サステナビリティとはその仕組みと重要性

Amber Biela-Weyenberg|コンテンツ・ストラテジスト| 2023年6月14日

ビジネスや個人的な決断が地球や社会にもたらす影響への認識が高まるにつれ、サステナビリティの問題に対する関心が一般化しつつあります。そうした影響には、化石燃料の燃焼に起因する危険な気象パターンや気温の上昇、汚染、生物多様性の喪失、森林伐採、その他の環境問題が含まれます。また近年では、サステナビリティは、貧困、賃金の不公平、人権侵害、人種的多様性の欠如といった経済的および社会的な問題をも包含するようになりました。

サステナビリティとは

一般的にサステナビリティとは、特定の割合や水準を維持する能力を指します。ビジネスの文脈では、損害を与えることなく収益性を維持または向上させることです。つい最近まで、サステナビリティについての話題は、気候変動を遅らせたり、地球の天然資源を何世代にもわたって保護したりすることばかりが取り上げられていました。しかし、その概念は、より良い生活水準と公平性の達成を含む、経済的、社会的、およびコーポレート・ガバナンスの問題を含むように発展してきました。法律や企業の方針は、より環境に優しく、より公平な生活や働き方を促進するために変わりつつあります。

主なポイント

  • サステナビリティには、環境、経済、社会という3つの柱があります。
  • 雇用者、ベンダー、政策立案者がサステナビリティに真剣に取り組み、その進捗状況について透明性を確保することを求める人は、かつてないほどに増加しています。また、そうした取り組みに基づいて、働く場所や買い物をする場所の優先度を設定する人もいます。
  • 企業が環境、経済、社会に与える影響の全容を把握し、企業のリーダー、従業員、顧客がより十分な情報に基づいた意思決定を行えるようにするためには、サプライチェーンの透明性が必要です。

サステナビリティについての説明

1987年、国連は最初にサステナブルな開発を「将来世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすこと」と定義しました。こうした動きにより、意思決定や行動が環境や社会に及ぼす波及効果を数年先まで考慮することが必要とされます。

環境への影響を削減するために政府と組織が講じている措置には、太陽光発電や風力発電など、より効率的で再生可能なエネルギー源の使用、プラスチックなど再生不可能な資源のリサイクル、水やその他の天然資源の保全、あらゆる形態の廃棄物の削減、二酸化炭素排出量を削減するための出張の抑制やリモート・ワークの機会の提供、サステナブルな取り組みに基づく他企業との関係についての優先度設定などがあります。

その他の対策としては、良好な労働条件の提供、男女間の賃金格差の是正、労働者を公正に扱う企業からのみの原材料調達、透明性の高い事業運営などが挙げられます。

ビジネスにおいてサステナビリティが重要な理由

サステナビリティは、従業員や顧客にとっての重要事項であり、さまざまな形で収益に影響するため、企業にとって極めて重要な問題です。McKinseyとNielsenIQが2月に発表した調査によると、環境、社会、ガバナンス(ESG)のベストプラクティスを遵守していると表明している企業の米国における製品の売上は、過去5年間で平均28%増加したのに対し、そのような主張をしていない企業の売上の伸びはわずか20%でした。

このような世間の価値観の変化により、雇用主を再考する労働者も出てきています。2021年のPwCの調査では、86%の従業員が自分と同じ問題に関心を持つ企業で働きたいと考えていることがわかりました。また、IBMのInstitute for Business Valueが2022年に実施した調査によると、求職者の67%が環境的にサステナブルだと考える企業への応募をより強く希望している一方で、現在の雇用主がそのようなカテゴリに該当する企業だと考えている従業員はわずか21%にとどまっています。

さらに、最近のEdelmanの調査によると、投資家はサステナビリティを採用している企業の方が長期的な収益が向上する可能性が高いと考えています。その理由のひとつは、サステナブルな事業の取り組みが、エネルギー、廃棄物、出張、原材料、その他のコストを削減することにあります。ESGの導入は、一部の国では規制要件にもなりつつあります。例えば、欧州連合(EU)は企業にESGの実践状況の開示を義務付けており、米国証券取引委員会は、上場企業に対し、その事業が排出する炭素が気候にどのような影響を与えるかを投資家に報告するよう義務付けることを検討しています。

サステナビリティの仕組み

サステナビリティは、政府や組織が将来の世代に起こることを考慮しながら、現在の意思決定を行うことを必要とします。すなわち、以下の3つの分野で企業や消費者の行動様式を大きく変えなければ、生活水準や労働水準は長期的に低下するという考え方です。

サステナビリティの3つの柱

サステナビリティの鍵は、短期的な利益だけに焦点を当てるのではなく、政策やビジネスの取り組みが環境、経済、社会の3つの柱に与える影響を考慮することです。ビジネスの文脈では、サステナビリティの概念は企業の社会的責任とも呼ばれ、組織が意思決定を行う際に、人々、地球、利益に対するより優れた持続的な影響について考えます。

サステナビリティの3つの柱とは、環境、経済、社会です。

1. 環境

環境保全はサステナビリティにとって極めて重要です。あらゆる規模の組織は、まずオフィスや施設を評価することから始めることができます。環境に配慮するための比較的簡単な方法としては、コンピュータのハードウェアや紙、その他の事務用品をリサイクルする、リサイクル品や環境に優しい備品を購入する、エネルギー使用を最小限に抑えるために;LED照明を使用する、不要な出張を控える、相乗りした社員に報酬を与えるといったことが挙げられます。

また、企業は商品の生産方法を見直すことで、環境にプラスの影響を与えることができます。Deloitteによると、世界全体で2022年、67%の企業がリサイクル素材と、甚大な汚染物質の放出がない素材を使用していると回答しています。製品の包装を減らすことには、数点のメリットがあります。埋立地の廃棄物を減らし、完成品の総重量を減らすことで輸送時の燃料消費を削減することができます。

環境サステナビリティを向上させるその他の方法としては、電気トラクターやコンパクト・ローダーなど気候変動に配慮した機械の使用、ソーラーパネルや風力タービンなどのグリーン・テクノロジーの導入、気候変動による影響についての従業員トレーニングなどがあります。最も生産的なアプローチは、全社的な活動が環境に与える影響を測定し、その影響を削減するためのステップを示し、具体的な目標を設定し、進捗状況をレポートする包括的なサステナビリティ計画を策定することです。

2. 経済

経済のサステナビリティとは、環境や社会全体への悪影響を最小限に抑えながら、経済成長を促進する取り組みを指します。

経済的なサステナビリティの取り組みは、エネルギー使用量や廃棄物、その他のコストの削減により企業に利益をもたらし、環境や社会的なサステナビリティの実践が最優先事項である顧客や従業員を惹きつける上で役立ち、石油や石炭などの有限な天然資源への依存を低減します。

例えば、工場では太陽エネルギーによる電力の使用を開始することができます。このコスト削減は、初期インストール・コストを回収した後にビジネスに利益をもたらすだけでなく、温室効果ガスの排出を削減することで環境にも貢献します。世界経済フォーラムによれば、クリーン・エネルギーへの移行により、2030年までに世界で1,030万人の雇用が創出されると推定されています。

3. 社会

社会的なサステナビリティには、ビジネス上の意思決定が従業員、顧客、サプライヤー、地域社会、そしてより広範な人々に及ぼす影響を考慮することが含まれます。こうした取り組みには、男女間の賃金格差の是正、公平な雇用・昇進慣行の約束、職場の利用しやすさと安全性の向上、従業員の健全なワークライフ・バランスの促進、慈善活動やボランティア活動への貢献などが含まれます。

社会的なサステナビリティを重視する企業は、サプライチェーン全体を通じて、企業が従業員に与えている待遇についても詳細に調査します。例えば、労働力の搾取を防ぎ、社会正義の問題へのコミットメントを示す信頼できる企業からのみ原料および商品を調達しています。

ビジネスにおけるサステナビリティの課題

ESGのベストプラクティスが、企業ブランドの向上、新規顧客や従業員の獲得、既存顧客の維持、そして最終的な収益性と時価総額の向上に貢献し、ビジネス上有益であることに議論の余地はありません。Savanta ResearchとCIO AdvisorのPamela Ruckerが2022年に実施したグローバル調査では、回答者の93%が、サステナビリティと社会的な課題はかつてないほど重要になっていると回答しています。課題としては、ビジネス・リーダーが他の無数の優先事項に追われていること、株主から短期的な利益重視のプレッシャーを受けていること、目標の設定と進捗を測定するための信頼できるデータ とESGメトリックをレポートするための自動化されたプロセスが欠如していることなどが挙げられています。

データ面では、何千もの商品を仕入れ、それぞれのメーカーに問い合わせをする可能性のあるスーパーマーケット・チェーンの例を考えてみましょう。特定のコーヒー・ブランドが扱う豆は、サステナブルな農法で栽培されているのでしょうか。農産物を収穫する労働者には生活賃金が支払われているのでしょうか。工場労働者やトラック運転手についてはいかがでしょうか。また、そうした工場やトラックのエネルギー効率は高いのでしょうか。このような質問に回答するには、サプライチェーン・パートナーがすぐには提供できなかったり、共有に消極的だったりするような多くのデータを収集する必要があります。サプライチェーンの透明性は容易には得られないことがあります。

重要な疑問の答えとなるような重要なメトリックを掘り下げるのではなく、表面的なレベルでしかデータを収集しないため、企業は自社の進捗状況を評価することが困難であると感じることがあります。例えば、HR.comとHR Research Instituteが2022年に実施した調査によると、ダイバーシティ、エクイティ、およびインクルージョン(DE&I)のメトリックを高水準または非常に高水準で評価する組織は、人事担当者のわずか20%にすぎません。その結果、雇用主のDE&イニシアチブが効果的に機能していると答えたのはわずか9%です。

ビジネスにおけるサステナビリティのメリット

サステナビリティは流行ではありません。Accentureの調査によると、トップ企業の最高経営責任者の99%が、サステナビリティは企業の長期的な成功に不可欠であると考えています。その理由は、それは顧客、従業員、投資家、規制当局にとって重要であり、最終的には財務の健全性にとっても重要だからです。

金融サービス業界を見てみましょう。Morgan StanleyのInstitute for Sustainable Investingが2021年に発表したレポートでは、調査対象となった米国の個人投資家800人のうち79%(ミレニアル世代の回答者の99%)が、社会的意識の高い企業への投資を重要視していると回答しています。規制当局が融資ポートフォリオのESGリスクを審査するよう求めているため、銀行も注目しています。

企業もまた、サステナブルに生産された商品やサービスをより高い価格で提供することで、利益を得ることができます。IBM Institute for Business Valueが2021年に実施した調査では、消費者の半数が、サステナブルまたは社会的責任を果たしていると見なされる製品にプレミアムを支払う意思があると回答しました。

このような義務感は、働く場所の選択にも及びます。Savantaが2022年に実施した調査では、業種を問わず従業員の3分の2以上が、サステナビリティを重視する企業への転職を検討すると回答しました。雇用主にとって、優秀な労働者を惹きつけ、維持できることは競争上の優位性であり、採用や研修のコストの大幅な削減をもたらします。資材の再利用や航空便の削減、施設の冷暖房や製品の効率的な輸送など、創意工夫を凝らすこともコスト削減につながります。

サステナビリティへの投資は、企業の評判を向上させ、共通の目的を通じて顧客や従業員と有意義な関係を構築することにもつながります。しかし、組織はサステナビリティへの取り組みを広報上の利益のために「グリーンウォッシュ」、つまり虚偽の説明をしないように注意しなければなりません。その結果、評判を落とすことになりかねません。

サステナブルなビジネス戦略の構築

サステナブルなビジネス戦略を策定する際、企業は以下のステップを踏む必要があります。

  1. 最初のサステナビリティ評価の策定
    環境的、社会的、経済的なサステナビリティの3つの柱の視点から、サステナブルな取り組みを評価します。例えば、メーカーは不要な廃棄物を削減し、工場や輸送手段のエネルギー効率を改善する方法を検討する必要があります。あらゆる種類の企業は、従業員の賃金と公正な待遇を確保しながら、自社とサプライヤーやパートナーの労働条件を評価することが必要とされます。すべての組織のリーダーは、透明性の高い事業運営、ダイバーシティとインクルージョンの推進、サステナビリティに真剣に取り組むベンダーとの関係強化を選択することができます。
  2. 目標と主要業績評価指標(KPI)の決定
    進捗状況を示す適切なKPIを選択します。例えば、ある企業が1年以内にエネルギー消費量の10%削減を望んでいる場合があります。その企業はまず、ベンチマーク・レベルを特定するために、全社的なエネルギー使用量を追跡する必要があります。次に、エネルギー消費量を四半期ごとに2.5%削減するなどの中間目標を設定することが必要です。四半期ごとにデータを評価することで、事業が順調に進んでいるかどうかを把握することができます。
    あるメーカーが、5年以内に10の製品部門で100%リサイクル包装を使用したいと考えている場合、6カ月ごとに1つの製品部門の包装を切り替えることに注力し、その目標を達成することが、5年後の目標達成に向けた軌道に乗っているという指標になると考えることができます。3年以内にサステナブルな農場で生産された農産物のみを使用するように切り替えたいと考えているレストラン・チェーンは、現在のベンダーに代わる12社の新しい農産物サプライヤーの確保が必要になる可能性があります。3か月ごとに新しいサステナブルなサプライヤーを追加することを、KPIとすることもできます。
  3. 計画の実行、測定、適応
    計画を実行に移し、進捗を測定し、必要に応じて戦略を変更します。取り組みを頻繁に評価することで、成功が明らかになり、どの分野にさらに注意を払う必要があるかがわかります。頻度はKPIによって異なります。エネルギー効率の向上を目指す企業は、最低でも四半期ごとにエネルギー使用量を見直しますが、使用量が予想通り減少しているかを毎月確認することもあります。
    サステナブルなビジネス戦略を見直し、修正することは、最大の効果を上げるために極めて重要です。物事は急速に変化することがあります。あるレストラン・チェーンが突然、12社ではなく20社のベンダーを入れ替えなければならなくなったとします。そうなると、KPIの更新や目標の変更を望む可能性があります。一方、チェーンが当初の計画よりも早く目標を達成した場合、環境や社会への影響をさらに向上させる新たな目標を設定することも考えられます。

ビジネスにおけるサステナビリティの例

アパレル、食品、その他の商品を販売する多国籍小売企業Woolworths South Africaは、2007年に、倫理的に調達された素材やリサイクルまたは削減された梱包材を含む、測定可能なサステナビリティ属性を持つ商品のみを販売することを目標に掲げました。Woolworthsは、水の使用量、倫理的な調達、サステナブルな農業慣行などのデータをベンダーから収集し、サプライチェーン全体の生産方式を調査しました。現在では約10,000製品SKUのサステナビリティ・メトリクスを追跡しています。

ドイツ銀行は、エネルギー消費量を50%以上削減し、その過程でコストを低減することを目的の一環として、データベースの最新バージョンへの移行に取り組みました。その他の例としては、サステナブルな農業を実践する食品生産者、製品や事業の二酸化炭素排出量を削減する製造業者、従業員の公平な待遇を確保するあらゆる種類の企業などが挙げられます。

企業もまた、結束しています。Coca-Cola Europacific Partnersとビール醸造会社のLionは、非営利団体Container Exchange Servicesを設立し、オーストラリアの飲料企業を結集して、協調的なリサイクル活動を通じてプラスチック汚染削減の国家目標達成に貢献しています。

ビジネスにおけるサステナビリティの将来

ビジネスにおけるサステナビリティとは、従業員や顧客が、製品、運営、サプライチェーンに関する入手しやすいデータを活用し、より十分な情報に基づく意思決定を行えるようにすることです。これには、企業がWebサイトやマーケティング、広告、製品ラベルでサステナビリティに関連する情報を提供することも含まれます。

戦略と価格設定のコンサルタント会社であるSimon-Kucherの2021年のレポートによると、世界全体で85%の消費者が、よりサステナブルな選択肢を求めて過去5年間で購買習慣を変えたと回答しています。しかし、消費者もまた、企業が取り組みを強化することを期待しています。調査によると、人々はESGの進展が見られないことに不満を抱いており、一部の政府は気候関連の影響に関する情報開示の義務付けをはじめとする介入を行っています。

顧客は適切な質問をしています。問題は、多くの企業がそのすべての回答を持ち合わせていないということです。サプライチェーンの透明性が高まれば、自社の意思決定が環境や社会に与える影響がプラスなのかマイナスなのかを明確に把握し、従業員や顧客に示すことができます。

オラクルによるビジネスへのサステナビリティの導入

オラクルは、ビジネスのサステナビリティ向上を支援するために、単独でも連携しても利用できるさまざまなクラウド・サービスを提供しています。たとえば、Oracle Fusion Cloud Supply Chain Managementには、お客様とそのサプライヤーのエネルギー消費の特定と削減を支援する機能が組み込まれています。Oracle Fusion Cloud Enterprise Performance Managementでは、組織全体のESGデータを取得し、計画の策定や進捗状況の可視化に役立てることができます。オラクルはまた、ビジネス・リーダーがよりサステナブルな意思決定を行えるよう、Oracle Fusion AnalyticsにESG機能を追加しています。また、小売、自動車、その他の分野で、サステナビリティに直接対応する業界固有のクラウド・ソリューションを開発しました。これらのサービスはすべて、再生可能エネルギーで稼動するクラウド・リージョンを持つOracle Cloud Infrastructure上で実行され、品揃え計画やサプライヤ評価全体にわたってサステナビリティを運用するOracle Retailのもとで、提供されます。

サステナビリティに関するFAQ

サステナビリティの意味
サステナビリティは、特定の水準や割合を維持することを意味します。例えば、伐採された本数と同数の木を植えることで森林破壊を防止したり、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用するといったことです。

サステナビリティの3つの柱とは
サステナビリティは、行動が環境に与える影響だけでなく、経済や社会に与える影響も含みます。

サステナビリティが企業にとって重要な理由
企業にサステナビリティへの真摯な取り組みを求める人が増加するにつれて、そのような人々がどのような企業で働き、どのような企業から購入するか、ひいては各企業の収益や評判に影響を与えることになります。

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