PHPおよびOracleコレクションを使用した、1回のデータベース・コールによる複数行の挿入
著者 Mikhail Seliverstov
Oracleコレクションを使用して、複数行を挿入するPHPスクリプトの効率を上げる方法
2006年2月公開
PHP Web開発者にとって、1つのスクリプトの実行中に、データの複数の行を1つまたは複数のデータベース表に挿入するスクリプトの作成が必要なことは多々あります。 たとえば、顧客のショッピング・カートからすべての品目をデータベースの適切な表に挿入するために、スクリプトでカート内のすべての品目に対してINSERT文を実行しなければならない場合があります。 挿入するデータの量によっては、この操作がアプリケーションの動作を遅くし、ユーザー・エクスペリエンスを低下させるボトルネックとなる可能性があります。
このOracle+PHP Cookbookレシピでは、Oracleのストアド・プロシージャおよびコレクションと、PHPのOCI8拡張を使用して、複数挿入スクリプトの効率を上げる方法を学びます。
従来のアプローチ
Customers、Orders、Items、およびOrder_Itemsの各Oracle表に依存する、仮想の電子商取引アプリケーションを考えてみましょう。 Customers表には顧客のリストが、Items表には在庫が、Orders表には各顧客の注文の詳細情報が、Order_Items表には注文ごとの品目リストが含まれています。 詳細については、次のERDを参照してください。
次に、上記の表を作成するSQLスクリプトを示します。
CREATE TABLE CUSTOMERS (
CUSTOMER_ID NUMBER NOT NULL,
CUSTOMER_NAME VARCHAR2 (100) NOT NULL,
CONSTRAINT PK_CUSTOMERS
PRIMARY KEY ( CUSTOMER_ID ) ) ;
/
CREATE TABLE ITEMS (
ITEM_ID NUMBER NOT NULL,
ITEM_DESCRIPTION VARCHAR2 (50) NOT NULL,
ITEM_PRICE NUMBER NOT NULL,
CONSTRAINT PK_ITEMS
PRIMARY KEY ( ITEM_ID ) ) ;
/
CREATE TABLE ORDERS (
ORDER_ID NUMBER NOT NULL,
ORDER_DATE DATE NOT NULL,
CUSTOMER_ID NUMBER,
CONSTRAINT PK_ORDERS
PRIMARY KEY ( ORDER_ID ) ) ;
ALTER TABLE ORDERS ADD CONSTRAINT FK_CUSTOMER
FOREIGN KEY (CUSTOMER_ID)
REFERENCES CUSTOMERS (CUSTOMER_ID) ;
/
CREATE TABLE ORDER_ITEMS (
ORDER_LINE_ID NUMBER NOT NULL,
ORDER_ID NUMBER NOT NULL,
ITEM_ID NUMBER NOT NULL,
CONSTRAINT PK_ORDER_ITEMS
PRIMARY KEY ( ORDER_LINE_ID ) ) ;
ALTER TABLE ORDER_ITEMS ADD CONSTRAINT FK_ITEM
FOREIGN KEY (ITEM_ID)
REFERENCES ITEMS (ITEM_ID) ;
ALTER TABLE ORDER_ITEMS ADD CONSTRAINT FK_ORDER
FOREIGN KEY (ORDER_ID)
REFERENCES ORDERS (ORDER_ID) ;
/
さらに、次に示すように、行がOrder_Items表に挿入されるたびに一意の主キーを簡単に採番するシーケンスを作成します。
CREATE SEQUENCE ORDER_LINE_SQ
INCREMENT BY 1;
/
ご覧のとおり、顧客が注文を確定するたびに、注文の詳細情報をOrders表に挿入し、ショッピング・カート内のすべての品目に対する行をOrder_Items表に挿入しなければなりません。 一般的に、このような複数挿入の操作は、
INSERT文をループで実行することにより処理されます。
<?php
$db = oci_connect('SCOTT','TIGER') or die;
//let's assume that the Items table contains 15 items referenced by the ids from 1 to 15 and
//the customer has purchased every item
$arr_order_items = array(1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15);
//for simplicity the code that populates the Orders table is omitted
$order_id = 1; //order id from the Orders table
foreach ($arr_order_items as $item)
{
$sql = "INSERT INTO ORDER_ITEMS (order_line_id,order_id,item_id)
VALUES (ORDER_LINE_SQ.nextval,".$order_id.",".$item.")";
$stmt = oci_parse($db,$sql);
oci_execute($stmt);
}
このアプローチは、複数の挿入を処理する方法としてはまったく問題ありませんが(挿入データの整合性を確実にする方法として、トランザクションの開始が有効である場合を除く)、それぞれのSQL文がOCI8ラッパーを介して実行されるため、データベースとWebサーバー間で通信が何度も繰り返される必要があり、コンピューティング・リソースの点から見るとコストが膨大になる可能性があります。 より適切なアプローチは、データベースを1回コールして、Oracleがすべての挿入を内部で処理することです。 では、Oracleコレクションを使用した処理方法を見てみましょう。
Oracleコレクション
コレクションとは、PHPで使用される配列と同じ方法で、Oracle Databaseで使用できるPL/SQL構造です。 Oracle Databaseでは、3種類のコレクションをサポートします。 索引付き表、ネストした表、およびVARRAYです。
索引付き表はOracleコレクションのもっとも基本的なタイプであり、PL/SQL表とも呼ばれます。 索引付き表には上限がなく、PL/SQL内にのみ存在することができ、データベースには存在できません。 新しい要素は、コレクション内にまだ存在していないキーに値を割り当てることで追加することができます。
ネストした表は索引付き表と似ていますが、データベース表内に、たとえば表内の列として存在できる点が異なります。
最後に、VARRAYはOracleコレクションの3番目のタイプです。 ネストした表と同様に、VARRAYはPL/SQLとデータベースの両方に存在することができますが、作成時に上限の指定が必要となります。 索引付きおよびネストした表とは異なり、VARRAYは要素の索引を保存し、削除は許可されません。 ここでは、コレクション内のデータを操作する(つまり、コレクションの作成後に要素を追加、削除、または移動する)必要がないため、VARRAYを使用します。
コレクションとプロシージャを作成します。データベースにすべての作業を処理させるためには、次の2つのことをする必要があります。 表およびプロシージャで参照できるように、コレクション・タイプを定義します。さらにコレクションのコンテンツを読み取り、そのデータをOrder_Items表に挿入するプロシージャを作成します。
Oracleでコレクション・タイプを定義する方法を示します。
CREATE OR REPLACE TYPE v_arr AS VARRAY(100) OF NUMBER;
このコードでは、最大100の数値要素を保持できるタイプv_arrを定義しています。 定義後、このタイプは同じスキーマ(またはパッケージ内で定義した場合はパッケージ)内のあらゆるプロシージャまたは表で利用することができます。
次のステップでは、プロシージャを作成します。
CREATE OR REPLACE PROCEDURE update_order(order_id IN NUMBER,arr_items IN v_arr) IS
BEGIN
FOR i IN 1 .. arr_items.count LOOP
INSERT INTO ORDER_ITEMS (order_line_id,order_id,item_id) VALUES
(ORDER_LINE_SQ.nextval,order_id,arr_items(i));
END LOOP;
END;
/
ご覧のとおり、上記のプロシージャには2つのパラメータが必要です。 同じ注文内のすべての品目で共有されるorder idと、タイプv_arrのコレクションarr_itmesです。 このコレクションは該当する注文内のすべての品目のIDのリストを保持します。 プロシージャの実行時は、コレクションの内容を単にループし、コレクションの最後に達するまで各要素に対して挿入文を実行します。
PHPからプロシージャを実行します。最後に、上記のプロシージャをコールして実行するようにPHPコードを変更する必要があります。 別の顧客が新しい注文をorder id = 2で作成したと仮定します。
$order_id = 2; //order id from the Orders table
次の文は新しいOCI8コレクション・オブジェクトを割り当てます。
$collection = oci_new_collection($db,"V_ARR");
この
$dbは現在開かれている接続ハンドルを指し、
V_ARRはコレクションの名前付きデータ型(必ず大文字)です。 oci_new_collection関数には3番目のオプション
schemaパラメータもありますが、これはコレクションが宣言されたスキーマが、コレクションのデフォルトのスキーマとは異なる場合に使用する必要があります。 デフォルトでは、oci_new_collectionはスキーマの値として現在のユーザーの名前を使用します。
コレクション・オブジェクトを作成した後、値を移入する必要があります。
foreach ($arr_order_items as $item)
{
$collection->append($item);
}
次の行は、プロシージャの実行を準備しています。
$stmt = oci_parse($db,"BEGIN UPDATE_ORDER(:order_id,:arr_items); END;");
次に、PHP変数をOracleのプレースホルダにバインドします。
oci_bind_by_name($stmt,':order_id',$order_id);
oci_bind_by_name($stmt,':arr_items',$collection,-1,OCI8_B_NTY);
OCI8コレクション・オブジェクトをプロシージャのarr_itemsパラメータにバインドする2行目に注意してください。 ここでの-1は、ドライバに変数の現在の長さを最大長として使用するように指示します。 OCI8_B_NTY定数は、名前付きデータタイプを使用していることを示します (PHPバージョン4.xまたはそれ以前を使用している場合、代わりにOCI8_B_SQLT_NTYを使用する必要があります)。
最後に、oci_execute関数をコールしてステートメントを実行します。
oci_execute($stmt);
プロシージャが実行されると、15の新しい行がOrder_Items表に挿入されたことがわかるはずです。
OCI8では、Oracleコレクションを操作するさまざまな有用な関数が提供されることに注意してください。 たとえば、assignElem関数は、コレクション内の特定の要素に値を割り当てるのに使用することができます。getElemはコレクション内の要素の現在の値を返します。maxは要素の最大数を返し、sizeはコレクション内の要素の現在の数を返します。 最後に、trim関数はコレクションの最後から特定の数の要素を取り除くのに使用することができ、free関数はコレクション・オブジェクトに関連するリソースを解放します。 コレクション関数の完全なリストはPHPマニュアルを参照してください。
PHP 5.1.2を使用している場合、OCI8の新しい関数oci_bind_array_by_nameを使用することによって、コレクション・オブジェクトを作成せずに、上記の機能を実装することができます (ただし、執筆時点では、この関数はドキュメント化されていないので、自己責任で使用してください)。 次に、oci_bind_array_by_nameを使用する場合のコードを示します。
$stmt = oci_parse($db,"BEGIN UPDATE_ORDER(:order_id,:arr_items); END;");
oci_bind_by_name($stmt,':order_id',$order_id);
oci_bind_array_by_name($stmt,':arr_items',$arr_order_items,15,15,SQLT_NUM);
oci_execute($stmt);
このSQLT_NUMは、数値要素の配列を使用していることを示します。
結論
このレシピで説明している手法は、複数の
INSERT文を実行する必要のあるPHPスクリプトの効率を上げる簡単な方法を提供しています。 もちろん、比較的小さなデータ・セットの場合、この記事で示した2つの手法の違いは、あったとしても最小限でしょう。 次に、両方のスクリプトをそれぞれ連続して10回実行することにより取得された実際のベンチマーク結果を示します。
試行回数
|
スクリプトA(従来)、秒
|
スクリプトB(コレクション使用)、秒
|
1
|
0.0639
|
0.0419
|
2
|
0.0635
|
0.0420
|
3
|
0.0637
|
0.0377
|
4
|
0.0638
|
0.0418
|
5
|
0.0635
|
0.0417
|
6
|
0.0643
|
0.0382
|
7
|
0.0636
|
0.0378
|
8
|
0.0634
|
0.0378
|
9
|
0.0638
|
0.0415
|
10
|
0.0640
|
0.0381
|
ご覧のとおり、コレクションを使用した方がわずかにパフォーマンスがよい結果になっています。 ただし、挿入するレコード数とパフォーマンスとの間の依存関係は比例ではありません。したがって、比較的大きなデータ・セットを操作するときに、この手法がより有用であることが証明されるでしょう。
最後に、本番環境でこの手法を採用することを検討している場合、トランザクションを使用することを強く推奨します。 大量の挿入をさらに高速にする場合には、バルク・バインドの使用を検討してください。
Mikhail Seliverstovは開発部門のWebプログラミング・チーム・リーダーで、モントリオールのMcGill大学のAlumni Relationsです。 過去3年間、主席アプリケーション・アーキテクトおよび開発者として、大規模なOracle+PHP開発プロジェクトを支援してきました。
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