Oracle Application Expressで実現する
「プライベートクラウド」の効率的な運用とは?
アプリケーション開発を刷新するテクノロジーが次々に登場している。オラクル・コーポレーションのソフトウェア開発部門 バイスプレジデント マイケル・ヒチワとプロダクトマネージャであるデービット・ピークに、「Oracle SQL Developer」や「Oracle Application Express(APEX)」、そして「Database Smart Flash Cache」を利用した、これからのオラクルアプリケーション開発のスタイルについて聞いた。(編集部)
《マイケル・ヒチワ》シリーズをお見逃しなく!
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■アプリケーションの高速化をもたらす「賢いキャッシュ」
デービット・ピーク(左)とマイケル・ヒチワ(右) |
Oracle Database 11g R2に備わる各種キャッシュ機能の中でも、革新的とも言えるものが「Database Smart Flash Cache(以下、DSFC)」だ。このDSFCがなぜ革新的か、ソフトウェア開発部門 バイスプレジデント マイケル・ヒチワは次のように説明する。「DSFCは、フラッシュストレージを利用してOracleデータベースのSGAを拡張する新しいキャッシュ機能 です。もちろん、フラッシュストレージには通常のSGAの置き場所となるメモリほどのスピードはありませんが、ディスクドライブに比べればケタ違いのアク セススピードを提供します。2割3割といったレベルの性能改善ではなく、2倍3倍というケタ違いの性能向上を実現します」。
「フラッシュストレージと聞くと、『ストレージ製品に搭載されているフラッシュベースのキャッシュとはどう違うのか?』と思われる方もいるで しょう。しかしDSFCがストレージ製品のフラッシュキャッシュやSSD(半導体ディスク)と大きく異なる点は、それが『本当に必要なデータだけを選んで キャッシュできる』という点です。例えば、あるテーブルを全検索するような場合、ストレージ製品のキャッシュではすべてのデータを見境なくキャッシュして しまいます。一方、DSFCはデータベースレイヤで動作するキャッシュであるメリットを活かして、テーブルのインデックスなど頻繁にアクセスされるデータ を優先してキャッシュします。つまり、より『スマートな(賢い)』アルゴリズムでキャッシュすることで、高価なフラッシュストレージの能力を最大限に引き 出せます」。
「またDSFCを利用することで、ストレージのフラッシュキャッシュやSSDの活用方法についてアプリケーション開発者が試行錯誤したり、ア プリケーションの設計を変更したりする必要がなくなります。オラクルがDSFCの開発に投じた莫大な投資のアドバンテージを最大限に活かし、現在のアプリ ケーションに一切手を加えることなく大きな効果が得られます」。
■GUIでSQL開発ができる「Oracle SQL Developer」
一方、アプリケーション開発者にとっては、開発ツール「Oracle SQL Developer」の進化も見逃せないポイントだ。
「ご存知のとおり、現在ではOracleデータベース開発者の大半がOracle SQL Developerを使用しています。世界中で最もダウンロードされているオラクルのソフトウェアです。そして、Oracle SQL Developerは、Oracle Databaseのユーザーに無償で提供されています。Oracle SQL DeveloperはEclipseに似た開発ツールであり、EclipseによるJava開発と同じようなコード補完機能やシンタックスハイライト機能 などのGUIを活用したSQL開発が可能です。例えば自分では設計していない既存のデータベース・インスタンスを扱うような場合でも、GUI画面上に分か りやすく表示されたテーブルやスキーマの構成を見ながらの作業が可能です」。
「近年ではOracle SQLが提供する機能の数も増加し続けており、すべてのSQL構文を覚えることは困難になりつつあります。しかしOracle SQL Developerならば、テーブルのデータを圧縮したり、カラムを追加したり、パーティションを作成したりと、すべての作業のSQL文をGUI上で簡単 に組み立てられるので、SQL構文をすべて覚えておく必要はありません。また将来的には、基本的なデータベース管理機能もOracle SQL Developerに段階的にサポートされていく予定です」。
最新のOracle SQL Developer 3.0 EA1 はOTNよりダウンロードが可能
■Oracle Application Expressが実現する「プライベートクラウド」の世界
インタビューの最後では、WebブラウザベースのRAD(Rapid Application Development)ツールである「Oracle Application Express(以下、APEX)」について、同製品のプロダクトマネージャを務めるデービット・ピークに話を聞いた。まず、APEXとはどのような用途 を想定して提供される製品なのだろうか。
「多くの企業のITシステムは、専任のIT部門によって開発・運用されています。しかし、同じITチームが『部門レベルの小規模なアプリケー ション』の面倒を見ることには限界があります。そのため、これまでの部門レベルのアプリケーションの多くは、企業のIT部門とは個別に管理された小さい サーバーなどで、マイクロソフトのAccessやExcelなどを利用して開発・運用されてきました。しかしそうしたケースではデータのバックアップもお ざなりであったり、十分なハードウェアリソースが得られなかったりといった状況に陥りがちでした。しかしこれらの部門レベルのアプリケーションも、企業の ビジネスのスムーズな活動を支える上では、基幹のITシステムと変わらないくらいに重要なのです」。
「APEXは、そうした小規模なITシステムをすばやく簡単に開発するためのツールです。APEXのアプリケーションはOracleデータ ベース上で動作するため、その運用や管理、ハードウェアリソースの配分などは引き続きIT部門に任せることができます。一方で、その上で動くアプリケー ションの開発と管理は各部門が自由に行えます。つまりAPEXは、いわゆる『プライベートクラウド』そのものと言えます」。
そしてこのAPEXは、オラクル社内でもすでに「なくてはならない存在」として活用されているとピークは述べる。「オラクル社内では apex.oraclecorp.comというドメインでAPEXを運用しており、すべての業務部門の社員が自由にアプリケーションを開発して運用できる 環境を提供しています。現在300〜400個のAPEXベースのWebアプリケーションが稼働中です。私自身も、Oracle Database 11gリリース時に製作したTシャツをイベント等で配布するために、各サイズについて在庫数や配布先を管理するアプリケーションを作成しました。小さなア プリケーションではありますが、マーケティング活動をスムーズに進める上で重要な役割を果たしていました」。
米Oracle社のプライベートクラウド環境「apex.oraclecorp.com」のユーザー利用画面。日本語を含む10ヶ国語に対応している
一方、APEXによる「プライベートクラウド」のメリットについて、ヒチワは次のように補足する。「例えば、ある晩にあなたが思いついたアイ ディアを、翌日にはアプリケーションとして直ちに実装できます。IT部門から割り当てられたOracleデータベース・インスタンスさえあれば、他に誰の 承認も得ることなくユーザー自身が開発を始められるのです。そしてそのURLをユーザーに配布するだけで、そのアプリケーションをすぐにリリースできま す。作るのも、運用するのも、配布するのも簡単。マイクロソフトAccessよりも格段に進化したアプリケーション開発環境です。もちろん、既存の様々な データベース製品やExcelシートからのデータインポートも容易に行なえます。しかも、Oracle Application Expressは、Oracle Databaseのユーザーに無償で提供されています。Oracle Databaseをすでに使っている環境であれば、OTNからAPEXをダウンロードすれば今からすぐに利用していただけるのです」。
ここで見てきたとおり、Oracle Database 11g R2には、フラッシュストレージをはじめ、GUIベースの開発環境、そしてプライベートクラウドといった最新のテクノロジーが投入されており、つねにデー タベース開発の第一線をリードし続けている。今回のインタビューレポートを通じて「データベースのチカラ」を感じ取っていただけたはずだ。
(終わり)
《マイケル・ヒチワ》シリーズをお見逃しなく!
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