9つの建設スケジューリング手法とそのメリット・デメリット

Rick Bell |コンテンツ・ストラテジスト| 2024年3月14日

明確に定義された現実的なスケジュールにより、建設会社はプロジェクトのライフサイクルのすべての段階を完全に監視できます。これには、プロジェクト開始前に、建設チームが採用を検討すべき多くの手法が含まれます。

各建設プロジェクトはそれぞれ異なるため、適切なスケジューリング手法を選択することで、プロジェクト計画担当者は、すべての作業段階においてリソースを最適化し、コラボレーションを促進し、リスクを軽減し、最終的にはパフォーマンスを最適化できます。この記事では、各手法の異なる適用例、およびそのメリットとデメリットについて説明します。

建設スケジューリング手法とは

建設スケジューリング手法は、プロジェクトを円滑に進めるのに役立ちます。いくつかの手法の中から適切なものを選択することで、効率の向上、重要なマイルストーンの伝達、リソース配分の明確化、プロジェクトの生産性の向上が期待できます。

建設スケジューリング手法とは、複数の要素の組み合わせです。建設スケジューリング手法は、手順フレームワーク(特定の順序で実行されるステップやタスクのシーケンス)であり、実務ツール(それらの手順をキャプチャまたは管理するために利用される方法、場所、リソース)でもあります。

例えば、建設会社は関係者の意見を聞きながらスケジュールを作成します。第一のプロセスは、プロジェクトチームを招集することです。しかし、チームメンバーがこのプロセスのために使用するツールは、アナログ(招待状を各メンバーに郵送)かもしれませんし、デジタルかもしれません。デジタルの場合、各メンバーに、ソフトウェアを使ったデジタルなスケジュール計画・作成セッションへの招待状が届くといった具合です。

主なポイント

  • 適切なスケジューリング手法を選択することで、納期や予算を守れるか、守れないかの違いが生まれます。
  • それぞれの手法にはメリットとデメリットがあるため、いくつかの方法を組み合わせるのが適切です。
  • どのようなスケジューリング手法が適切かは、プロジェクトの複雑さや規模によって異なります。
  • 手作業によるプロセスは、コストのかかるエラーを引き起こす可能性があります。クラウドベースの建設スケジューリング手法は、セキュアで使いやすく、すべての関係者のコラボレーションを促進します。

建設スケジューリング手法の説明

建設スケジューリング手法は、プロジェクトやプログラムの「計画」を策定し、管理するという、2つの重要な工程をサポートするための手法です。

計画の質は、関係者のスキルレベルと経験に左右されます。建設スケジューリング手法は、さまざまなオプションを提供しますが、それらはすべて、個人やチームが、作業の項目(アクティビティ)や、その作業がどれくらいの期間続くか(期間)、その前後にどのような作業の項目があるか(順序/関係/論理的な結びつき)、そしてそれらのアクティビティがプロジェクト期間中のどの時点で起こるか(日付)を明確化できるよう支援することに重点を置いています。

9つの建設スケジューリング手法とそのメリット・デメリット

例えば、愛犬スポットのために裏庭に犬小屋を建てるとしましょう。完成は週末を予定しています。

スポットが日曜の午後までに新居でくつろげるように、クリティカル・パス法(CPM)を用いることは重要でしょうか?あるいは、人材、設備、資材がスムーズに供給されるようにするための、リソース指向スケジューリング手法のほうが良いでしょうか?

いいえ、スポットの犬小屋の作成には、シャープペンシル、数枚の紙、巻き尺など、使い古された道具で十分でしょう。しかし、商業施設の建設プロジェクトを効率的に完了させるには、最新のスケジューリング手法が必要となります。

それぞれの方法を以下に説明します。ただし、これらの手法の有効性は、チームから提供される情報(作業がどのように行われているか、または行われるべきかなど)の正確さに依存することに留意してください。適切に定義、順序付け、管理されていないスケジュール・ネットワークは、信頼できません。

1. Excelテンプレート

Excelで管理する建設スケジュールには限界がありますが、これは依然として非常に人気のある方法です。Excelテンプレートは、建設プロジェクトの詳細を整理し、まとめておく簡単な方法です。必要な知識は、スプレッドシート形式での操作法法だけです。

メリット: Excelテンプレートは、非常に小規模でシンプルなプロジェクトに適しています(スポットの犬小屋プロジェクトより大きくても大丈夫です)。Excelは、Microsoft Officeにバンドルされているので、ユーザーフレンドリーかつ安価で、アクセスしやすくなっています。このスケジューリング手法は、Excelで作業する人が一人しかいない場合に最も有効です。

デメリット: 有能な建設プランナーの多くは、プランニングやスケジューリングの実務にExcelテンプレートは使用しません。その理由のひとつは、スプレッドシートのすべてのセルを手作業で更新しなければならないことです。プロジェクトの何かが変更されると手入力しなければならないため手間がかかります。また、Excelはコラボレーションに適したスケジューリング手法ではありません。Excelテンプレートを共有するということは、さまざまな変更を加えたオリジナル文書の複数のバージョンが電子メールで送信されることを意味します。この手法では、プロジェクトの遅延や、古い情報に基づいた意思決定によるコストのかかるエラーがしばしば発生します。

2. クリティカル・パス法

CPMは、実績のあるアルゴリズムです。CPMは、入力が正確で、作業がどのように実施されるかを正確に描写している限り、初期契約スケジュールを迅速かつ効率的に作成することに優れています。

この手法は、プロジェクトの初期像を開発するのに役立ちます。各マイルストーンの完了に必要なリソースと時間を決定し、プロジェクト要件に合致する目標を設定します。さまざまなアルゴリズムやコンピューター・プログラムを利用して再計算することで、CPMは特定の活動を完了するのに必要な最短時間を割り出すことができます。

メリット: CPMは、プロジェクトの完了日に最も大きな影響を与える活動を特定します。これらのアクティビティは「フロート」がゼロに分類されます。これはつまり、その実行が一日でも遅れるとプロジェクトの納期が延びることを示します。CPMは、プロジェクト・マネジャーや関係者が、どのアクティビティがプロジェクト完了日に最も影響するのかを理解するのに役立ちます。また、どのアクティビティがクリティカル・パスに入る可能性があるのかを、そのアクティビティのフロートを確認することで理解できます。これにより、プロジェクト・マネージャーは自信を持って資金やリソースを割り振ってプロジェクトを予定どおりに完了できます。

デメリット: アルゴリズムがこの手法の中核であるため、非常に複雑に見える可能性があります。また、CPMソフトウェアは、プロジェクト・スケジューリングを学ぶ人々にとって敷居が高いかもしれません。

3. プログラム評価/レビュー法(PERT)

PERTは、もう一つの建設スケジューリング手法です。プロジェクト期間の見積もり、リスクの特定、見積もりに不確実性がある場合に最も可能性の高いアクティビティ期間を特定するために使用されます。複雑なプロジェクトに有用で、CPMよりも視覚的に表現できます。

PERTはまず、プロジェクト内のタスクとその期間を特定し、進捗を追跡するためのマイルストーンを設定します。各タスクを完了するのに必要な時間を最も正確に見積もるために計算を実行します。

メリット: PERTは、プロジェクトをスケジュールどおりに遂行するために期限内に完了する必要がある重要なタスクを、プロジェクト・マネージャーが明確に把握できるようにします。PERTを使用したスケジューリングでは、最良のシナリオと最悪のシナリオの両方を考慮できるため、柔軟性を確保できます。

デメリット: PERTは、時間のかかる複雑な建設スケジューリング手法です。大規模で複雑なプロジェクトでは、各タスクの計算に何時間もかかることがあります。しかし、今日の建設プロジェクト管理ソフトウェアで利用可能な機能を使えば、かつてのような苦労はほとんどなくなります。

4. 損益分岐点(LOB)

LOB手法では、反復的な建設プロジェクトのための作業員やその他のリソースに焦点がおかれます。高層ビルまたは新しいトラクト・ハウスの建築などが良い例です。

LOBは専門性が高く、特に作業員に関するリソース配分、能力管理、生産率に主に関係します。このスケジューリング手法は、住宅建設よりも、作業員がフロアからフロアへ、あるいはビルからビルへと移動し、ダウンタイムをできるだけ短くする必要がある商業建設で一般的に使用されています。

メリット: LOBは、リソースの非効率性を理解するのに役立ちます。作業員の時間が余っていれば、プロジェクトは赤字になってしまいます。無駄を特定することは、利益率を最適化するために非常に重要です。LOBは重複をなくし、生産性を向上させることで、プロジェクトの収益性を高めます。

デメリット: LOB手法は、小規模なプロジェクトには複雑すぎるため不向きです。通常、LOBを推進し、その複雑さを十分に理解しているのは、建設会社の中でも数人しかいません。

5. 定性的スケジューリング (Qスケジューリング)

Qスケジューリングは、リスクベースのスケジューリング手法の一つで、棒グラフを用いて必要なリソースの量と、場所、時間を可視化する比較的新しいスケジューリング手法です。Qスケジューリングは高度なデータ分析手法として人気が高まりつつあります。プロジェクト・マネージャーは、Qスケジューリングを使用して、リスクの確率と影響を評価し、優先順位をつけることができます。

メリット: Qスケジューリングは、反復の多い建設タスクに有効です。この方法により、作業員やマネージャは、どの材料がいつ必要で、いつ注文すればよいのかがわかり、順序よく作業を進めることができるため、他の人の作業を中断させることがなくなります。

デメリット: Qスケジューリングは、あまり普及していない建設スケジューリング手法の1つで、通常、タスクが反復的で、リソースの量が変動する場合にのみ使用されます。

6. リソース指向スケジューリング

リソース指向のスケジューリングは、LOB手法に似ています。主に作業員、設備、資材(LEM)などのリソースをアクティビティにロードし、複数の関係者が同時にそれらのリソースへのアクセスを必要とする状況を特定します。このスケジューリング方法は、リソースが不足しているにもかかわらず、プロジェクトを予算内に完了させることが重要な場合に特に有効です。

メリット: リソース指向のスケジューリングは、アクティビティの実現可能性を判断するのに非常に有益な手法です。リソースをスケジュールにロードすることで、貴重な情報が豊富に得られます。

デメリット: LOBメソッドと同様に、絶え間ない更新が必要であるため、プロジェクトが成熟すると複雑になります。ジョブに必要なリソース数が増え、プロジェクトが大きくなるほど、より多くの手間が必要になります。

7. ラスト・プランナー・システム(LPS)とプル・プランニング

ラスト・プランナー・システムは、リソースの使用を最適化し、説明責任を高めるために、1週間から6週間という可能な限り小さな単位で仕事を計画し、調整することに焦点を当てたワークフロー手法です。ラスト・プランナー、つまり業務に最も近い立場の人たちがタスクの完了にコミットするという連携アプローチを採用しています。プル・プランニングは、ラスト・プランナー・システムの一部です。プロジェクトの納期マイルストーンを設定し、タイムリーな完了を達成するために必要なステップを逆算して決定します。

クリティカル・パス法と同様に、LPS手法とプル・プランニング手法はアナログプロセスとして始まり、数十年間ほとんど変わっていません。プロジェクトの利害関係者を部屋に集め、文字通り壁にカードを貼って、現場のタスクとそのスケジューリングを視覚的に表現します。さまざまな組織が、そのカード・ウォール・システムに参加し、彼らがやるべきことと、その時期をを提起しなければなりません。

メリット: LPSとプル・プランニングはコラボレーションに有効な手法です。従来のアナログ版では、さまざまな専門分野の人々が一堂に集まります。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、プランナーはLPSとプル・プランニングのセッションにバーチャルで人々を集める方法を模索しました。これが、建設プロジェクト管理ソフトウェアによるデジタル・コラボレーション・エクスペリエンスの開発につながりました。今では多くの人が、アナログのスケジューリング手法に戻ることは考えられないと述べています。

デメリット: LPSおよびプル・プランニングは、マルチプロジェクト・ビューおよびエンタープライズ・ビューの分析またはスケーリングには適していません。建設プロジェクト・マネージャーや利害関係者は、プロジェクト全体または複数のプロジェクトから、トレンドやインサイトを引き出したいと考えます。しかし、多くのLPSおよびプル・プランニング・レポートは、一度に一つのタスクに集中する傾向があります。

8. ガント・チャート

ガント・チャートは、カレンダー内のプロジェクト・プランを視覚的に表現します。通常は、CPM、LPS、PERT、LOB、リソース指向およびQスケジューリング手法を表示するために使用されます。

ガントチャートを作成するには、タイムラインとプロジェクトの完了に必要なタスクとアクティビティのリストが必要です。これらのイベントを、タイムライン上に配置したものがガント・チャートです。

メリット: ガント・チャートの大半は理解しやすく、プロジェクト内のすべての建設タスクとそれぞれのタイムラインの概要を素早く視覚的に提供します。これによって、さまざまなチームが情報を入手・整理することができます。

デメリット: ガント・チャートが大きくなるにつれて、情報の読取りや理解が難しくなります。ガントチャートで広範囲なプロジェクトのタイムラインを見ると、圧倒されてしまうことがあります。さらに、ガントチャートの正確性を維持するには、定期的な更新が必要です。しかし、動的で複雑な建設環境では管理が難しい場合があります。

9. アジャイル・スケジューリング

アジャイル・スケジューリングは、一般的にソフトウェア開発と結びついていますが、建設業界でもその原則の一部を取り入れようとしています。この手法は、作業の順序を整理するための枠組みを提供します。スクラム(チームが共通の目標に向かって作業するのに役立つコラボレーション・フレームワーク)は、一般的なアジャイル手法として普及しています。

メリット: アジャイルな管理は、設計変更や、悪天候や資材不足などの建設スケジュールに影響を与える不測の事態への適応を容易にします。

デメリット: アジャイル・スケジューリングは、建設業界特有のスケジューリング手法ではありません。しかしこれは、建設プロジェクトと相性が悪いということではありません。単に、それほど広く採用されていないだけです。ここで述べたその他の手法は、建設業界に特化した、独特のスケジューリング要件を持つ手法になります。建設プロセスは一般的に順序に重きを置き、大規模なプロジェクトでは請負業者や作業員の効率を最適化するようにスケジューリングする必要があるため、手法の調整が必要になります。これにより、建設契約、スケジュールおよびコスト目標と連携し、変更指示、遅延、コスト超過の可能性を減らすことができます。

ラスト・プランナーやプル・プランニングのソリューションとして販売されているソフトウェアを見たことがあります。そのソフトウェアは、何の説明もなく、ただチームに提供されました。その結果、「プル・プランニングを試してみたが、うまくいかなかった」ということになりました。ソフトウェアを機能させるには、ファシリテータが必要です。」

Ken McBroom氏 McCarthy Building Companies、業務効率担当ディレクター

建設プロジェクトに適したスケジューリング手法の選択

すべての建設プロジェクトでは、何千、場合によっては何百万もの詳細を追跡する必要があります。そのため、適切なスケジューリング手法を選択することで大きな違いが生まれ、すべての利害関係者は十分な情報を得て、説明責任を果たし、生産性を維持することができます。

とはいえ、建設プロジェクトに完璧にマッチするスケジューリング手法というものはありません。プロジェクトは、それぞれ異なります。何年もかかる高速道路建設プロジェクトのスケジューリングには適していても、新しい市庁舎の建設には適さない可能性が高いのです。

それぞれのプロジェクトのニーズに対応するためには、複数のスケジューリング手法を組み合わせることが重要です。上記のような手法を組み合わせることで、生産性と可視性を向上させ、予算内および納期内の納品を可能にするスケジューリング・システムを構築できます。スケジューリング手法を選択する際には、使いやすさ、セキュリティ、コスト、人工知能や機械学習といった最新機能などの要素をすべて考慮しましょう。

オラクルによるスケジューリング調整、リスクの軽減、リソースの最適化

Oracle Primavera Cloudには、先に説明した7つの建設スケジューリング手法がすべてクラウドに組み込まれています。そのため、住宅、商業施設、公共インフラ、産業施設など、プロジェクトに関係なく、この1つのアプリケーション・ソリューションで対応できます。

プロジェクトの規模も関係ありません。大規模なプロジェクトでも小規模なプロジェクトでも、単純なものでも複雑なものでも、Oracle Primavera Cloudを活用することで、自信を持って簡単にスケジューリングできます。

Oracle Primavera Cloudは、過去のデータの把握にも役立ちます。プロジェクトがうまくいった理由やうまくいかなかった理由を理解し、より良いバージョンの計画を迅速に構築できます。また、ジョブのタスクを完了すると、Oracle Primavera Cloudから貴重なインサイトが得られ、建設プロセスの品質と効率の継続的な改善に役立てることができます。

卓越したオーケストレーションには、全員の足並みを揃えることが必要です。Oracle Primavera Cloudは世界中のプロジェクトにおいて、建設スケジュールとリソースを同期し、エンジニアリングおよび建設の専門家が日々行う無数の意思決定に役立つ情報を提供しています。

建設スケジューリング手法に関するよくある質問

アクティビティのスケジューリングに最適な手法は何ですか?
適切なスケジューリング手法は、仕事の規模や複雑さ、スケジュール、目標、タスクリストによって異なります。小規模で単純なプロジェクトであれば、手作業でも問題ないかもしれません。しかし、大規模なプロジェクトでは、複数の詳細なスケジューリング手法に対応した包括的な建設管理ソフトウェア・プラットフォームが適しています。

建設スケジューリング手法は、プロジェクト管理にどのように役立つのでしょうか?
建設スケジューリング手法は、関係者間の明確なコミュニケーション手段を確立し、重要なタスクが見落とされる可能性を減らします。また、建設チームが不必要な遅延なくプロジェクトを成功に導けるよう、予算やスケジュールの管理もサポートします。また、適切なスケジューリング手法は、LEM(作業員、設備、資材)も管理します。これは無駄を省きコストのかかる超過作業を削減するのに役立ちます。

建設スケジューリング手法の使用に関する制限や課題はありますか?
どの手法も完璧ではないため、建設スケジューリング手法の使用には課題があります。適切なスケジューリング手法を使用していても、ヒューマンエラーやデータのサイロ化、プロジェクト管理の不備に陥る可能性があります。すべての建設プロジェクトは、正確な計画と、細部への注意に依存しています。

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