10の主要ERPモジュールとその機能

Mark Jackley | コンテンツ・ストラテジスト | 2023年2月28日

エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムは、最新のビジネスの中核をなします。スタッフがシステムを使用して一般的なビジネス・トランザクションを実行することで、データは企業全体を循環します。ERPシステムから出力されるインサイトは、ビジネスパフォーマンスを測定し、意思決定の指針として役立ちます。

ERPの機能は、多くの場合モジュールと呼ばれる、特定の機能によって構成されています。モジュールは、財務、調達、サプライチェーン、人事など、ビジネスの特定の部門に対応するように設計されています。分散したチームが中央のERPプラットフォームにアクセスすることで、全員が同じシステムを使用し、ビジネスの共有ビューと中央のリポジトリに収集されたデータ・ソースから真のシングル・ソースを作成します。

ERPモジュールとは

ERPモジュールは、単純にERPシステムのコンポーネント、またはビジネス機能やプロセスを指します。これらのモジュールには、財務および会計、調達、需要計画、および人事といった特定の非財務機能など、主にビジネスのバックオフィスに対応する機能が含まれています。企業によっては、顧客関係管理 (CRM) などのフロントエンド機能をERP システムに追加し、企業の端から端までを統合できるようにすることもあります。部門を超えた中央のプラットフォームとデータベースにより、ユーザーはデータをまとめる時間を減らし、戦略的なタスクに多くの時間を費やすことができます。

ERPモジュールの説明

ERPシステムはモジュール化されていますが、モジュールの購入や追加については、企業によって様々なアプローチがあることを理解することが重要です。企業によっては、ERPの導入に「ビッグバン」アプローチを選択し、必要な機能をすべて一度に導入して本稼働させることもあります。また、財務管理機能の導入後に、調達や人事といった段階的なアプローチをとり、それぞれのフェーズで長期的なロードマップに沿って進めているところもあります。また、ビジネス・ユニットやグローバル地域ごとにフェーズを展開し、同じ土台を用いつつ、必要に応じて機能を追加していく場合もあります。もう一つの例は、M&A活動です。 ある企業が他社を買収した場合、それを事例として段階的なERP導入に利用することがよくあります。

ERPシステムは、単一のデータベース内の明確に定義されたデータ構造で動作するため、それに接続するモジュールは同様の方法で動作します。どの部門からもたらされたものでも、共通の定義と共有されたユーザー・エクスペリエンスに基づき、データの一貫性が保たれます。異なるビジネス・プロセスによる混乱ではなく、秩序とプロセスのオーケストレーションがあります。

10の主要ERPモジュールとその機能

ほとんどのERPソリューションは、財務から始まり、ビジネスの優先順位、業界、状況の変化に応じて、付加的な機能を追加します。ここでは、10の主要ERPモジュールをリストアップし、それらがどのように組織に役立つのか、そしてなぜ企業はそれらを使用することを決定するのかについて説明します。

ERPモジュールのトップ10には、人事、リスク管理、調達、ERP分析、サプライチェーン・マネジメントが含まれています。

1 財務管理

財務管理モジュールは、ERPシステムの基盤です。買掛金と売掛金を追跡し、総勘定元帳の管理を支援することで、このモジュールは現在の財務状況と展望に焦点を当てます。また、貸借対照表や支払領収書などの重要な財務書類を作成および保存します。

自動化が重要な役割を担っています。財務モジュールは、請求書作成、ベンダー支払い、経費管理、資産管理、ジョイント・ベンチャー会計などに関するタスクを自動化します。例えば、資金管理の自動化により、キャッシュ・トランザクションの分析が簡素化し、キャッシュ・フロー予想が改善します。会計チームは、収益認識に関する厳格なガイドラインに準拠しながら、時には1週間以上も短縮して決算を行うことができます。貸借対照表の自動化により、ほぼリアルタイムのデータを提供し、企業の財務ポジションを最も正確に把握することができます。

2 調達

調達モジュールは、商品の製造や販売に必要な製品や材料を購入する能力を向上させます。見積書の自動化、追跡、分析を行い、注文書の作成と送付を支援します。承認されたベンダーのリストを使用し、プロセスを迅速化、コンプライアンスに基づいた支出を実施、サプライヤーとの関係を改善、そして最終的に収益性の向上に貢献する、特定品目の購入を自動化することができるモジュールです。

何よりも、適切なモジュールは、ショッピングおよび支出、さらに直接材料やサービスの購入を管理する方法を合理化し、エンドツーエンドで調達を簡略化します。サプライヤーとの交渉や契約締結に使用されるリアルタイムのデータにより、購買力を統合する方法を特定することもでき、供給の混乱を軽減しながら最低コストを確保することができます。

3 リスク管理

リスク管理とコンプライアンスのモジュールは、人工知能(AI)と機械学習を使用して財務管理を強化し、財務チームが資金漏れの防止、監査の実施、新たなリスクからの保護を実現し、これらすべてが手作業の時間を短縮することができます。

リスク管理機能により、職務分掌(SoD)報告やユーザー・アクセスの付与と制御などのプロセスを自動化することで、コンプライアンスを維持することができます。また、自動化により監査処理が高速化されるため、不正やエラー、ポリシー違反などを迅速に特定することができます。また、監査や サーベンス・オクスリー法(SOX法)対応、リスク管理、事業継続計画などのワークフローを効率化することも可能です。

4 サプライチェーン管理

サプライチェーン・マネジメント(SCM)モジュールは、サプライヤーやサブサプライヤーからメーカー、そして流通業者や小売業者、消費者に至るまで、サプライチェーンを通じて供給品や商品がどのように移動するかを追跡します。ビジネス全体の需要、供給、注文処理、生産を効率的に計画し、混乱を抑えてコストを最小限に抑え、適切な在庫を適切な時期に適切な場所で入手できるように確保することができます。

代表的な事例: サプライチェーン管理システムは、需要予想に基づいて品目や場ごとに最適な在庫量と補充量を決定し、過剰在庫や在庫切れを回避できるようにします。また、自動化により、受注、決済、販売後の顧客対応などを簡素化する受注管理など、サプライチェーンのプロセス全体で時間とコストを削減することができます。

サプライチェーン・モジュールは、セグメンテーションや変動性管理に役立つ機械学習などの機能で、需要予測を支援することもできます。このような機能により、市場の変化や世界的なショックに対応できる、より回復力のあるサプライチェーンが構築されます。

5 エンタープライズ・パフォーマンス管理

エンタープライズ・パフォーマンス管理(EPM)モジュールは、ビジネス計画、予算、予想、パフォーマンスに関するレポート作成に役立つプロセスを強化します。財務計画、業務計画、事業部門計画を一元的に把握することで、従来のサイロ化された計画から、連携した計画を実現することができます。また、これらのモジュールは、自動化を利用して決算報告を加速させます。

シナリオ・モデリング、長期計画などの機能により、EPMモジュールはコストと収益性に対する理解を深め、収益目標の達成を支援し、勘定照合や税務報告を合理化します。EPMの使用により、財務、人事、サプライチェーン、営業など、主要な分野でのモデル化とプランニングが可能になります。

6. 製造プロセス

製造モジュールにより、ビジネスにおける生産稼働の計画と管理が容易になります。そのためには、設備に需要に見合った原材料があり、生産現場が効率的に運営され、完成品の品質を確保しながらコストが抑えられていることを確認する必要があります。

今日のモジュールでは、混合モード製造が可能なので、ディスクリート製造とプロセス製造のような製造プロセスを1種類だけでなく複数組み合わせて使用することができます。これにより、ポートフォリオの多様化、新規顧客の獲得が可能となります。例えば、飲料の製造はプロセス製造、ボトルや缶の製造は部品や組み立てに特化したディスクリート製造と使い分けることができます。また、工場ごとのコストや差異を監視し、予想に対する生産量を追跡し、品目の生産にかかる平均時間を計算した上で予測される需要に対する供給量を比較することができます。

7 カスタマ・リレーションシップ管理

カスタマ・リレーションシップ管理(CRM)モジュールは、営業やマーケティングのプロセス、特にセールス・リードをサポートするプロセスを改善することによって、顧客管理を支援します。これらのモジュールは、顧客とのやり取りや購入履歴など、顧客や見込み客のあらゆる情報を保存し、セグメンテーション・データやターゲットとなるクロスセルの推奨を提供します。

CRMモジュールに求められる機能は、コンタクト管理、コミュニケーション追跡、機会またはリード追跡、受注履歴、チケット発行、見積書作成、販売代理店の生産性などです。最も重要なことは、最初のマーケティング段階から見積もりや販売プロセスを通じて顧客を追跡し、最終的に販売と継続的な顧客サービスを実現するモジュールであることです。

ノート:すべての組織やERPベンダーが、CRMをERPモジュールとみなしているわけではありません。財務管理などのバックオフィス業務に近いモジュールだけを含むものもあれば、顧客との関係管理などのフロントオフィス業務を含む広い視野のものもあります。

8 人事

人財管理(HRM)と呼ばれることもある人事管理(HCM)モジュールには、パフォーマンス評価、職務内容、福利厚生の選択、出勤や休暇など、すべての従業員に関する詳しい記録が含まれています。他のERPモジュールと同様に、毎年使用するスプレッドシートを自動化し、全社的なデータを継続的に収集することで、重複するデータを減らし、精度を向上させつつ、多くの企業が持つ膨大な量の人事データから得られる重要なメリットを提供します。

人事モジュールは、従業員のスケジュール管理、採用、報酬管理などのタスクを自動化します。社内のワークフローを横断して簡単にコラボレーションできる人事モジュールは、CRMデータと連携して、手作業よりもはるかに簡単かつ正確に営業担当者のボーナスを決定することができます。

9 プロジェクト管理

このモジュールは、スケジュール、予算、リソースを追跡するために役立つ共有の可視化ツールでプロジェクト管理を強化します。例えば、複数の予想プロジェクトを1つのビューで確認できるため、リソースの配分(再配分)を容易に行うことができます。役割、スキル、場所などの検索フィルターを使用することで、適切なプロジェクト・チームを編成することができます。また、ビジネス全体のコストを把握する方法を標準化することで、より良い予算管理を行うことができます。また、高度なプロジェクト管理ツールは、顧客からの請求書やプロジェクトの請求書を自動化することで、キャッシュフローの最大化にも役立ちます。

予想通り、建設業や製造業などのプロジェクト集約型の業界では、プロジェクト管理モジュールの利用が一般的です。プロジェクト管理モジュールを適切に導入することで、プロジェクトの期限内完了の増加、コストの監視と管理、サービスベースの見積もりとコストの精度の向上、スタッフと機器の使用の最適化などが可能になります。

10. ERP分析

ERP分析モジュールは、財務、調達、プロジェクト管理のプロフェッショナルによる、収益性を高め、運転資本の利用を改善し、事業支出を管理する要素の把握を支援します。

ERP分析により、収益性に関する総勘定元帳のインサイトが得られ、回収プロセスが加速され、キャッシュ・フローが改善します。また、財務担当者がベンダーへの支払い期限内および期限切れ金額を追跡し、支払いの緊急性を判断できるようにすることで、買掛金を強化します。このモジュールは、コスト削減と財務リスクを特定することで、会社の支出を管理します。例えば、財務チームは、従来の手作業によるプロセスよりも正確に従業員の経費を監視することができ、不正を素早く特定し、経費ポリシーの遵守を確認することができます。

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適切なモジュールの選択

ERPモジュール購入の指針となる唯一のベストプラクティスは、組織の要件に最も適したものを選択することです。ERPに関しては、1つのサイズではすべてに対応できません。

標準のERPモジュールとは当然ながら、ベンダーによって回答は様々です。中核的な財務機能は必ずパッケージに含まれ、一方、営業や人事などの機能は別売りされることがあります。ERPモジュールの価格は様々ですが、一般的にオンプレミスのERPベンダーは、ユーザーごとにライセンスを提供しますサービスとしてのソフトウェア(SaaS)ベンダーは、通常、月単位または年単位で料金を請求します。

ERPプロバイダーが業種に応じて製品を提供することもあります。例えば、製造業のパッケージにはサプライチェーン・モジュールが含まれるでしょうし、小売業のパッケージには通常、eコマースが含まれるでしょう。サービスよりも製品を中心に販売するビジネスでは、サプライチェーンや受注管理などの機能を備えたモジュールが必要です。サービス業であれば、より良いカスタマー・サポートを提供するために、プロフェッショナル・サービス・モジュールを追加することもできます。このページで紹介している10のモジュールは、あくまでもスタート地点です。少なくとも今すぐには、これらすべてのモモジュールは必要ではないと考えられますが、最高水準のERPシステムでは、現在必要な機能から始めて、競争優位性を維持するためにモジュールを追加することができます。また、業界だけでなく、組織の課題や機会に適応できるシステムも必要になってくるでしょう。

ERPモジュールに関するFAQ

必須のERPモジュールはるのでしょうか
特にはありませんが、財務管理モジュールはあらゆるERPシステムの中核をなしています。モジュールは、企業の要件や業界を反映させる必要がありますが、財務管理、資金管理、貸借対照表、調達など、必要不可欠な要素にも対応する必要がありますこれらのモジュールは、ERPシステムとしては必須に近いものです。パワー・トレインがない自動車を買うことはないでしょうし、同様に、企業の成長を促す財務データを提供できないERPシステムを買うこともないでしょう。

ERPシステムの基本モジュールとは
財務管理は基幹モジュールで、調達、サプライチェーン、企業パフォーマンス管理などといった密接に関連するモジュールと組み合わせて使用します。セールス(CRM)、人事、分析など、より専門的なソフトウェアで基本モジュールを拡張できます。

ERPモジュール選定のポイントとは
組織の要件を満たすモジュールを選択するだけでなく、一度にすべてを稼働するのが理にかなっているのか、優先順位に従って段階的に進めるのかについても考えたいところです。もうひとつのポイントは、柔軟性と拡張性を備えたERPシステムで始めることで、時間の経過とともにビジネスが変化し、変革できるようにすることです。

Oracle Cloud ERPは、企業が新しいビジネス・モデルとプロセスを迅速に導入するためのアジリティを提供し、コスト削減、予測精度の向上、およびイノベーションの加速などを支援します。その様子を実際にご覧ください。