Joseph Tsidulko |コンテンツ・ストラテジスト| 2023年4月12日
ビジネスの急速な変革がどのようなものかを確認したいのであれば、お近くの食料品店を覗いてみてください。
新型コロナウイルスのロックダウンが始まると、大小さまざまな店舗は食料品のオンラインショッピングという新しい常識に適応せざるを得なくなり、顧客はeコマース、カーブサイド・ピックアップ、宅配の便利さと手軽さに慣れていきました。オンラインへのシフトは、実店舗でのショッピング独自の利点を強調し、拡大することで、人々を呼び戻そうとする実店舗の変化に拍車をかけています。
高インフレと、グローバル・サプライチェーンの混乱による商品不足の現在、大手スーパーマーケット・チェーンだけでなく、近隣の独立系市場も、バックオフィスからフロントレジに至るまで、業務を最適化するために先進テクノロジーを導入しつつあります。これらのシステムにはAIが組み込まれているものもあり、在庫補充の精度を向上、顧客サービスをパーソナライズ、チェックアウトのプロセスをスピードアップ、管理コストや無駄を省くことにより価格の引き下げを可能にします。
主なポイント
食料品の買い物におけるエクスペリエンスは、誰もが覚えている限りほぼ同様なものでした。購入者は、最新で最高のテクノロジーや斬新なエクスペリエンスを求めて市場に足を運んでいるわけではありませんでした。
少なくとも、パンデミックが業界を覆すまではそうではありませんでした。2年以上にわたるロックダウンは、業界のeコマースを飛躍的に発展させ、地元の店舗で得られるものに対する消費者の期待を高めました。
オンライン・ショッピングはいたるところで見られるようになりました。しかし、新型コロナウイルスが発生するまでは、ほとんどの人はまだ家から出て、買い物カートを押して食料品を購入していました。
パンデミックとそれに伴う数々のロックダウンにより、食料品の買い物のデジタル領域への移行が一気に進みました。消費者はモバイル・アプリケーションやWebサイトで食料品を自宅まで宅配したり、店外のカーブサイド・ピックアップができるように注文するようになりました。
オラクルが2020年に実施した食料品小売に関する調査では、米国では回答者の53%がパンデミック時に食料品をオンラインで購入したと答え、そのうち37%が店舗よりも頻繁に購入したと回答しました。それらの人々の大半が、そうしたエクスペリエンスを気に入り、今後も継続すると答えており、93%が、パンデミックの収束後も、食料品の少なくとも一部についてはオンラインショッピングを継続する見込みだと回答しています。
食料品のオンライン・ショッピングの手軽さを見出したことを喜ぶ人は多いものの、それで実店舗での買い物が不要になったということではありません。2022年にオラクルが実施した小売トレンドに関する消費者調査では、回答者の約10人に7人が、今でも実店舗での買い物を好むと答えています。
地元の市場の通路を歩き回り、デリカテッセンのカウンターにある商品を見て回り、サラダバーをチェックし、肉屋からおすすめを聞き、そのついでに薬局で処方箋を受け取ったり、ATMで現金を引き出したりといった楽しみ方があります。
Accentureが行った2021年の食料品消費者調査によると、回答者の半数以上が、食料品の買い物をオンラインと店舗の両方で行う予定であることが明らかになりました。パンデミック後の世界では、あらゆる規模の食料品店が、こうしたオムニチャネル・オプションを提供することが賢明でしょう。オンラインでの製品やサービスの提供は、従来のeコマース(Webブラウザー上で行うもの)とモバイル・アプリケーションの両者で行われる必要があります。一部のスーパーマーケット・チェーンはソーシャルメディア企業と提携し、購入者による新しいブランドの発見、食事の計画、興味のあるアイテムのチェック、料理のインスピレーションの共有などを支援しています。
購入者の大半は、食料品店が自分たちの好みや嗜好に合わせた個別のオファーやディスカウント、プログラムを提供することを高く評価しています。これは、食料品小売業者にとって、ブランド・ロイヤルティを構築し、カスタマー・エクスペリエンスを向上させるための重要な戦略となっています。
購入者の行動を調査したオラクルの2022年の調査 (PDF)では、回答者の3分の2が、食料品店が以前購入したアイテムのディスカウントやオファーを提供してくれることを望んでいると答えました。また3分の1近くが、今後自分が購入したいと思う可能性のあるアイテムを、食料品店が予測することを望んでいます。特にミレニアル世代はこのような関係を好んでおり、この年齢層の回答者の38%が、よりカスタマイズされたエクスペリエンスを求め、お気に入りの食料品店に自分たちのことをもっと知ってほしいと回答しました。
Accentureが食料品消費者を対象に行った調査によると、回答者の約30%が、購入時にロイヤルティ・ポイントや割引特典を提供する食品小売業者を常に好むことがわかりました。また、そのような基準で食料品店を選ぶことがたまにある、あるいは頻繁にある人を含めると、その割合はほぼ90%に達しました。
車で遠くの食料品店まで行き、欲しい商品をあまり見つけられず、レジの行列で長時間待たされることを望む人などいません。そのため、消費者が店舗でもオンラインでも、ショッピング・エクスペリエンスを形成する上で最も重要な要素として利便性を挙げる消費者が圧倒的に多いことはそれほど驚くようなことではありません。
Accentureの食料品消費者調査の回答者のうち90%以上が、食料品の購入先を検討する際に、商品の品揃え、自宅からの近さ、可能な限り迅速かつ簡単に買い物ができることを重視すると答えました。eコマースでは、利便性の優先順位は明白であり、主な問題は、商品の代替を最小限に抑えることと、配達枠を十分に確保することです。
業界はそこに注目しています。スーパーマーケットは、サービスのスピードアップ、商品の探しやすさ、顧客のより迅速な店舗への出入りを実現するテクノロジーへの投資を検討しています。食品注文用のタッチスクリーンや自動宝くじ売り場など、セルフサービスのキオスクは、購入者が混雑した市場で欲しいものを素早く入手することを容易にします。セルフレジやモバイルレジは行列を緩和します。電子決済方法は、レジでの滞在時間を短縮します。
食料品店は多くの地域社会における社交の拠点であり、近所の人と顔を合わせたり、地元の起業家が生産する小規模企業の製品を試したり、署名活動をしたり、地域団体を支援したりする場所となっています。それは、実店舗にしか果たせない役割です。
Accentureの食料品消費者調査では、回答者の85%が食料品店が地域社会を支援し、貢献することを望んでいることが報告されています。それは、地域のフード・バンクへの寄付、チャリティーのための募金、近隣地域への貢献、青少年スポーツ・チームのスポンサー、ガール・スカウトがクッキーを販売するための店舗を構えることなどが挙げられます。
人々は、自分たちがひいきにしている企業が、自分たちの核となる価値観を支持してくれることを望んでいます。そして多くの人にとって、それは倫理的かつサステナブルに生産および管理された製品を販売することも意味します。
Accentureの調査で、あらゆる年齢層の購入者がスーパーマーケットによるサステナブルな環境への取り組みを重視していることがわかりました。回答者の約4分の3が、自分たちにとってのサステナビリティの重要性をよりよく理解している食料品小売業者に乗り換えたいと答えています。
サステナビリティは人によって異なる意味を持ちます。回答者の中には、食品廃棄を減らすことを最優先にしている人もいいれば、包装に使われるプラスチックの削減を求める人もいます。また、輸送距離を減らし、その分の二酸化炭素排出量を削減するために、地元で製品を調達する人もいます。
食料品店はこの課題に取り組みつつあります。現在、その多くがサステナブルな製品の詰め替えを提供するとともに、リサイクル、たい肥化、廃棄物管理サービスを実施し、グリーンエネルギーで店舗の電源をまかなうことにより、サプライヤーに環境に配慮した健全な慣行を徹底させ、業界としてサステナビリティのメトリックを標準化することを目指しています。
食料品の購入者は常に、整然と積み上げられた棚、広い通路、よく磨かれた床、全体的に清潔な店舗を好みます。パンデミックの間に生じた変化は、清潔さが安全性と結びついたことです。
新型コロナウイルスの最盛期には、多くの購入者は、定期的に店内を拭き掃除し、顧客間にソーシャル・ディスタンス用のスペースを設け、タッチレス・ハンド・サニタイザー・ディスペンサーやカートのクリーニング・ワイパーを提供していることがわかる店でなければ、安心して入ることができませんでした。そうした考え方がすぐに薄れることはないでしょう。
食料品店は、インフレの急増により買い物客が日用品に支払う金額をより意識するようになる以前から、すでに激しい価格競争に取り組んでいました。大半の顧客は、食料品店に節約への協力を求めており、この利益率の低い業界でそれを実現するためには、食料品店が一部自動化による管理コストやその他コストの削減を行うことが必要です。
購入者は、定番の食料品だけでなく、新しいアイテムを試すために店に出かけることが増えています。職人手作りのパンやチーズ、オーガニックの農産物、エキゾチックな種類の肉や魚介類、ミールキット、さらには調理済み食品(ロティサリーチキンのようなもの)など、さまざまな小規模生産者のアイテムを求めています。
多種多様な新鮮な商品を常に在庫して提供することは容易ではないものの、非常に重要なことです。オラクルの2022年の調査によると、食料品の買い物における消費者の不満の主な原因は在庫不足です。同調査の回答者の40%以上が、品揃えと種類の豊富さが食料品店への愛着を高めると答え、37%が在庫の豊富さを素晴らしいショッピング・エクスペリエンスと結びつけていると答えています。
オンライン・ショッピングはドライで人間味に欠けることがあるかもしれませんが、態度の悪い店員を相手にすることと比べれば悪いものではありません。オラクルが2022年に実施した消費者調査では、回答者の40%近くが、カスタマー・エクスペリエンスが良くなければ別の食料品店で買い物をすると答えています。
笑顔と知識豊富なサポートがあれば、食料品店への買い物は素晴らしいエクスペリエンスになりうる一方で、無礼な従業員がいれば、小売ブランド全体に対する顧客の印象が悪化しかねません。
テクノロジーは、新型コロナウイルスのパンデミックから独特な影響を受けている小売業界における従来古風なセクターである食料品店による急速に進化する顧客の要求への対応を可能にしています。
ロックダウンとソーシャル・ディスタンスを受けて、消費者の多くはパンデミックの間にオンライン食料品商取引の利点を見出しながらも、実店舗の棚にはより多くの種類の新鮮な商品が並び、常に在庫があることを期待しています。注文の過不足による供給不足や無駄のループを回避しさえすれば、これは食料品店にとってビジネス・チャンスです。クラウドベースのサプライチェーンと在庫管理システムは、こうした高コストな失敗を防ぐことができます。
今日の購入者、特に若い世代の購入者は、食料品店が顧客とより緊密で永続的な関係を築けるよう、パーソナライズされたロイヤルティ・プログラムも好んで利用しています。しかし、そのようなプログラムを展開するには、大勢の顧客を登録し、彼らの購買パターンをモニターし、特定のオファーを提示することが必要です。高度なデータ分析を組み込んで購買パターンをよりよく追跡および評価する業界ソリューションは、現在の小売環境においてブランド・ロイヤルティを構築する新たな機会をもたらします。
オラクルは、消費者の期待の変化を市場シェアと利益の拡大につなげたいと考えており、食料品小売業者にこれらのテクノロジー・ソリューションを提供しています。Oracle Retailの業界特化型アプリケーション・スイートは、食料品店の需要予測、サプライチェーンと在庫の管理、マーケティングのパーソナライズ、プライベート・ブランド商品の管理、実店舗とオンライン店舗のレイアウトの最適化、そして、それらのよりサステナブルな方法による実行を支援します。
顧客が食料品店に求めるものとは
顧客は、食料品店がオンラインと実店舗の両方で便利なショッピング・エクスペリエンスを提供し、欲しい商品を在庫として備え、同時に様々な新しいアイテムを紹介してくれることを求めています。
食料品店の顧客にとって、購入時に最も重要な要素とは
最終的には、価格と商品の入手可能性が購入行動の原動力になります。しかし、便利で安全なエクスペリエンスや、サステナビリティといった基本的価値観に合う場所でなければ、顧客は店に足を運ぶことすらない可能性があります。
食料品店が顧客満足を確保する方法
食料品店は、店舗に様々な商品を品揃えし、顧客が欲しいものを見つけたり、新たなアイテムを見つける手助けをするフレンドリーなスタッフを配置し、駐車場からレジまで安全で便利なエクスペリエンスを提供することで、顧客に満足感をもたらすことができます。
食料品店の顧客にロイヤルティ・プログラムを提供するメリットとは
今日の食料品店の顧客は、自分たちのニーズが満たされることを望んでいます。ロイヤリティ・プログラムで収集されたデータは、食料品店が顧客に提供する商品やサービスをパーソナライズし、顧客とのより強い関係を構築する上で役立ち、リピートの可能性を高めます。
カスタマー・エクスペリエンスを向上させるための食料品店によるテクノロジーの活用方法
eコマース・プラットフォームは、食料品の購入者が簡単かつ便利に、さまざまな商品を注文し、受け取ることができるようにしています。モバイル・アプリケーションは、ショッピング・リストの保存、デジタル・クーポンの提供、ロイヤルティ・プログラムとの統合などにより、オンラインおよび店舗での顧客エクスペリエンスを向上させます。実店舗では、セルフサービスのキオスク端末や電子決済とチェックアウトのオプションが、買い物のプロセスをスピードアップしています。その裏では、在庫管理ツールが、顧客が求める商品が在庫として確保されるようサポートします。
食料品店が売上を伸ばすために活用できる戦略とは
食料品店は、eコマースと店舗チャネルに、顧客が望む商品を競争力のある価格で確実に揃え、同時に顧客に様々な新しいアイテムを紹介することで、売上を伸ばすことができます。また、顧客が欲しいものを見つけやすくし、無駄な時間や手間をかけずにオンライン・ショップや実店舗に出入りできるようなテクノロジーに投資することでも、売上を伸ばすことが可能です。
Oracle Retailの食料品ソリューションが効率的なショッピング・エクスペリエンスを実現する方法をご覧ください。