組織の運営に必要となるデータベースの選択にあたっては、数多くの要素について検討する必要があります。必要なパフォーマンス、スケール、可用性を備えているか。あらゆるビジネス・ワークロードに柔軟かつ効率的に対応できるか。イノベーションを可能にする機械学習、advanced analytics、およびアプリケーション開発ツールが統合されているか。
絶えず変化するビジネス環境で顧客が期待するサービス・レベルを提供するために、企業は自らのアプリケーションに幅広い機能セットを必要としています。導入オプションにはそれぞれ長所と欠点があるため、アプリケーションのポートフォリオをサポートするデータベースをどこに導入するかを決めることは非常に重要です。
必要なデータベースの導入場所を決定するにあたっては、各データベースがサポートするアプリケーションのタイプ、データベースとアプリケーション間のデータフロー、および各データベースの重要度のレベルを考慮することが重要です。中核的な業務アプリケーションでは、より高いレベルのパフォーマンス、スケール、可用性、およびセキュリティが必要になります。それらのデータベースは、どこで実行するかにかかわらず、次に示すような主要な機能を提供する必要があります。
こうしたコアのデータベース機能以外にも、導入プラットフォームによってそれらの利用が可能になる場合もあれば制限される場合もあります。ただし、エンタープライズ用途のデータベースでは、24時間365日の運用に対応できるように、高可用性がソフトウェアおよびハードウェアのレベルで組み込まれている必要があります。また、特に組織が地理的に分散している場合や、ランサムウェアの脅威に直面している場合には、災害復旧も重要になります。さらに、多くの人が見落としがちですが、高いパフォーマンスもまた重要です。なぜなら、業務上不可欠なアプリケーションが、成長を支えるのに必要な大量のトランザクションや分析をサポートできるようになるためです。
たとえば、多数の顧客取引に対応する必要があり、最新のデータに対してほぼリアルタイムでレポートの実行を必要とする小売企業では、クラウドのコンバージド・データベース・ソリューションを選択できます。一方で、最高レベルのセキュリティとデータ・レジデンシーが求められる銀行では、独自のデータセンターでソリューションを実行する必要があるかもしれません。
企業は、ニーズに最も適したデータベースはどれかを検討するだけでなく、そのデータベースをどこに導入するかについても検討する必要があります。これらの選択肢は互いに関連したものになります。なぜなら、特定のデータベースを1か所で実行するだけでよい場合もあれば、ある場所のプラットフォームでデータベースを実行する方が別の場所のプラットフォームを利用するよりもはるかに優れている場合もあるためです。こうした組合せを探す簡単な方法として、優先されるデータベースが、パブリック・クラウド、プライベート・データセンター、データセンター内のクラウド、あるいはエッジ環境といった、望ましい場所で実行できるかどうかを調べることができます。
顧客データセンターにデータベースを導入する場合、いくつかの利点がもたらされます。データベースが他のシステム、アプリケーション、データ・リソース、およびユーザーに物理的に近い場所にあるため、低レイテンシでデータにアクセスできます。オンプレミスのデータセンターでは、データベースとインフラストラクチャは完全に顧客の管理下にあり、データ・レジデンシーの要件と数多くの業界ベストプラクティスを満たしています。ビジネス・プラクティスによっては資本的支出(CapEx)の財務モデルの使用を必要とする場合もあり、顧客データセンターにリソースを導入することでそうしたことが容易になります。このアプローチでは、基礎となるハードウェア・インフラストラクチャやデータベースを管理するデータベース管理者(DBA)が必要になります。
このアプローチには次の2つの特徴があります。
多くの企業にとって、データベースをパブリック・クラウドで実行するという選択肢は魅力的です。速やかに実装でき、初期投資の必要がなくなる可能性が高いという利点があります。また、パブリック・クラウドでは、一定レベルのインフラストラクチャとソフトウェア管理も提供されます。パブリック・クラウドへの導入では、データセンターのスペース、機械、ハードウェア運用スタッフへの投資は一切不要であり、コストを削減できます。加えて、データベースの実行に必要なすべてのハードウェアおよびソフトウェア・コンポーネントを個別にインストールして管理する必要がないため、ユーザーは短時間でデータベースを作成できます。パブリック・クラウドのアプローチでは、将来のワークロードの進化に応じてリソースの追加や入れ替えといった活用が簡単に行えます。
パブリック・クラウドを採用する場合、アプローチは企業ごとに異なり、それぞれについてトレードオフが異なります。これらのさまざまなアプローチは、Infrastructure-as-a-Service(IaaS)、Platform as-a-Service(PaaS)、マルチクラウド環境、顧客データセンター内のパブリック・クラウド、およびプライベート・クラウドで導入されています。
アプローチの1つとして、ベアメタルまたは仮想のインフラストラクチャ上のクラウドにデータベース環境を構築し、そのインフラストラクチャをオンプレミスであるかのように管理します。これにより、インフラストラクチャを必要に応じて正確に調整でき、ハードウェアの管理が不要になり、仮想化ソフトウェアの管理も不要になる可能性があります。こうした実装を継続的に管理するには、時間とシステムの管理に関する豊富な専門知識がDBAに求められます。
このアプローチを選択する具体的な理由は次のとおりです。
IaaS環境へのデータベースの導入は、高度に特化されたデータベース(特に、小規模で、将来拡大する可能性が低く、アプリケーションと密接に連携しているデータベース)を使用している場合に最適となる可能性があります。
このタイプのクラウド・サービスはDatabase as a Service(DBaaS)とも呼ばれ、データベースの実行に必要なコンピュート、ストレージ、およびデータベース・ソフトウェアを提供します。サービスによっては、DBAが物理ハードウェアの設定や管理、ソフトウェアのインストール、データベースの設定を行う必要がないものもあります。DBaaS環境では、ユーザーは短時間でデータベースをプロビジョニングできます。また、システム管理の作業が不要になり、多くの場合、必要となるデータベース管理の量が減ります。DBaaS環境内へのデータベースの導入ではいくつかのオプションがあります。
コンバージド・データベースおよび自律型データベースのアプローチの中では、複数の異なるタイプのインフラストラクチャを利用できる場合があります。
導入の選択肢にかかわらず、コンバージドおよび自律型データベースのオプションは、特定のタイプのワークロードをサポートするようにチューニングしつつ、他のすべてのワークロードを引き続きサポートできます。たとえば、次のワークロード・タイプがあります。
PaaS環境へのデータベースの導入は、インフラストラクチャやデータベースの管理操作を最小限に抑えたい場合、または数百から数千のデータベースのインフラストラクチャを統合して全体的なコスト削減を目指す場合に最適となる可能性があります。PaaS環境の自律型データベースではさらに、データベース管理そのものが事実上排除されるというメリットももたらされ、データ管理チームは基礎となるデータベース・ソフトウェアにではなく、スキーマ、データ、ユーザーに注力できます。
何百ものアプリケーションの実行を必要とする大企業には、複数のクラウドを併用するのが最適であることが明らかになっています。ビジネス・ニーズによっては、最高の機能性、最高のパフォーマンス、最小限のコストを実現するソリューションを得るために、マルチクラウド環境と呼ばれる複数のクラウドにアプリケーションやデータベース・スタックを分散させることが必要になります。
マルチクラウド環境では、あるクラウドでアプリケーション層を実行する(そのクラウドでのみ実行される可能性が高いため)と同時に、アプリケーション層を実行しているクラウドよりも高いパフォーマンス、大きなスケール、または低いコストを実現する別のクラウドでデータベース層を実行するのが一般的です。マルチクラウド環境においては、アプリケーション・パフォーマンスを低下させるレイテンシを最小限に抑えるために、他と比べて各プロバイダーのクラウド・データセンターを互いに近い距離に配置することが重要です。
また、クラウドごとに発生する問題を特定して解決し、データ・エグレス・コストを最小限に抑えるために、マルチクラウド・アーキテクチャで利用するさまざまなクラウド・ベンダーとの間で共通のサポート・ポリシーによる戦略的な関係を築くことも重要です。
マルチクラウド環境へのデータベースの導入は、高パフォーマンスのエンタープライズ(またはおそらく自律型)データベースを必要としていて、同じクラウドでは容易に利用できないアプリケーションを利用できるようにする必要がある場合に、最適となる可能性があります。
多くのビジネス要件や政府の規制では、企業のデータを自社データセンターの内部に維持することや、企業データの存在を国の地理的範囲内に制限することが義務づけられています。こうした目標を達成するために、企業はパブリック・クラウド・リソースを自社データセンター内に導入して、クラウド・プロバイダーにインフラストラクチャの管理を任せることができ、サービスによってはデータベースの管理も任せることができます。このアプローチでは、たとえばデータ・レジデンシー、セキュリティ、レジデンシーの要件を満たすサブスクリプションベースのパブリック・クラウド・サービスなど、クラウドの価値とメリットがもたらされます。こうしたLCaaS(Local Cloud as a Subscription)のモデルにより、クラウドによる自動管理、専用のインフラストラクチャによる高パフォーマンス、統合による効率性のメリットがもたらされます。1日の、または長期間のワークロードの変動に応じて、消費量をスケールアップまたはスケールダウンできます。顧客データセンター内のパブリック・クラウド・サービスへの導入では、次のような多くの利点がもたらされます。
こうしたソリューションの中には、顧客データセンター内のパブリック・クラウド・リソースに自律型データベースを導入できるものがあり、それらのデータベースが提供するスケーリング、プロビジョニング、パッチ適用、障害管理の自動化によるメリットを享受できます。このような高度な自動化機能により、ヒューマンエラーが排除されると同時に、低コストの従量課金制の利用によってコストが削減されることで、データの可用性とセキュリティが向上します。
顧客データセンター内のパブリック・クラウド・リソースへのデータベースの導入は、パブリック・クラウドのリージョンでは対応できないデータ・レジデンシーおよびセキュリティの要件がある場合に最適です。また、データセンターの既存のリソースで引き続きアプリケーションを実行しながら、クラウドの自動化と従量課金制のデータベース料金のメリットを享受したいと望んでいる企業にとっても、このアプローチが最適となる可能性があります。
従来は、データベースを顧客データセンター内の共有インフラストラクチャに導入していました。このインフラストラクチャでは、優れたパフォーマンスと可用性を目的として設計されたインフラストラクチャ上でアプリケーション、ミドルウェア、データベースを実行していましたが、多額のコストがかかり、データベース固有のパフォーマンス最適化が実現されていませんでした。
近年、この共有のアプローチを起点として、データベースが最適に実行されるように専用のオンプレミス・インフラストラクチャを特別にチューニングしたプライベート・データベース・クラウドという概念が登場しています。これらのプライベート・データベース・クラウドは、それを利用する企業が所有、管理しますが、複数のデータベース・バージョンを同じインフラストラクチャ上で実行することで、きわめて高いレベルでのデータベースの統合が可能になるという利点を備えています。これらのプラットフォームには高レベルの自動化が組み込まれており、データベースごとにパフォーマンスSLAの達成に必要なリソースが確保されると同時に、重要なアプリケーションについてレイテンシの影響を受けやすいアクティビティが優先的に処理され、それらが可能な限り最高のパフォーマンスで実行されるようになります。
プライベート・クラウドでのデータベースの実行は、データベースとアプリケーションについて高レベルのカスタマイズと相互接続性を行っている場合に最適なアプローチとなる可能性があります。ほとんどのアプリケーションで、プライベート・データベース・クラウドと従来のオンプレミス・データベースの導入との区別がつかないため、クラウドへの移行を始めるにあたって最も簡単なアプローチとなる可能性があります。
ほとんどの企業では、データベースをクラウドに導入するか自社のデータセンターに導入するかの二者択一にすることはなく、双方を取り入れ、それらを連携させるために2つの環境を必要としています。ハイブリッド・クラウド環境への導入を必要とするシナリオは多数あります。たとえば、企業の多くはアプリケーションの開発環境と導入環境を別々にしています。または、リモートの運用をサポートするアプリケーションをパブリック・クラウドで実行し、一方で一元的な運用を自社のデータセンターで実行している企業もあります。
ITワークロードを最小限に抑えるために、データベースをハイブリッド・クラウド環境に導入する場合、その重要な要件の1つとなるのは、データベース・ソフトウェアとそれを実行するハードウェアが、すべての環境にわたって同じ機能、管理、およびセキュリティを提供することです。データベースやアプリケーションを別の場所に移して一貫した方法で管理する場合、高レベルの同一性を備えた環境であれば必要な作業量が軽減されます。
クラウド・プロバイダーの選択にあたっては、完全で統合的なソリューションを提供していることに加えて、一連の幅広いコンバージド・データベース機能を備えていること、必要に応じて導入を実現可能にする高レベルのインフラストラクチャ同一性を備えていることを考慮する必要があります。それらの条件を満たすソリューションを選択すれば、コストを低く抑えつつ、柔軟性、スケーラビリティ、成長の要件に確実に対応できるようになります。
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