企業の財務管理における課題トップ14

Natalie Gagliordi | コンテンツ・ストラテジスト | 2023年11月27日

優れた財務リーダーは、戦略的意思決定、リスク評価、財務管理の各分野で卓越した能力を発揮し、組織の財務戦略を導きながら、財政の健全性を守り、成長の機会を追求します。最高財務責任者(CFO)が財務管理の基盤を確立し、適切な財務・経営予測やデータを提供することは、経営幹部が行う戦略的な議論や重要な意思決定に大きく影響します。CFOとそのチームは、効果的な財務管理を阻む最重要課題に注意を払い、ハードルを乗り越えるための戦略を準備しておく必要があります。

主なポイント

  • 効果的な財務計画には、正確でタイムリーなデータ分析とシナリオ・プランニングが必要です。これをサポートするのが、リアルタイムの業績監視と予測更新を行う財務管理システムです。
  • 財務リーダーは、IT部門と協力して、ソフトウェアの定期的なアップデートや包括的なスタッフ研修など、強力なサイバーセキュリティ対策を実施する必要があります。
  • タイムリーな意思決定には、リアルタイムの財務データへのアクセスが不可欠です。そのためには、時代遅れのソフトウェアや手作業プロセスによる制限を排除し、最新のデータを提供できる財務管理システムが必要となります。
  • 短期的な財務債務を満たすためには、キャッシュ・フローの効率的な監視が不可欠があり、流動性要因の可視化と、効率的な売掛/買掛金管理のためのプロセスが必要となります。

財務管理における14の大きな課題

財務管理は、ビジネス戦略とその実行の基盤となるものであり、組織の財務活動の戦略立案、指揮、監督、レポーティング、予測に焦点を当てたビジネス機能です。財務管理は、企業の財務的安定性、成長、長期的な持続可能性を確保するために極めて重要です。しかし、事業が成長するにつれて、財務管理はより困難で複雑なものとなり、適切な意思決定に必要な正しい情報を得ることができなくなる可能性があります。ここでは、CFOやその他の財務リーダーが直面する財務管理上の課題のよくある原因をご紹介します。

1. 精密な計画

正確でタイムリーな財務計画を立て、それに基づいて実行・管理することは、ビジネスの健全性を保つ上で最も重要な要素のひとつです。しかし、計画立案には、さまざまな情報源からの多くの財務情報が必要であるため、正確かつタイムリーなデータを容易に収集できるツールやプロセスが整備されていないと、非常に時間がかかります。さらに、計画プロセスでは、適切なデータ分析を行い、将来のさまざまなシナリオを予測し、それに応じた計画を立てる必要があります。そうでなければ、来るべき課題に対して企業を備えることができません。こうした状況は、誤った優先事項に対する過剰支出、資本や人材の非効率的な配分、将来の財務ニーズの予測能力の欠如といった問題につながるおそれがあります。その結果、ビジネスチャンスが見過ごされ、財務目標が達成されず、財務リスクが増大する可能性があります。また、事前に堅実なシナリオ・プランニングを行うだけでは十分ではありません。財務チームには、リアルタイムで業績を監視し、最小限の作業で頻繁に予測を更新できる財務管理システムが必要です。そうでなければ、作成したシナリオを迅速に実行できません。

2. サイバーセキュリティの脅威

過去10年間で、セキュリティの脅威や侵害が急速に増加し、財務データが格好の標的となりました。かつてはIT部門の責任と考えられていたサイバー・セキュリティは、現在では財務部門やその他のビジネス・リーダーとの緊密な連携が必要な重要なビジネス上の優先事項となっています。組織の最も重要な情報に対して強力なサイバー・セキュリティ対策を実施することは不可欠です。この点において、財務リーダーの役目は、IT部門と協力して財務取引とシステムの安全性を確認することです。財務部門とIT部門が協力することで、ハッカーやランサムウェアの標的となりやすい最も貴重な情報やシステムを特定することができます。すべての財務ソフトウェアとシステムは、定期的にアップデートする必要があります。これらのアップデートには、最新のセキュリティ脆弱性に対する防御策が含まれているからです。財務データへのアクセスを必要なスタッフのみに制限することもベストプラクティスの1つです。クラウドベースのシステムは、ネイティブのセキュリティ機能、定期的な自動アップデート、強力なアクセス制御を提供するため、これらすべての点において有用です。さらに、サイバー・セキュリティ戦略を成功させるには、包括的なスタッフ・トレーニングが不可欠です。

3. リアルタイム・データ

財務データの収集は、時間のかかる作業です。従来、四半期ごとの売上予測など、財務レポートの作成には1か月以上かかることもありました。経営状況の変化に応じてリーダーが最新情報を必要とする場合、財務チームが夜遅くまで会社に残り企業全体からデータを収集しなければならないこともありました。最終的な目的は、意思決定者がタイムリーなインサイトを得ることですが、そのためにはリアルタイムのデータを取得する必要があります。しかし、ほとんどの古いソフトウェアシステムは、リアルタイムのデータを提供することができません。そのため、多くの財務チームは、いまだにスプレッドシートや時代遅れのシステムから手作業で財務情報を引き出しており、長い照合作業を余儀なくされています。正確な計画と包括的な分析にはタイムリーな財務データが不可欠であるため、最新のデータにできるだけ早くアクセスできることは極めて重要です。プロアクティブな財務管理戦略には、リアルタイムのデータを利用できる財務管理システムが不可欠です。これにより、リーダーは組織の真の財務健全性と営業実績に基づいて意思決定を行うことができます。

4. キャッシュ・フローの監視

キャッシュ・フローを監視することは、企業が給与、サプライヤー、ローン、賃料の支払いなど、短期的な財務債務を満たすのに十分な流動資産を確保していることを確認するのに役立ちます。キャッシュ・フロー管理における最大の課題のひとつは、流動性要因の透明性です。このような透明性がなければ、将来の手元資金を予測することができず、必要な資金を確保することができません。グローバルな事業展開による複数のキャッシュ・フロー、顧客からの支払いの遅れ、売上やコストの季節変動、ローンの支払い時期や条件、収益認識や費用経過勘定との不整合なども、キャッシュ・フローの問題につながります。キャッシュ・フローを改善するには、効率的な売掛・買掛プロセスが必要です。また、調達・購買データの透明性を高めてより良い意思決定を行うことも重要です。

5. 負債の管理

企業が抱える負債の額や種類は、買収、拡大、設備投資などの戦略的意思決定に影響を与えます。過剰な負債は、管理しきれないほどの利払いや財務上の不安を招く恐れがありますが、成長戦略への投資や利益の最大化のためは、賢い借入も不可欠です。CFOの最も重要な責務のひとつは、事業の財務的安定性を損なうことなく、責任を持って負担できる負債額を決定することです。企業は、負債の管理において、金利の変動、負債のレポーティングや返済、リスク許容度、市場の状況や競争など、あらゆる要素を考慮する必要があります。企業は、負債の見直しと優先順位付け、資産の管理、ローンの一本化、ローン条件の定期的な見直し、支払いが危うくなる可能性があるかどうかを知るための強力なキャッシュフロー監視を行うことで、負債ポジションを最適化することができます。

6. 税務コンプライアンス

税務上の規制やコンプライアンスを常に把握しておくことは、並大抵のことではありません。特に、グローバル企業であればなおさらです。税務ルールや会計基準が大きく異なる複数の国でコンプライアンスを確保することは、財務リーダーにプレッシャーを与え、複雑性を強いています。もしコンプライアンス違反となれば、罰金や法的問題に発展する可能性もあります。幸いなことに、現在ではより自動化されたシステムが利用可能になり、企業が税務コンプライアンスを維持するために必要なスタッフの時間や経費を減らすことができるようになりました。さまざまな会計・税務ルールや基準を一元的に管理するシステムを利用することで、作業負荷や複雑さを軽減できます。また、データ収集やレポーティングなどの特定のプロセスを自動化することで、エラーを減らし、効率を向上させることができます。

7. 運用の複雑さ

大規模な製品ポートフォリオと、数千から数万人の従業員を抱える大規模なグローバル企業では、運用が複雑化することは珍しくありません。財務責任者は、財務プロセスやシステムが既存の複雑性を解消できず、むしろ助長している場合、より大きな課題に直面することになります。多国籍企業にとって、さまざまな地域にまたがって財務業務を管理し、多様な規制環境を巧みに乗り切ることは、もちろん容易ではありません。しかし、財務リーダーは、適切な主要業績評価指標(KPI)を特定し、それらのKPIに対し適切かつ信頼性の高い財務データを提供し、一貫した測定方法を使用し、最新のダッシュボードを提供することによって、組織の簡素化を支援することができます。これによって、事業部門のリーダーはビジネスの現状を理解しやすくなります。

8. プロセスの最適化

財務における運用の複雑性は、多くの場合、手作業によるデータ入力や標準化の欠如など、非効率的または非効果的なプロセスに起因している可能性があります。これらのプロセスは、企業の財務レポートや分析を遅らせます。その結果、企業は、財務業績の改善に役立つインサイトが得られない場合があります。財務リーダーは、最適化と自動化に注力することで、より効率的な財務機能を構築することができます。プロジェクト管理プロトコルを導入することで、ワークフローをボトルネックなく反復し、柔軟に拡張することができます。AIが組み込まれた自動化ソフトウェアは、データ入力、レポート作成、勘定照合、請求書処理などの反復的な手作業を自動化し、作業を迅速化することで、ビジネスのアジリティを高めます。

9. ビジネス・インサイトの欠如

いかなる企業においても、正確で適切な最新のビジネス・インサイトにアクセスできなければ、データに基づいた意思決定を行い、不確実性に備え、戦略的ガイダンスを提供することはできません。実用的なインサイトの欠如は、意思決定、戦略的計画、予測、およびその他の重要な財務上の要件に悪影響を及ぼします。たとえば、企業がプランBの適切な実行時期を見極めるためのインサイトを得られなければ、いくら優れたシナリオ・プランニングを行っても役に立ちません。財務リーダーは、データを分析し、文脈化することで、どこに資本を配分すれば最高のリターンが得られるか、いつ製品が急騰・急落するかといった高度なインサイトを企業に提供することができます。このようなインサイトはすべてビジネスの戦略的優先事項の達成に役立てることができます。

10. 手作業

手作業による財務プロセスは、非効率的で、ミスが発生しやすく、多くの時間を消費するため、詳細な分析や戦略的思考に充てる時間がほどんど得られないことがよくあります。財務チームは、請求書の照合など、自動化できる業務に忙殺され、財務目標の達成を支援する業務に集中できないことがよくあります。時間がかかる手作業のプロセスは、財務状況に対処するための貴重な時間を奪い、チームのアジリティを低下させます。また、手作業では、ビジネスニーズや市場環境、規制要件の変化に対応しにくいという問題もあります。自動化機能を備えた財務管理ソフトウェアは、繰り返しの手作業を減らし、作業の正確性を高めます。これにより、従業員は成長を促進し、会社の成功に貢献する業務に専念することができます。

11. コラボレーションの欠如

財務戦略を全体的な事業目標と整合させ、意思決定に役立つ適切なデータを事業部門のリーダーに提供するためには、財務部門と他部門のコラボレーションが極めて重要です。このようなコラボレーションが欠如していると、財務リーダーは、事業部門のニーズを十分に理解しないまま、設備投資、借入、資金管理、その他の予算に関する意思決定を行ってしまう危険性があります。人事などの他部門や、事業部門のリーダーとの緊密なコラボレーションにより、両チームの意思決定を改善し、戦略的計画を支援し、財務上の意思決定を包括的な組織目標と一致させることができます。このためにまず必要なのは、信頼性の高いデータを共有し、財務部門や他部門のリーダーが、正確かつ共通のデータにいつでもアクセスできるようにすることです。

12. つながりのないシステム

ビジネス・システム間の統合が進んでいないのは、多くの場合、旧式の財務ソフトウェア、複数の記録システム、不適切な技術インフラなどが原因です。基幹システムが効率的にデータを伝達・共有できない場合、作業は手作業になりがちで、インサイトの精度や適時性も低下します。たとえば、複数の記録システムを使っている場合、財務連結時にスタッフに多大な負担を強いることになります。このような理由から、財務チームは、異なるビジネス機能間で情報を共有できる統合システムを提唱すべきです。ただし、このような統合を常に最新かつ効果的に維持することは、特にオンプレミスやクラウドで稼働する多数のシステムを接続する場合には課題となることがあります。とはいえ、統合された財務システムには、それだけの価値があります。統合された財務システムは、正確性を高め、手作業によるデータ入力や検索を最小限に抑え、リアルタイムのインサイトを可能にし、財務チームが組織の成功を促進する戦略的な取り組みに集中できるようにします。

13. 予算の厳守

予算編成は戦略的計画の一環であり、組織の優先事項のロードマップとして機能し、リソース配分と進捗状況の監視方法の概要を示すものです。しかし、支出傾向に関する十分な情報が得られず、正確性に疑問のあるデータに基づいて予算が組まれると、予算編成プロセスに不具合が生じる可能性があります。また、確定した予算を遵守するには、実際のキャッシュ・フローと支出を可能な限り可視化する必要があります。このような可視性を確保することで、経営陣は支出超過、収益不足、需要の急増などを察知することができます。不適切な予算編成プロセスは、支出超過、非効率的なリソース配分、将来の資金需要の予測困難などにつながる可能性があります。その結果、財務目標が達成できず、財務リスクが高まる可能性があります。しかし、予算編成ソフトウェアの使用、関連データソースの統合、高度な分析の活用により、リアルタイムの予算追跡と可視化が可能になり、予算編成プロセスの正確性と応答性を向上させることができます。

14. 支出管理とコスト管理

支出の監視と管理は財務管理の重要な側面であり、企業が経費を理解し、管理するのに役立ちます。しかし、最適なプロセスを実現するのは容易なことではありません。CFOは、コスト管理戦略が均衡を保ち、業績への支障を回避すると同時に、運営に必要な十分な資金を確保する必要があるからです。これを行うには、戦略的な計画を立て、正確なデータを常に監視する必要があります。財務リーダーは、明確な経費ポリシーと、関連するすべての統合システムからデータを引き出すインテリジェントな監視メカニズムを導入する必要があります。

オラクルのクラウドベースのFP&Aで課題を容易に管理

財務管理の課題に備えるために、企業は、強力な財務管理戦略を確立し、ビジネス環境の変化に合わせて進化できる適応性の高いソフトウェアを活用する必要があります。財務計画と分析(FP&A)の手法は、正確な予測と適切なリソース配分を可能にすることで、組織がビジネス機会を特定し、市場の混乱に的確に対応することを支援します。プランニング、予算編成、シナリオ・モデリング、業績報告などのツールを備えたFP&Aシステムは、会計の枠をはるかに超えた機能を提供します。Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)の一部である Oracle Fusion Cloud Financialsは、買掛金、売掛金、固定資産、経費、レポーティングなど、主要な財務管理プロセスを接続し、自動化することで、財務状況を明確に把握できるようにします。オラクルは、財務および業務指標をビジネス・インサイトとつなぎ合わせることで、FP&Aにおけるデータドリブンなアプローチを促進します。これにより、財務部門は、計画立案、予算編成、キャッシュ・フロー予測などの機能を通じて、ビジネスの成功を積極的に支援することができます。

財務管理の課題に関するよくある質問

財務における最大の課題とは何ですか?
財務における最大の課題のひとつは、成長と収益性のバランスをとることです。そのためには、リスク評価、効果的な投資、支出のコントロール、組織全体のチームとの効果的な連携などが必要となります。

財務における課題の原因とは何ですか?
多数の財務記録システム、時代遅れのシステムやプロセス、データの透明性の欠如などが原因で正確かつリアルタイムの情報が得られないことが、財務上の課題の根源である場合が多くあります。

財務管理上の課題は、どのようにすれば克服できますか?
財務管理上の多くの課題を解決するためには、信頼性が高く、正確かつタイムリーな財務データを提供できる単一ソースを確保する必要があります。

利益と成長を促進するためのCFO向けガイド

成長を妨げることなく、コスト削減と生産性向上を実現する5つの戦略をご紹介します。