Oracleの中国人スタッフに聞く! 
中国のITエンジニア事情と、彼らから見た日本人エンジニア

オフショア開発/サポート拠点として、今や日本のIT業界に不可欠の存在となった中国。同国で日本向けのIT開発/サポート業務に当たる中国人エンジニア の数は、年を追うごとに増加している。今後は、彼らといかにうまく付き合っていくかが、日本でITにかかわる者にとって重要なスキルの1つとなっていくか もしれない。それでは、海の向こうで、また時には来日して日本向けITサービスに当たる彼らは、どのような価値観で行動し、また我々日本人のことをどう見 ているのか? Oracle Asia PacificのiTech Japanに所属し、中国広東省の深セン市で日本オラクルのお客様やパートナー企業に向けたサポート業務の支援に携わる尹 凱(イン・ガイ)氏(Senior Sales Consultant)と劉 家魯(リュウ・ジャロ)氏(Staff Sales Consultant)に話を聞いた。(編集部)


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写真左より、尹 凱(イン・ガイ)氏と劉 家魯(リュウ・ジャロ)氏


■中国拠点で日本のOracleユーザー、パートナーを支える

――お二人が現在、担当している業務の内容を教えてください。

尹:
 私たちはOracle Asia Pacificの深セン拠点において、日本のお客様向けの支援チームであるiTech Japanに所属し、Oracle EPM(Enterprise Performance Management)/BI(Business Intelligence)の分野を担当しています。具体的には、日本オラクルの営業担当者がOracle製品を販売する中でお客様からいただいた製品に 関する技術的な質問にお答えしたり、製品の機能がお客様のご要望にお応えできるかどうかを検証したり、お客様やパートナー様にご覧いただくドキュメントや デモを準備したりといったことを行っています。

――これまでのお仕事の中で、お二人とも日本とは少なからぬかかわりを持たれてきたそうですね。それについて、これまでの業務経歴と併せてお聞かせいただけますか?

尹:
 私は、中国の大学院でソフトウェア・エンジニアリングを学ぶ中で、2004年に神戸のソフトウェア会社の研修生として来日し、2年半ほど開発 の仕事を勉強しました。その後、中国に戻ってOracle Asia Pacificに入社。技術力と日本語力を生かして、日本オラクルの関連業務をサポートする業務を2年半ほど担当しました。そして次にIBMに移り、そこ で1年ほどプロジェクト・マネジャーの仕事を経験した後、再びOracle Asia Pacificに戻り、現在の業務に就きました。

劉:
 私の場合、大学でインフォメーション・マネジメントを学んだ後、企業のIT部門に入り、会社の情報システム管理に携わっていました。その後、 2004年に日本向けのソフトウェアを開発する会社の深セン分社に移り、2年半ほど開発業務を担当。日本とのかかわりはそれ以来となります。2006年に は、その会社の日本拠点に移り、日中間のブリッジSEや開発業務を担当し、その後、中国に戻ってOracle Asia Pacificに入社して、現在の業務に就きました

■中国人エンジニアはキャリア形成にどん欲!?

――お二人は、日本のOracleユーザー/パートナー様を中国で支えるエンジニアとして重責を担っているわけですが、そんなお二方が今、注目している技術は何でしょう?

尹:
 私が日ごろ接しているのは、担当製品にも関連するBIやOracle Data Integratorに関連した技術ですが、自分の担当領域以外では、仮想化技術と、Androidなどのモバイル関連技術に注目しています。ただ、忙し くてこれらの技術に触れる機会がなかなかとれないのが悩みなのですが......。

劉:
 私が最も関心を持っているのは、Oracle Databaseや、自分が担当するOracle EPM/BI関連の技術ですね。加えて、大学で学んだインフォメーション・マネジメントに関連する分野として、今後はERPについても深く学んでいきたいと思っています。

――中国のITエンジニアと日本のITエンジニアとで、仕事やキャリアに対する考え方に何か違いを感じることはありますか?

尹:
 私の場合、仕事や会社に関して自分なりの価値観を持っていまして、その価値観に基づいて業務上/キャリア上の成果を出したときに強い達成感を感じます。私がこれまでに接してきた日本人エンジニアの皆さんも、こうした点は同じかなと感じました。

劉:
 私は少し違った印象を持っているんです。

 日本のITエンジニアの方々と何年か一緒に仕事をして私が受けた印象は、「一生懸命に勉強して仕事に打ち込むこと以外は、まったく眼中にな い。また、一度ある会社に入ったら、その会社に合わせて、会社とともに成長していくことに喜びを感じる方が多い」ということです。要するに、あまり転職し ないということですね。

 中国人エンジニアはその点が違っておりまして、「自分のポジションや給料を上げていくために、必要に応じて会社を移る」という意識がはっきり しています。つまり、「今はこの会社のこのポジションで仕事をして、ここまでスキルが上がったら、次にこのポジションに就きたい」とか、「この会社は自分 にとってレベルが低いので、もっとレベルの高い会社に移ろう」とかいった考えの下に動いているんです。

――そんな中国人エンジニアの皆さんの間で就職先として人気のある企業や職種は何でしょう?

尹:
 就職先として最も人気があるのは、米国の大手ITベンダーですね。オラクルやIBM、マイクロソフト、グーグルなどです。次に人気があるのは 中国の大手企業でしょうか。例えば、テンセントやバイドゥなどのITサービス企業のほか、大手の電機/通信会社などが人気があります。

劉:
 今、一番人気のある職種はモバイル開発エンジニアですね。次に人気があるのはJavaやPHPなどによるWebシステム開発エンジニア、そし てデータベース・エンジニアでしょうか。私たちがかかわるBIの分野は、大企業で使われる技術なので、新卒の学生にはあまりなじみがないようです。

■中国人エンジニアとのコミュニケーションで曖昧さは禁物!

――お二人が、日ごろ日本のスタッフとうまく付き合うために工夫されていることはありますか?

尹:
 「ホウ/レン/ソウ(報告/連絡/相談)」をきちんとやることです。日本の組織ではこれがしっかりとできており、本当に感心させられます。以 前、日本企業に勤めていたとき、あるミーティングが終わって席に戻ったら、そのミーディングに出ていなかった同僚たちの間で、すでにミーティングの内容が 共有されていました。これには本当に驚きました。ミーティングが終わったら、すぐにその結果を関係者に連絡しているんです。この情報共有の素早さには「超 ビックリ」ですよ! 中国でも、もちろん情報共有の大切さは皆知っていますが、ここまでできている組織などないでしょう。

劉:
 その点は私も同感です! それに、日本企業では定例ミーティングの回数自体が多いですね。中国企業では、日本企業ほど頻繁にミーティングをしません。

――その頻繁なミーティングが"時間の浪費"だと言う日本人もいるのですが、お二人の目にはそのように映ることはありませんか?

尹/劉:
 正直に申しますと、時々そう感じることはあります(笑)

――それでは、次に「日本人が中国人エンジニアとスムーズに仕事を進めるためには、こうすればよい」というアドバイスをいただけませんか?

尹:
 やりたいことや目標を明確に伝えていただくことですね。日本語は表現のバリエーションがとても豊富ですが、そのためか、指示などがあやふやになりがちです。また、話を最後まで聞かないと何をおっしゃっているのかわからないことも多いですね。

――それで苦労されたことがおありなんですか?

尹:
 時々、言葉の曖昧さが原因で行き違いが生じることがありますね。例えば、何かの作業の結果が、日本人スタッフが指示した"つもり"の内容と違っていたりといった具合です。

――そうした行き違いをなくすには、何を心掛けたらよいのでしょう?

劉:
 日本の皆さんとスムーズに仕事をさせていただくために、中国人エンジニアは一生懸命に日本語を勉強しているのですが、それでも我々の日本語の レベルは日本人の皆さんには到底及びません。その点を念頭に置いていただき、まずフェース・ツー・フェースでのやり取りでは、口頭の指示だけで終わらせ ず、きちんとメモを残すのがよいと思います。また、何か仕事上の約束をしたら、「あなたは、いつまでに次のことをやってください。また、私はいつまでに次 のことをやります」といったかたちで明記して共有するとよいでしょう。

■将来の夢は?――「目指すは起業! CIO!!」

――それでは最後の質問です。お二人の今後のキャリア・プランやITエンジニアとしての夢をお聞かせいただけますか?

尹:
 キャリア上で目指しているのは、やはり優秀なマネジャーになることです。また、ITエンジニアとして夢見ていることは、例えばフェースブックやツイッターのように、いつかITを武器にしたビジネスを自分で興すことです。これは、あくまでも夢なんですけどね(笑)

劉:
 私は、まず担当している技術に関するスキルをさらに高めていくことです。また夢は、いつか大会社のCIOになることですね。もともと企業の情報システム部門で働いていましたから。

――いつかお二人の夢がかなうといいですね。本日はありがとうございました。今後も、日本のお客様によりよいサービスを提供していくために、日本オラクルのスタッフをサポートしてください!