クラウドERPの主なメリットと移行すべき15の理由

Michael Hickins | コンテンツ・ストラテジスト | 2024年3月21日

近年、最高財務責任者(CFO)はより戦略的で影響力のある役割を担うようになりました。このような背景の中、クラウドERPアプリケーションは、CFOに、さまざまな財務・業務システムからのデータを集約して分析するための重要なツールを提供します。これらのアプリケーションは、例えば、在庫レベルが指定されたしきい値に達した場合に在庫補充を開始するなど、事前に定義されたイベントへの応答を自動的にトリガーしたり、ビジネスリーダーの意思決定を支援する最新情報を含むレポートを作成したりすることができます。

変化のペースが速く、ある地域の出来事がほぼ瞬時に別の地域にも影響を及ぼす中、財務リーダーやその他のリーダーは、ビジネスに影響を与える重要な問題を迅速に特定し、対処するために、クラウドERPアプリケーションをますます活用するようになっています。

クラウドERPとは

Saas(software as a service)ソリューションであるクラウドERPは、相互接続された業務・財務システムのデータを統合することで、ビジネス・リーダーによる組織管理を支援します。通常、クラウドERPシステムは、財務、会計、予算と計画、調達、在庫、製造、サプライチェーン管理など、さまざまな機能をカバーしています。また、人事、営業、マーケティング、カスタマーサービス、サポートなどのクラウド・アプリケーションと統合し、単一のダッシュボードを介したデータ・アクセスを可能にします。さまざまな役割の人々が、これらのデータに自動化されたトリガーやレスポンスを組み合わせることで、データの有効活用が可能になります。

クラウドERPアプリケーションはインターネット経由で提供されるため、ユーザーがどこにいても、好きなデバイスでアクセスできます。さらに、アプリケーション・プロバイダーの責任で、定期的な機能アップグレードやセキュリティ・パッチがインターネット経由で提供されるため、サービスが中断されることはありません。

主なポイント

  • クラウドERPアプリケーションは、企業が日々の業務に使用する財務・業務システムです。
  • クラウドERPは、オンプレミスのERPソリューションに比べて柔軟性が高く、企業はパフォーマンスの問題を心配することなく、季節的な変動に応じて使用量を調整することができます。また、クラウドERPはサブスクリプション・サービスとして提供されるため、設備投資に充てられるはずだった資金を節約できます。
  • クラウドERPでは、セキュリティパッチ、メンテナンス、アップグレードの責任は、顧客ではなくクラウド・プロバイダーにあります。
  • ほとんどのクラウドERPアプリケーションは、特にそれらが統合スイートの一部である場合、他のバックオフィス・システムとの統合がオンプレミス・アプリケーションと比較して容易です。この統合により、ビジネスの状況や運営に関する最新のデータを、レポート作成、分析、意思決定プロセスなどに、より簡単に反映できるようになります。

クラウドERPと従来のERPの比較

クラウドベースのソリューションは、オンプレミスと比較して、よりアジャイルかつユーザーフレンドリーなアプローチを提供します。そのため、クラウドERPも、実装、アクセス、保守、セキュリティ、機能アップデートの面でよりシンプルです。例えば、クラウドERPは数年ではなく数か月で導入が完了します。また、メンテナンス、機能アップデート、セキュリティ・パッチ、インフラストラクチャはすべてクラウド・プロバイダーが管理します。オンプレミスERPの場合、これらはすべて企業の責任となります。クラウドERPシステムには、ブラウザやモバイルデバイスを通じて職場以外からもアクセスできます。一方、オンプレミス・システムでは、そのような機能は皆無か無いに等しいでしょう。

全体として、クラウドERPシステムは、従来のオンプレミス・ソリューションと比較して、柔軟性、拡張性、アクセシビリティに優れています。クラウドERPシステムは、社内のITリソースへの依存度を減らし、インフラストラクチャのコストを削減し、最新のデータを提供し、モバイルファーストの職場環境をサポートします。

オンプレミスERP クラウドERP
導入までの期間 1年以上 数か月
社外からのアクセス 困難または不可能 インターネットでブラウザとパスワードを使用してアクセス可能
メンテナンス 自社の責任 クラウド・プロバイダーの責任
セキュリティ・パッチ 自社の責任 クラウド・プロバイダーの責任
機能アップデート IT部門が優先事項として担当 自動的または定期的に適用
インフラストラクチャの要件 社内でのサポートが必要 クラウド・プロバイダーが担当
モバイル対応機能 機能なし 機能あり
データの妥当性/適時性 バッチ処理のタイミングに依存 頻繁またはリアルタイムのデータ更新

クラウドERPの15のメリット

エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)」という言葉は、1990年代に作られたものですが、そのルーツは1960年代の資材所要量計画システムまで遡ります。クラウドベースのERPアプリケーションは、多くの点で、旧世代のオンプレミスERPシステムよりも進化しています。例えば、導入のしやすさ、更新頻度の高さ、社外からのアクセスのしやすさ、消費者向けアプリに近いユーザーインターフェイスなどです。

1. 導入期間の短縮

クラウドERPの導入は、多くの場合数週間から数カ月で完了します。一方、従来のオンプレミス・システムの導入には少なくとも1年かかり、大規模なものでは数百万ドルのコンサルティング費用がかかることもあります。クラウドERPシステムはオンプレミス・システムよりもモジュール化されており、導入が容易なため、企業はより迅速にアプリケーションの使用を開始することができます。

2. 強力なセキュリティ

大手クラウド・プロバイダーは、多くの場合、顧客のIT部門の総従業員数よりも大規模なセキュリティ・チームを擁しています。また、自社のシステムと顧客データを保護するという単一の目的にフォーカスしています。これとは対照的に、ERPシステムを社内で管理している企業は、タイムリーなテストとアップデートの実装のためのITリソースが不足しているため、新たに特定された脆弱性に対処するための重要なセキュリティパッチの適用に遅れが生じる可能性があります。また、クラウド・プロバイダーは、役割ベースのアクセス制御の実装を簡素化するためのサポートを顧客に提供します。

3. 柔軟性の向上

クラウドERPでは、新しいIT機能を段階的に導入することが容易です。例えば、財務のクラウド化から始めて、リスク管理、調達、分析、サプライチェーン、その他の機能を順次クラウド化していくことも可能です。

4. リアルタイム・データ

クラウドERPアプリケーションは、さまざまなデータソースと統合できるように設計されています。そのため、レガシーなオンプレミス・システムのように毎日バッチ更新を行うのではなく、データが利用可能になり次第、ユーザーのダッシュボードにデータを流し込むことができます。例えば、調達チームが顧客需要の増加により生産量を増加させる必要性について、よりタイムリーな最新情報を得ることができれば、必要な物資をより早く発注することができます。

5. 拡張が容易

クラウドERPシステムの使用量が四半期や年によって変動する場合、その増減を管理するのはクラウド・プロバイダーの責任です。貴社のIT部門は、急増に対応するためのサーバー容量やストレージの追加割り当てを心配する必要はありません。また、将来ユーザー数が変化しても、シート・サブスクリプションの追加や削減が可能です。これとは対照的に、オンプレミスERPでは、新しいオフィスを開設したり、企業を買収したりする場合でも、ソフトウェアやハードウェアの容量を拡大または縮小するために、ITリソースを割り当てる必要があります。

6. サポートの充実

あるクラウド・アプリケーション・プロバイダーから別のプロバイダーへ乗り換えることが比較的容易なため、これらのプロバイダーは、24時間365日利用可能で、99.999%のアップタイムを保証する堅牢なサポートを提供することに意欲的です。また、プロバイダーは自社のアプリケーションを誰よりも熟知しています。そのため、さまざまなアプリケーションやインフラストラクチャをパッチワークのように管理する顧客の社内ITスタッフよりも、より適切なサポートを提供することができます。

7. 運用コストの削減

クラウド・コンピューティングでは、企業は実際にERPアプリケーションを使用する従業員の数だけ料金を支払い、必要に応じてその数を増減させることができます。さらに、クラウドサービスでは、アプリケーションや基盤となるハードウェアのインストールや保守の負担がプロバイダーに委ねられます。また、前述したように、クラウドERPサービスは、コンサルタントやインテグレーターの必要性を減らすだけでなく、社内のデータセンターや、システムのメンテナンス、セキュリティ、アップデートを管理するITスタッフの必要性も減らします。

8. 可視性の向上

オンプレミスのシステムではデータがサイロに格納され、多くのユーザーやアナリストがアクセスできない傾向があります。一方、クラウドERPアプリケーションでは、マーケティング、人材管理、サプライチェーン・マネジメント、在庫管理など、さまざまなシステムのデータを簡単に集約し、レポートや、分析に反映できます。例えば、販売計画、マーケティング・キャンペーン管理、在庫管理アプリケーションから統合されたデータを活用することで、財務チームは収益予測の精度を高め、より効果的に資金を管理することができます。クラウドERPシステムでは、ユーザーが外出先からモバイルデバイスでアクセスできるため、可視性も向上します。

9. スムーズなコラボレーション

クラウドベースのERPシステムにより、関係者はどこからでもシステムにアクセスでき、統合されたデータセットをレポートやデータ分析に利用することができます。これにより、異なる部門の人々が同じデータを同じフォーマットで見ることができるだけでなく、更新情報を入力して共有し、リアルタイムで業務ダッシュボードに反映させることができます。例えば、倉庫管理システムやモジュールからのデータを注文管理システムからのデータと同じダッシュボードに反映させることで、新しい注文に対応できるだけの在庫があるかどうかを簡単に確認することができます。さらに、クラウド・アプリケーションは、従来のオンプレミス・アプリケーションのコマンド方式のインターフェースとは対照的に、ミレニアル世代をはじめとする新しい人材に適した、ユーザーフレンドリーなポイントアンドクリック型のインターフェースを備えています。

10. より迅速なアップデート

3年ごとに大幅なアップグレードが行われることが多いレガシーのオンプレミス・アプリケーションとは異なり、クラウドERPアプリケーションは通常四半期ごとにアップデートが行われます。これにより、システムを停止することなく最新機能を手に入れることができます。例えば、クラウドERPシステムは、GAAP、Sarbanes-Oxley、その他の財務基準に合わせて定期的に更新され、コンプライアンスが維持されます。

11. モバイル・アクセスが可能

ERPやその他のクラウドベースのアプリケーションは、あらゆるモバイルデバイスのWebブラウザからアクセスできるだけでなく、基本的なタスクやレポート作成を簡素化するモバイルアプリが付属することが増えています。例えば管理者はモバイルデバイス上のクラウドERPシステムの経費アプリから、従業員の経費を素早く承認することができます。モバイル機能は、従業員が頻繁に出張したり、現場で働いたり、現場からの最新情報を必要とする企業にとって極めて重要です。

12. 二酸化炭素排出量の削減

クラウド・プロバイダーが、冷却、コンピュート、ストレージなどERPサービス提供目的にデータセンターで使用する電力は、何千もの企業がそれぞれ別のデータセンターで同じことを行う場合と比べて少なくて済みます。クラウド・プロバイダーは、最先端のロード・バランサやその他の省エネ技術を使用して節電し、これらのアプリケーションのカーボン・フットプリントを削減することで、経済的インセンティブが得られます。またこれらのアプリケーションはすべてのユーザー間で共有されるため、その実行に必要な電力を全体的に削減できます。

13. あらゆる業界に対応

多くのクラウドERPシステムは、建設業や小売業など、特定の業界向けに開発されていますが、そのビジネス・プロセスは多くの共通点を持っている場合がよくあります。最も有用なクラウドERPアプリケーションは、さまざまな業界のベストプラクティスを取り入れ、モジュールや拡張機能により特定の業界のニーズに対応するものです。これらのモジュールには、例えばホスピタリティ業界の客室管理モジュールなどがあります。このアプローチにより、ユーザーは業界のベストプラクティスに基づく標準化された機能と、コストのかかるカスタマイズの必要性を最小限に抑える安定したコードベースの両方からメリットを得ることができます。さらに、一部のクラウドERPスイートには、業界固有のレポート要件やプラクティスに対応するモジュールが含まれているものもあります。

14. 効率の向上

ERPアプリケーションをクラウドに移行することで、企業はITリソースをより価値の高い仕事に割り当てることができます。また、社内外のすべてのレポーティングに単一のデータソースを用いることで、効率を向上させ、すべての関係者がどこにいてもデータやレポートにアクセスできるようになります。さらに、自動化とデータ共有の促進により、手作業に費やす時間が大幅に削減されるとともに、プロセスの連結と定量化が可能になります。

15. 統合が容易

最新のクラウドERPアプリケーションは、さまざまなソースからのデータを統合しながら、適切なレベルのセキュリティとアクセス制限を維持するように構築されています。たとえば、ERPアプリケーションを人事アプリケーションと統合することで、財務部門は、従業員数と予想売上の比率を確認することができます。

クラウドERPのビジネスケースの構築

先にも述べたように、クラウドERPは、資本支出とカーボン・フットプリントを削減しながら、これらの重要なアプリケーションの実装、アクセス、保守、保護、拡張、更新を容易にするなど、さまざまな方法で企業を支援します。クラウドERPのビジネス・ケースの構築を担当するチームや従業員は、企業の意思決定者に対し、そのメリットや、時間とリソースに見合った利益が得られる理由を詳細に説明する必要があります。これには、クラウドERPシステムを企業のビジネス戦略に結び付け、コストと導入スケジュールを提示し、AIなどの新機能の価値を定量化すること(収益予測やその他のビジネス機能をどのように改善できるを提示)が含まれます。

Oracle Fusion Cloud ERPによるクラウドへのアップグレード

Oracle Fusion Cloud ERPを利用する企業は、オラクルのハイパフォーマンス・クラウド・インフラストラクチャ上でホストされるアプリケーション内で、財務、製造、調達向けの最先端の機能を活用できます。Oracle Cloud ERPは、財務、サプライチェーン、リスク管理、パフォーマンス管理、およびその他のビジネス・データを1つの共通モデルに統合する統合アプリケーション・スイートです。このスイートは、オラクルやサードパーティ・プロバイダーが提供するアプリケーションとの統合を容易にするために開発されました。

クラウドERPのメリットに関するよくある質問

クラウドERPの実装にかかかる期間はどれくらいですか?
クラウドERPシステムの実装には、必要な統合、レガシーERPフットプリントの範囲、および移行が必要なデータの量に応じて、数週間から数か月かかる場合があります。

なぜクラウドERPはより安全なのでしょうか?
クラウド・プロバイダーは、顧客のアプリケーションとデータを保護し、最新のテクノロジーやプラクティスを適用するための大規模な専門チームを保持しています。しかし、自社のデータセンターでアプリケーションを実行している企業ではそうはいきません。

クラウドERPはどのように時間を節約するのでしょうか?
クラウドERPシステムは、サービスとして提供されるため、お客様が自社のデータセンターで(コンサルタントの助けを借りて)ERPシステムを導入する場合と比べてより早くメリットを享受できるため、価値実現までの時間が短縮されます。

Oracle Cloud ERPは、企業が新しいビジネス・モデルとプロセスを迅速に導入するためのアジリティを提供し、コスト削減、予測精度の向上、およびイノベーションの加速などを支援します。その様子を実際にご覧ください。