Joseph Tsidulko | コンテンツ・ストラテジスト | 2024年7月15日
不安定な市場、長引くサプライチェーンの問題、高騰を続けるインフレ、そして従来の販売チャネルからのシフト。このような不確実性の中で、スプレッドシートを使って販売計画を作成することは、もはや現実的ではありません。このような次々と押し寄せる課題により、高度な計画プラクティスの策定とそれをサポートするテクノロジー・ソリューションが強く求められています。企業は販売計画を迅速に策定し、修正したいと考えています。また、達成可能な収益目標を設定し、その目標を最高収益責任者に提出して、担当地域や営業担当者のノルマを割り当ててもらいたいと考えています。さらに、業績を詳細に追跡し、全員が意欲的に業務を遂行し成功を収められるような報酬モデルを採用したいと考えています。
しかし、こうした目標を達成するには、従来のスプレッドシートから脱却するだけでは不十分です。企業は、実績のある戦略とベストプラクティスを総合的に導入し、直感でなくデータに基づいて意思決定を行い、営業サイクルにおける多くの障害を克服できるよう設計されたクラウドベースのアプリケーションを導入する必要があります。最新のセールス・プランニング戦略と手法は、営業担当者が顧客との人間関係を育み、顧客の信頼を獲得するのに役立ちます。また、オンラインで取引が開始され、締結されるケースが増えている現在、人間的な触れ合いがまったく存在しないアカウントに対しても可視性を提供する必要があります。
セールス・プランニングとは、限られたリソースを最適に配分し、収益目標やより広範な企業目標を達成するための戦略を策定し、文書化することを意味します。これにより、セールス・チームのパフォーマンスを最適化するためのステップを概説した販売計画が作成されます。そのステップには、収益目標の設定、ターゲット市場の特定、販売地域の割り当て、営業担当者のノルマや報酬モデルの設定、消費者購買動向や市場力学の評価、販売キャンペーン期間中に計画を改善するための継続的なデータ収集などが含まれます。
セールス・プランニングは、一定期間における販売対象、目標、戦略を明確に文書化した販売計画を作成するためのプロセスです。しかし、販売計画は決して固定的なものではありません。販売計画は継続的なプロセスであり、販売リーダーは実際の結果を常に監視し、進化する市場状況を評価し、変化するデータとモデルに基づいて新たな予測を作成します。そして、これらの結果と予測が当初の予想から外れた場合、計画者は既存の販売計画を適宜修正します。
主なポイント
セールス・プランニングは、地域やターゲット市場全体で自社製品の販売を促進するための詳細かつ具体的な計画を策定する、多面的なプロセスです。
通常このプロセスは、財務リーダーが、理想的には営業リーダーと協力しながら、野心的かつ現実的な収益目標を設定することから始まります。財務部門は、最高収益責任者(CRO)のオフィスを通じて、これらの目標を営業部門に伝えます。
その後、CROとそのチームは、望ましい結果を達成するための計画を策定する必要があります。その第一歩は、販売リソースを集中的に投入することで利益が見込める市場を特定することです。CROはまた、広域地域、地域別チーム、個々の営業担当者に対するノルマを設定し、全員が意欲的に取り組み、成功できるようインセンティブとなる報酬も設定します。
販売計画は、正確であると同時に、変化する市場状況に適応できる柔軟性も必要です。営業リーダーは、コンバージョン率、顧客獲得コスト、顧客からのフィードバックなど、複数のパフォーマンス指標を詳細に追跡し、計画を変更すべきタイミングを把握しなければなりません。
セールス・プランニングが重要なのは、市場における製品の成功に多大な影響を与えるからです。効果的な計画は、データに基づくインサイトを適用して販売地域、ターゲット層、販売ノルマを割り当てることで、営業担当者がより多くの、より大きな取引を成約できるようにし、収益を増大させることができます。これにより、既存の営業担当者のモチベーションが高まり、生産性が向上するとともに、有能な営業人材に高い報酬を提示して採用することも可能となり、営業活動がさらに活発化します。また、綿密に練られた販売計画は、顧客関係の構築にも役立ちます。たとえば、知識豊富な営業担当者が多くの見込顧客や既存顧客と接することができるようにしたり、地域チームが重要なアカウントに対応できるよう必要な人員と設備を確保したりすることを規定できます。
セールス・プランニングは、会社のさまざまな部門に依存し、影響を与える可能性があります。そのため、営業部門は決して孤立してはなりません。営業リーダーは、販売量に関する独自の可視性と洞察力を備えているため、収益目標の設定にあたっては財務リーダーと緊密に連携する必要があります。目標が高すぎると、営業チームに不満や離職を招く可能性があります。しかし、目標が低すぎると、チームの潜在能力を十分に活用できません。
また、営業部門は、コミッションの体系化にあたり人事部門との調整も必要となります。営業リーダーは、どの製品を、どの地域で、どの程度の利益率で販売すれば、チームのモチベーションを最も高められるかについて感覚的に理解しているかもしれませんが、給与を直接管理するわけではありません。
また、顧客の関心を引くという点では、マーケティング部門との連携が不可欠となります。マーケティングキャンペーンは、営業活動を成功させるための基盤となります。一方、顧客と直接やり取りする営業担当者は、需要がどこにあるか、マーケティングリソースをどこに投入すれば製品の認知度を最も高められるか、どのキャンペーンが効果的であるかなど、独自のインサイトを持っています。営業とマーケティングは極めて深い依存関係にあるため、両チームが共通のメッセージを明確に打ち出せるかどうかが成功のカギとなります。
営業部門のミッションである収益促進を実現するためには、経験豊富な営業リーダーの直感と、厳格なデータ分析に基づいたセールス・プランニングが最終的には必要となります。しかし、成功する営業戦略のほとんどに共通する、実証済みの戦術やツールもあります。以下にそのいくつかをご紹介します。
営業活動がオンライン・プラットフォームへと移行しつつある現在でも、以下のような実績あるアプローチは販売計画において非常に効果的です。
ビジネスの戦略目標を達成するためには、販売計画を財務計画と整合させる必要があります。つまり、営業リーダーは、CFOが設定した利益率と収益の目標値を、設定時および更新時にリアルタイムで把握できる必要があります。そうすることで、予測モデルを迅速に調整し、それに応じてリソースを再配分することができます。
CROは、報酬プランによって営業担当者のモチベーションを高める必要があります。しかし、製品や地域によって異なる販売マージンを設定することは、最終的には各営業担当者のコミッションや総給与額を決定するものであるため、人事部門との緊密な連携が必要となります。
企業は、マーケティング担当者が顧客の関心を引き、それを営業担当者が成約に結びつけるという相乗効果によって、最も効果的に利益を得ることができます。一方、顧客と直接やり取りする営業担当者は、需要がどこにあるか、マーケティングリソースをどこに投入すれば製品の認知度を最も高められるか、どのキャンペーンが効果的であるかなど、独自のインサイトをマーケティング担当者と共有すすることができます。
未来を予測することは不可能のように思えますが、営業リーダーは営業成績を予測して効果的にノルマを設定し、リソースを割り当てる必要があります。当然ながら、経験豊富な営業担当者の直感は重要な役割を果たします。しかし、コンテキスト・データ、市場動向、顧客行動を、最先端のAIやビッグデータツールで分析すれば、予測の精度を大幅に向上させることができます。こうしたリソースがあれば、経験に基づく予測をインテリジェントな予測に変えることができ、勘や直感を高度な計算方法で修正したり、裏付けたりすることができます。
効果的な販売計画には、主要業績指標の把握、大量の公開データおよび内部データの慎重な分析、そして営業部門内および事業部門間の緊密な連携が欠かせません。最新のクラウド・アプリケーションは、販売計画者が上記のすべてを達成するのに役立ちます。販売計画者は、ソフトウェアの取得、実装、および支出を管理するIT部門の担当者と円滑なコミュニケーションを取り、営業部門が業務を遂行するために適切なツールを確実に確保できるようにする必要があります。
販売計画の作成プロセスは通常、営業部門とは別の部門で開始されます。
財務部門は四半期または年度の収益目標を設定し、経営幹部は新製品の市場浸透や既存製品の新規市場への拡大など、より広範な企業目標を明確化します。
販売計画者は、これらの財務目標や企業目標を明確な販売目標に落とし込む必要がります。これらの目標やノルマは、必ずしも総売上高の最大化を優先するものではありません。実際、意図的に製品をある価格帯にとどめ、供給量を制限することで、希少価値を演出したり、既存の生産能力を圧迫しないようにしたいと考える企業もあります。
次のステップは、販売目標を達成するための実行可能な戦略を策定することです。そのためには、販売する製品にとって格好の場となる特定の市場を、地域や人口統計の両面から特定する必要があります。例えば、サーフボードを販売するのであれば、内陸の州にリソースを集中させるべきではありません。営業リーダーは、ターゲット市場を決定する際には、チームの経験と見解を重視する一方で、大量の市場調査データと分析も取り入れる必要があります。
次に、販売計画者は、業務を遂行するために利用可能なリソースを把握する必要があります。営業マネージャーや営業担当者の雇用、見込顧客の獲得、顧客訪問、営業ツールの確保などにかけられる費用は、割り当てられた予算によって制限されます。販売計画者は、これらのリソースを、見込み利益に基づいて、販売地域、製品ライン、アカウントごとに賢く配分する必要があります。また、営業部門は、新製品への注力や新しい計画の実施に伴い、担当地域の割り当てを変更したり、ギャップを埋めるために新しい営業担当者を採用したりすることもあります。
販売計画では、地域、チーム、個々の営業担当者のノルマを設定する必要があります。また、テレアポ用のスクリプト、再販業者と仕事をする際の注意点、オンライン・プラットフォームで発生した案件の進め方、見込顧客を接待する際のルールなど、営業戦術も規定します。さらに、これらの戦術や製品機能に関するトレーニングをどのように営業担当者に提供するか、リードをどのように割り当てるか、指標の見直しやコラボレーションに役立つ販売システムにどのようにアクセスするかも規定します。
成功への意欲を高めるために、営業リーダーは各製品ごとにマージンを設定し、営業担当者が案件を成約した際に受け取るコミッションを決定します。マージンが低すぎると営業担当者の意欲を削ぎ、営業部門に優秀な人材を集めることができませんが、マージンが高すぎると顧客を遠ざけ、収益と利益を圧迫する可能性があります。
最後に、営業計画は固定的なものではないことを忘れてはなりません。計画は常に実状に合わせて調整する必要があります。また、結果が出なければ完全に放棄することも必要です。そのためには、営業リーダーは質の高いパフォーマンス指標を確実に収集する必要があります。これはつまり、営業担当者、チーム、地域レベルで、リード、取引、収益、顧客満足度を追跡するということです。
最新かつ最高のセールス・プランニング・ツールも、サイロ化された状態では期待されるメリットを提供することはできません。ポイント・ソリューションや断片的なシステムでは、複雑化する市場において営業部門の複雑なニーズを満たすことはできません。
Oracle Customer Experienceアプリケーション・スイートの一部であるOracle Sales PlanningとOracle Sales Performance Managementは、Oracle Enterprise Performance Management(EPM)スイートに含まれる財務および人材計画モジュールとシームレスに接続します。これらのセールス・プランニング・ツールは、営業チームのパフォーマンスをリアルタイムで可視化します。営業リーダーは、これらのツールを使用して、大規模なチームや個々の担当者のノルマを設定、分析、調整できます。また、このアプリケーションを使用して、予測の精度を高め、担当区域の割り当てを最適化し、リードを創出し、ボトルネックを解消し、効果的な戦術を特定し、他の事業部門と連携することもできます。オラクルのクラウドベースのセールス・プランニング・ソリューションは、データとAIの力を活用し、かつては営業リーダーにとって夢物語に過ぎなかったインサイトを提供します。
新型コロナウイルスにより、営業活動はどのように変化したのでしょうか?
パンデミックによるロックダウン、ソーシャル・ディスタンスの措置、旅行制限により、オンライン販売への移行が加速しました。対面での営業機会の減少を嘆く声もありますが、オンラインで取引される案件の割合が増加するにつれ、大量のデータがもたらされることは、販売計画者にとって大きなメリットとなります。
営業部門以外では、販売計画はどのように利用されていますか?
販売計画者は、CFOが設定した収益目標が達成可能な販売ノルマに変換されるよう、財務リーダーと緊密に連携する必要があります。また、営業担当者のインセンティブとなる報酬パッケージを提供できるよう、人事部門と協力する必要があります。さらに、顧客の関心を惹きつける共通のメッセージを発信できるよう、マーケティング部門とも協力する必要があります。
販売ノルマはどのように設定されるのでしょうか?
販売企画者は、財務部門および経営陣から引き継いだ収益目標に基づいて、地域、チーム、および個々の営業担当者のノルマを設定します。
販売計画に革命をもたらすテクノロジーについて教えてください。
営業活動の複雑化に伴い、財務、人事、マーケティング、パフォーマンス管理、その他のアプリケーションと統合されたクラウドベースの計画ソリューションの導入が加速しています。これらの統合アプリケーションに、営業支援プラットフォームから抽出した質の高いデータを投入すれば、営業部門は、AIを活用して予測を精密化し、実行計画を改善し、顧客の接待で忙しい現場の営業担当者に貴重なインサイトを提供できるようになります。