「JP1」と「Oracle Enterprise Manager」の連携が加速。システム/データベースの運用管理がますますラクに、効率的に!

日立製作所の「JP1」と日本オラクルの「Oracle Enterprise Manager」は、いずれも "運用管理ツール"に分類される製品だが、Oracle Databaseを中心とするオラクル製品が稼働するミッション・クリティカルなシステム環境では、両者を連携させてこそ双方の利用価値が高まる。その具 体的な手法を確立すべく、日立製作所と日本オラクルは共同で技術実証を行ってきた。実証作業にあたった両社のエンジニアらに、具体的な連携構成や、 JP1/Oracle EM連携のメリットを聞いた。(編集部)
 
■JP1/Oracle EMは組み合わせて使ってこそ価値がある
 
 企業システムの高度化/複雑化が進む昨今、それに伴ってシステムの運用管理も複雑化している。対象となるシステムが年々増え続け る一方で、性能や可用性に関して高いレベルを保ちつつ、サービス品質を維持/向上していかなければならない。もちろん、ある程度の規模のシステムを抱える 企業なら、統合運用管理ツールを使って一元管理を行う一方で、システムの核となるデータベースについては専用の管理ツールを駆使していることだろう。
 
 その両者を密に連携させれば、企業システムの運用管理はもっとラクに、効率的になるのではないか?――統合運用管理ツールの定番 とも言える「JP1」を擁する日立製作所と、Oracle Databaseの運用管理ツール「Oracle Enterprise Manager(以下、EM)」を提供する日本オラクルはそう考えた。そこで両社はタッグを組み、日本オラクルが運営するOracle GRID Centerにおいて、JP1とOracle EMの連携パターンを検証。先ごろ、そのノウハウを公開した。
 
 この検証作業をオラクル側で主導した日本オラクル テクノロジー製品事業統括本部 データベースビジネス推進本部の橋野薫氏(アライアンスビジネス推進部 担当シニアマネジャー)は、今回の共同検証の意義を次のように説明する。
 
 「システム管理者/データベース管理者の中には、JP1とOracle EMを真っ向から競合する製品だと誤解している方が少なくない。しかし、両製品は利用目的も、利用者も異なる。JP1とOracle EMは連携が可能であり、それによってそれぞれの能力/メリットを最大限に引き出すことができるのだ。具体的には、JP1でシステム全体を一元的に監視し つつ、データベース管理に関してはOracle EMを使うことで、システム管理者はデータベースに起きた問題を即座に知り、その対処をデータベース管理者に速やかに委ねられるようになる。ミッション・ クリティカルなシステムにおいて、この連携から生まれる恩恵は計り知れないものとなるだろう」
 
 Oracle EMはもちろん、Oracle Databaseとの親和性が高く、さまざまなメトリック(稼働情報)を基にデータベースの稼働状態を広く、深く見ることができる。また、性能分析や自動 チューニングのためのOracle Diagnostics Pack、Oracle Tuning Packといったオプションも豊富に用意されている。ハードウェアも含めたシステム全体の状態を総合的に管理するJP1とは棲み分けが可能であり、むしろ 組み合わせて使うべきツールなのである。

毛受氏"
日立製作所 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部 第1 JP1設計部の主任技師、毛受正夫氏
 実際、日立製作所 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部でJP1の技術担当を務める毛受正夫氏(システム管理ソフトウェア本部 第1 JP1設計部 主任技師)も、「JP1ユーザーの多くはOracle Databaseを運用しており、JP1による統合運用管理の対象にしている。一般には、Oracle Databaseが出力するログをトラップしたり、SNMPトラップを用いたりしているが、Oracle EMと連携させれば、もっと効率的な運用管理が可能になる」と、JP1とOracle EMを連携させるメリットを強調する。
 
■Oracle DatabaseのイベントをJP1/IMに自動登録
 
 今回、日立製作所と日本オラクルが共同検証したのは、JP1の中核となる統合コンソール製品「JP1/Integrated Manager(以下、JP1/IM)」とOracle EMの連携に関してである。
 
 JP1/IMは、ローカル・ホスト内でイベント・サービス機能を提供する「JP1/Base」、イベントをフィルタリング/集約 /管理する「JP1/IM-Manager」、そしてコンソールとなる「JP1/IM-View」の3階層構成により、異種システムの混在環境をビジュア ルに一元監視することを可能にする製品だ。
 
 このJP1/IMでOracle Databaseのイベントを取得する方法としては、ログ・ファイル・トラップ、API呼び出し、コマンド実行の3とおりがあるが、JP1/IMとEMと の連携には3つ目のコマンド実行(Oracle EMからのJP1コマンドの実行)を用いる。この方法によってOracle Databaseからイベントを収集するためのシステム構成とEM側の設定について簡単に説明しよう。
 
 両社で検証を行ったシステム構成は次のとおりだ。Oracle DatabaseとともにOracle EMの管理エージェントが動作するローカル・ホスト、Oracle EMの管理サービスとJP1/Baseが動作するEMサーバ、そしてJP1/IM-ManagerとJP1/Baseを搭載したイベント管理サーバから成 る(EMサーバとイベント管理サーバは同居させることも可能)。この構成の利点は、「Oracle Database側にエージェントのJP1/Baseをインストールする必要がない点」(毛受氏)である。
 

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今回検証されたJP1/IMとOracle EMの連携構成
 
 Oracle EM側の設定作業としては、まずOracle EMが特定のアラートを検知した際にJP1/IMにイベントを自動的に登録するためのシェル・スクリプトを作成し、それをOracle EMの「通知メソッド/OSコマンド」の1つとして登録する。
 
 次に、監視したいメトリックと、そのしきい値を決める。そして、そのしきい値を超えた際にアラートが発せられると、登録した通知 メソッドを自動実行する「通知ルール」を設定する。これにより、Oracle Databaseのイベントが自動的にJP1/IM側に集約され、他のシステムのイベントとともにJP1/IMコンソールで監視できるようになるわけだ (詳しい連携設定の手順とシェル・スクリプトのサンプルはOracle Technology Networkで公開されているので、ぜひ参考にされたい)。
 
Oracle GRID Centerダウンロード資料「JP1 Oracle Enterprise Manager通知連携設定手順書
・・・JP1/Oracle EMの連携手順について詳しく解説しています
 
■システム管理とDB管理の垣根をなくす
 
 JP1/IMコンソールに一覧表示された個々のイベントは、それぞれをダブルクリックすると、「イベント属性」、「メッセー ジ」、「ガイド」の3項目から成る詳細メッセージを確認できる。このうち、最後のガイドは、イベントの種類や社内の運用管理ルールに応じて、その一部を管 理者自身がHTML形式で自由に記述することが可能だ。
 

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ガイドには、管理者が独自に通知内容を記述することができる
 
 このガイドの用途について、毛受氏は次のようにアドバイスする。
 
 「例えば、ガイド内にOracle EMへのリンクを入れることで、JP1/IMコンソールからEMコンソールにドリルダウンして状態を確認するといったことが可能になる。一方、システムの 規模が大きく、担当者ごとに運用管理領域が細分化されているようなケースなら、ガイド部分に担当のデータベース管理者名を記述しておくといった使い方もで きる」

橋野氏"
日本オラクルテクノロジー製品事業統括本部 データベースビジネス推進本部 アライアンスビジネス推進部 担当シニアマネジャーの橋野薫氏
 このように、JP1/IMとOracle EMの連携は、システム管理とデータベース管理の垣根をなくし、運用管理プロセスを明確化するのにも役立つ。この連携のデータベース管理者にとってのメリットを、橋野氏は次のように強調する。
 
 「JP1/IMとOracle EMを連携させれば、システム管理者からOracle Database側の問題に関して連絡を受けたデータベース管理者は、Oracle EMの機能を使って即座に問題の分析と対処が行える。問い合わせの内容が性能に関することであれば、SQLチューニング・アドバイザ機能を使って性能劣化 の原因となっているSQLを特定し、アドバイザの指示に従ってチューニングを施すといった具合だ」
 
 このように、JP1/IMとOracle EMを連携させることで、システム監視から問題解決への管理者をまたいだ作業連携がスムーズにできるようになり、問題解決のスピードも増すのである。


 
■今後も拡大するJP1とOracle製品の連携
 
 日立製作所と日本オラクルは今回の検証作業の中で、JP1/IMとOracle EMの連携だけにとどまらず、Oracle ExadataへのJP1の適用についても共同で検証している。DWHによく利用されるExadataの特性を踏まえて、JP1のジョブ管理製品である 「JP1/Automatic Job Management System 3」と、ネットワーク管理製品「JP1/Cm2」をExadataに適用。その結果をリファレンス・アーキテクチャとしてドキュメント化し、パートナー各 社への提供を始めた。
 
 
 両社は今後も、JP1とオラクル製品の連携を深めていく考えだ。毛受氏は、「例えば、JP1/IMとOracle EMの連携に関して言えば、Oracle EMからJP1/IMに登録したイベントのステータスがわかるようにし、それによってインシデント管理ができるようにしていきたい」と今後の抱負を語る。 統合運用管理ツールとして国内で最大級のユーザー数を抱えるJP1とOracle EMを連携させることは、多くの企業のシステム管理者/データベース管理者にメリットをもたらす。さらなる連携の深化に向け、両社による取り組みは今後も 続く。その成果は随時、本サイトで紹介する予定だ。