ビジネス課題
日本は2030年までに、温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指しています。これは2050年のカーボンニュートラル達成に向けた1つのマイルストーンでもあります。
脱炭素戦略を旗振りする環境省は、2018年に排出した10億トン以上の温室効果ガスを2030年までに9億3千万トンへ削減することや、2050年のカーボンニュートラル達成を含む、様々な脱炭素イニシアチブを取り仕切っています。
環境省はまた、CO2排出削減に重要な役割を担っているエネルギー事業者と共に、行動科学の活用が一般家庭の電気やガス消費量にどのような効果が表れるかを検証する、官民連携のイニシアチブである「ナッジ事業」を立ち上げました。
これは、消費者に役立つヒントや気づきを与えることで個人やグループに行動変容を促す「ナッジ理論」を検証することを目的に、2017年からスタートしたもので、この4年に渡るプロジェクトを推進するために、Oracle Opowerを選択しました。
本事業の検証結果は、日本政府の基本政策であるCO2削減目標に組み込まれていきます。
この実証事業は単独では実施が難しい実験でしたが、平均2%の省エネ効果を示せたことは低炭素、脱炭素化に向けた価値創造にもつながる大きな成果でした。実証事業参画の経験を、これからのカーボンニュートラルを視野に入れたお客さまとのコミュニケーションに活かしながら、お客さま自身が省エネを実感していただけるような、より細やかな顧客エンゲージメントのアプローチに取り組んでいきます。
本事業でOracleが選ばれた理由
ナッジ事業を通して行動科学の知見を活用している環境省は、これまでの行動科学とAI、ビッグデータの活用実績を評価し、この丸4年間の事業でOracle Opowerを選択しました。実際にOracle Opowerは、世界175社のエネルギー事業者に選定され、CO2排出削減に成功しています。
これらのエネルギー事業者は、開始から10年間で累計10億通以上のレポートを作成し、30テラワット時のエネルギー削減に寄与しています。そこで環境省は、省内で進めている行動科学のアプローチに、Oracle Opowerがもたらす効果を取り込む決断をしたのです。
4年に及ぶ同事業は、41,000世帯の年間CO2排出量と同等のCO2排出量を削減する結果となりました。
結果
日本オラクルは、住環境計画研究所と日本の大手エネルギー事業者5社と連携し、合計30万世帯に対して電力消費に関するパーソナライズされたレポートを提供しています。
このレポートを受け取っている家庭は、レポートを受け取っていない家庭と比べ、最大で2.8%のCO2排出量を削減できていることが分かっています。
そして本事業に参画した北海道ガス、東北電力、北陸電力、関西電力、沖縄電力各社の供給エリア内では、2017年から2021年までに47,000トンのCO2排出量の削減を実現しています。
2009年にスタートしたOracle Opowerのホームエネルギーレポートは、今や世界中のエネルギー事業者で採用されています。国内においては、行動科学と日本のライフスタイルや文化に合わせたAIにより、電力やガスの利用料、利用状況、月次比較や個々に合わせた消費インサイト、世帯ごとの分析、省エネや節約のヒントなどを提供しています。
冷蔵庫に貼り付けられるレポートは、インフォグラフィックスなどを含むカラフルで魅力的な形式で、省エネに前向きに取り組む気持ちと行動を起こす意欲を高めます。例えば、省エネの可能性を発見した消費者は、それに応じて行動を修正するなどのアクションを起こせます。
消費者の省エネや節約への意識の高まりによって、レポート配信メールの開封率は71%にも達し、CTRは30%を超え、10万もの世帯が温度設定調整など省エネにつながる行動を取っています。
CO2排出削減量は47,000トンに及び、当初計画されていた期間の後も、最低1年間はこのナッジ効果が続くと見込まれています。結果、累計で110,000トンのCO2排出削減効果があると環境省は推計しています。また環境省は、この110,000トンは135,000台の冷蔵庫買替効果、または41,000世帯の年間CO2排出量分に相当するとも試算しています。
消費者の「行動」を核としたOracle Opowerイニシアチブは、ツールベースでしか脱炭素化を達成できないという固定観念を根底から覆しました。「Oracle Opowerは、行動変容に向けたアプローチがCO2排出削減に効果があることを証明したのです」と住環境計画研究所の代表取締役会長である中上英俊氏は語っています。
「脱炭素社会の実現には、省エネでエネルギー需要を下げることが重要です。ホームエネルギーレポートは、一般世帯が脱炭素化を実現するための行動を提案する新しい取り組みです」
Oracle Opowerのホームエネルギーレポートが生み出した顧客とのエンゲージメントにより、30%の世帯においてエネルギー事業者に対する好感度が飛躍的に高まり、今後もレポートが提供する節約のヒントやアドバイスを積極的に取り組んでいくと回答しています。
本取り組みは顧客満足度とCO2削減の観点から十分な効果を発揮し、北海道ガスと沖縄電力は、環境省の同事業完遂に歩調を合わせ、Oracle Opowerによるコミュニケーションを継続すると決定するに至っています。
そして環境省は、行動科学に基づいたナッジ事業が、CO2排出量削減を実現する最も迅速でコスト効率の高い方法の一つだと明言したのです。
パートナー
日本オラクルはプロジェクト全体を監督、構成し、住環境計画研究所と共にプラットフォーム管理の役割を担いました。住環境計画研究所は省エネと行動変容によるCO2排出削減などを調査・研究する、日本を代表する組織です。
お客様について
環境省は気候変動や環境再生等の課題に対する持続可能な社会の実現を目指しています。また、廃棄物管理や、生態系保全、自然との共生などの資源リサイクルポリシーを策定しています。