスパートである必要があります。
  • 統合:企業は、オンプレミス環境とパブリック・クラウドを相互運用性のために効果的に接続し、統合を効果的に機能させるために必要な関連APIを管理することに苦労することがあります。クラウドやオンプレミスでAPIが変更されると統合が壊れる可能性があるため、リリース管理が困難になります。
  • 開発者の複雑さ:特に、継続的インテグレーション/継続的デプロイなどのDevOps戦術を使用している企業にとって、複雑なハイブリッド・クラウドで作業することは、導入が適切なクラウドまたはオンプレミス環境に移行されることを確認し、環境に十分な容量を確保し、テストおよびコンプライアンス要件を満たすといった領域で、開発者に複雑さをもたらす可能性があります。
  • データ転送: ITチームはこれを既存のデータの大部分がどこにあるかを考慮する「データ・グラビティ」と呼ぶことがあります。データに関連するアプリケーションやハードウェアは、同じ場所に配置した方が低コストでシンプルになることがよくあります。自社データとクラウド・データセンター間のデータ移動には時間がかかり、データエグレス料金が発生する場合もあります。

ハイブリッド・クラウドの構築

ITチームがハイブリッド・クラウドを構築する方法は千差万別です。SaaSアプリケーションとオンプレミス・アプリケーションの連携に関しては、統合サービスプロバイダーはデータ共有を可能にするさまざまなコネクタと統合プラットフォームを提供しています。

オンプレミスのデータ・センターを含むハイブリッド・クラウドを構成するネットワークの連携に関しては、ITチームには主に2つの選択肢があります。パブリック・インターネットを経由して暗号化されるVPNか、帯域幅が保証される専用接続です。

これらの選択肢全体にわたり必要なことは、社内のチームがどの要素を管理し、クラウド・プロバイダーがどれに責任を有するかを明確に理解した上で設計することです。特定のサービスをモニタリングする責任は誰にあり、問題があった場合のプロトコルはどうなっているのでしょうか。多くの分野では、共有責任が伴います。たとえばセキュリティでは、社内のチームが特定の基準を設定し、クラウド・プロバイダーがその基準に沿って導入およびモニタリングを行う責任を負うことがあります。

ハイブリッド・クラウド管理

ハイブリッド・クラウド管理のアプローチはさまざまです。主要なクラウド・プロバイダーはハイブリッド・クラウド管理システムを提供しており、ITチームは特定のパラメータ内でパブリック・クラウド環境とオンプレミス・システムの両方のパフォーマンスを確認できます。社内のITチームによっては、VMwareのようなパブリック・クラウド・プロバイダー以外のソフトウェア・レイヤーを使用して、ロケーションおよびクラウド全体にわたりコンピュート、ストレージ、ネットワーキングを管理しています。また、コンテナ化されたアプリケーションを管理するオープンソース・システムであるKubernetesをこのレイヤーとして扱うチームもあります。

また、複数の環境のセットアップ、実行、またはモニタリングの何らかの側面を管理するために特別に作成されたクラウド・マネジメント・プラットフォームもあります。いずれのアプローチでも、ワークロードを特定のクラウドにマッピングし、ワークロードごとにサービス・レベル・アグリーメント(SLA)とセキュリティ・プロトコルを設定し、対応するモニタリングとインシデント対応戦略を策定することが重要です。

内部システムと外部システムの間には、セキュリティ・レイヤーが存在するため管理計画で考慮する必要があります。効果的な管理を行うには、ハイブリッド・インフラストラクチャのすべての要素を可視化する中央ダッシュボードを設定する機能が不可欠です。

ハイブリッド・クラウドのユースケース

ハイブリッド・クラウドは、クラウドERPとオンプレミスの在庫システムを連携させた環境のような非常にシンプルなものから、さまざまなワークロードを実行する高度なマルチクラウド環境のような複雑なものに至るまで、多岐にわたります。ここでは、ハイブリッド・クラウドのユースケースの一部をご紹介します。

  • パブリック・クラウド移行。ハイブリッド・クラウドは、企業がオンプレミス・データセンターからの撤退を長期的な目標として、すべてのコンピューティング・アーキテクチャをパブリック・クラウドに段階的に移行する際の一時的な 構成を提供する場合があります。このような完全な移行には数年かかる可能性があり、その間に綿密に練られたハイブリッド戦略が必要となります。
  • データレジデンシーデータを特定の国や地域に保管する必要がある場合、企業はそのデータをオンプレミスに保管することが最も便利な場合があります。その場合、自社データセンター内のパブリック・クラウド・リソースを利用するのもひとつのアプローチです。
  • アプリケーション開発企業は多くの場合、オンプレミス環境を使ってアプリケーションの開発作業とテストを行い、その後アプリケーションをパブリック・クラウドに移動して本番環境で実行します。逆のケースもよくあります。オンプレミスからクラウドへの移行を成功させるためには、APIからオペレーティング・システムまで、これらの環境が構成可能で同じ動作をする必要があります。通常、コンテナでアプリケーションをパッケージングすることで、ほとんどの環境依存性に対処できます。
  • レガシー・アプリケーション多くのレガシー・アプリケーションがSaaSに取って代わられる一方で、他の長年使われてきたアプリケーションは依然オンプレミスにとどまっています。ハイブリッド・クラウドでは、オンプレミスとクラウドのアプリケーションが必要に応じてデータを共有できます。
  • 新興技術パブリック・クラウドでは、AIアルゴリズムをトレーニングするためのクラウド・コンピューティング能力のためにクラウド・リソースを使用するなど、企業は最新のテクノロジーの進歩によるメリットを迅速に享受することができます。ハイブリッド環境では、法外なコストのかかる設備投資を行うことなく、これらのリソースへのアクセスを提供し、必要に応じてオンプレミス・システムのトレーニング・データを活用することができます。
  • アプリケーションの統合企業は、在庫管理やPOSシステムといったオンプレミスのアプリケーションを、クラウド ベースのERPや財務システムと統合することが必要になることがよくあります。
  • 統合プラットフォーム企業によっては、VMwareのような単一のプラットフォームを使用してすべてのITインフラストラクチャ要素を実行することに非常に意欲的ですが、ハイブリッド・クラウド・アーキテクチャにより、これをオンプレミスとクラウドで実行できます。Kubernetesなどのコンテナ・システムも、運用の均一化に使用されます。
  • ディザスタ・リカバリハイブリッド・クラウドでは、組織独自のディザスタ・リカバリやビジネス継続性のニーズに合わせて、オンプレミスとパブリック・クラウドのリソースを微調整できます。
  • 共有サービス。ユーザー・アイデンティティ、認証、アクセス・ガバナンスなどのサービスでは、企業はクラウド・サービスとオンプレミス・アプリケーションの両方に適用されるクラウド・サービスを利用することがあります。

ハイブリッド・クラウドの例

  • グローバルな銀行では、データベースを従来のオンプレミスデータセンターから、クラウド・プロバイダーが管理しつつも自社データセンター内に設置されたサーバーに移行することがあります。これにより特定のデータはオンプレミスに保持され、欧州のデータ保護規則を遵守し続けることができます。その結果、銀行は一部のアプリケーションを従来のオンプレミス・データセンターで実行し、一部のアプリケーションをデータセンター内のプロバイダーが管理する環境で実行し、一部のワークロードを2つ目のパブリック・クラウドに移行することができます。
  • 一方、急成長を遂げているテクノロジー企業では、クラウドネイティブなアプリケーション開発に踏み出す一方で、一部のアプリケーションをパブリッククラウド上で実行し、それらをERP、在庫管理、ライフサイクル管理ソリューションのオンプレミス・インスタンスと統合することができます。
  • あるいは、世界中に何千もの顧客を持つサイバーセキュリティ企業は、コンピューティング・インフラストラクチャのためにオンプレミスのコロケーショ ン・センターを利用しており、今後も新しい市場セグメントへの拡大を計画しているとします。同社は、柔軟性と需要の急増に対応する機能を得るために、一部のワークロードをパブリック・クラウドで実行することを選択する可能性があります。

OCIによるビジネスの最新化

ハイブリッド・クラウドにはさまざまな導入モデルがあります。どれが最適かは、企業のニーズによって異なります。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)は、ハイブリッド・インフラストラクチャが1つの導入形態に過ぎないような幅広い要件に対応できる点が特徴です。OCIは、オンプレミス、20か国以上のパブリック・クラウド、他のプロバイダーのクラウドと組み合わせたマルチクラウド環境、または自社のデータセンター内にあるオラクルが管理するクラウドなど、好きな場所にワークロードを導入できる柔軟性を備えた分散型クラウド・アプローチを提供します。また、Oracleのオンプレミス管理プラットフォームであるOracle Enterprise Managerは、データセンターでもクラウドでも、すべてのオラクルの導入を管理します。

Oracle Cloud@Customerでは、データ・レジデンシーに懸念のある企業のニーズに対応するため、データを物理的に自社のデータセンター内に保持したまま、あらゆるOracle Cloud・サービスにアクセスでき、クラウドのメリットを活用し、規制上の懸念に対応することができます。さらに、お客様のデータセンターに完全なOCIクラウド・リージョンを設置し、ガバナンス、規制コンプライアンス、およびデータ・プライバシーの要件を支援するために必要な分離度を適用するOCI専用リージョンを選択することもできます。

オラクルの政府機関向けクラウド・サービスは、米国と英国向けの環境を備え、防衛、インテリジェント、および民間機関のニーズに対応しています。・サービスは、米国と英国向けの環境を備え、防衛、インテリジェント、および民間機関のニーズに対応しています。また、Oracle Alloyは、独立系ソフトウェア・ベンダー、システム・インテグレーター、通信事業会社などのパートナーがクラウド・プロバイダーとなり、Oracle Cloudをカスタマイズして特定の市場ニーズに対応できるように、完全なクラウド・インフラストラクチャ・プラットフォームを提供します。

従業員の成功をビジネスの成長に結びつける、CHROのための6つの戦略

CHROは、従業員の期待とビジネス・ゴールとの隔たりに直面しています。そうしたギャップを埋める方法をご紹介します。

ハイブリッド・クラウドに関するFAQ

ハイブリッド・クラウドとマルチクラウドの違いを教えてください。

ハイブリッド・クラウドとは、オンプレミスのデータセンターとサードパーティ・プロバイダーが運営するパブリック・クラウドで稼働するハードウェアとソフトウェアを含むコンピューティング・アーキテクチャです。マルチクラウドとは、2つ以上のパブリック・クラウド・プロバイダーを使用するアプローチを指します。企業は多くの場合、ハイブリッド・クラウド・アプローチの一環としてマルチクラウド戦略を使用し、オンプレミス・データセンターと複数のパブリック・クラウドを組み合わせています。

ハイブリッド・クラウドはデータ・レジデンシーに関する要件への対応を支援しますか。

ハイブリッド・クラウド戦略は、パブリック・クラウドの多くの利点を得ながら、企業がデータ・レジデンシーに関する要件を満たすことを支援します。たとえば、企業は一部のデータをパブリック・クラウドに保管する一方で、データ・レジデンシー・ルールに該当する機密データはオンプレミスのデータセンターに保管することがあります。オンプレミスのコンピューティング容量は、企業またはサードパーティ・プロバイダーが管理する場合があります。

ハイブリッド・クラウドに移行する場合でも、VMwareによる管理は継続できますか。

ITチームがどのようにアーキテクチャを構築するかによることは言うまでもありませんが、オンプレミス・サーバとパブリック・クラウド・サーバの両方を使用するハイブリッド・クラウド・モデルに移行する場合でも、ITリソース管理ツールとして引き続き VMware を使用することは可能です。このアプローチは、ハイブリッド環境の外観と機能を既存のオンプレミス管理環境に最も近いものにすると考えてください。