Viva Developer!

Oracle ACEってどんな人?世界基準のトップエンジニアにインタビュー 《第3回:篠田典良氏》コミュニケーションも技術も 自分の頭で考えてこそ身につく。

日本にわずか14人しか存在しない「Oracle ACE」へのインタビューシリーズ。第3弾は、様々なOracle Database解説書の執筆で有名な篠田典良氏である。Oracle 8iから9i、10g、11gまで歴代バージョンにわたって、篠田氏の導入ガイドや運用管理ガイド、リファレンスなどに助けられた読者も多いだろう。普段 知られない著者の実像に迫ってみた(編集部)

Oracle Database

■思わぬめぐり合わせで解説書の著者に

Oracle ACE
篠田典良氏
Oracle Database 関連の技術解説書を数多く執筆している。

vivadeveloper

篠田 典良 (著), 日本オラクル株式会社 (監修)

技術者としてのスタートは、20年以上前、当時の日本DECに入社したときです。アプリケーションの開発部隊に所属して、システム開発を行なっていまし た。当時必要にせまられてOracle 7 Serverに触れたことがデータベースとの最初の出会いです。社名が日本HPに変わってからはシステム基盤よりの仕事が多くなって、現在は主に金融機関 のお客様に対して、システム設計やコンサルティングを実施しています。

Oracle Database関係の解説書を初めて書いたのは、2000年です。ある時、出版社から会社にOracle Database 8i運用関係の解説書の執筆依頼が来たのですが、実績があるエンジニアが受けられず、書ける人間を社内で募ったのです。そこで私が推薦を受けて引き受ける ことにしました。この時の出版社の担当者の縁で、その後のOracle Database関連書籍の執筆依頼が来るようになりました。

世の中には私と同じレベルの知識をもつエンジニアはたくさんいると思うのですが、その中で実際に本を出す方は多くありません。私の場合は偶然のめぐり合 わせのおかげで、今にいたるまで書き続けられたのだと感じています。執筆を続ける理由としては自分の技術レベルを維持することに加えて、私自身が新しもの 好きということもあります。解説書の著者ということで、新製品発表の際には一般の方より早めにトレーニングを受けさせていただいたり、資料をいただいたり しています。

最近のOracle Databaseを見ると、特に10g以降のバージョンには今までデータベースの範囲でなかった領域がどんどん取り込まれて、できることが飛躍的に広がっ ています。個人的には、これはデータベースとしてのあるべき進化の方向性を示すものだと感じています。Oracle Databaseは、多くの企業システムの中核としてなくてはならない存在になっています。解説書の著者としても、技術者としても、これからの Oracle Databaseをしっかり追いかけていきたいと思っています。

読者からの問い合わせや感想が送られてくるとうれしいですね。講演と違って書籍の場合は直接的な反応が少ないので、例えばそれが間違いのご指摘であってもとても励みになります。「役に立ちました」というお言葉が、一番うれしいですが(笑)。

書籍を作るときは、最初に対象読者の技術レベルを想定して構成を考えます。それから内容を書いていくのですが、詳しく書きすぎて、指定されたページ数を 越えてしまうことが度々あります。そこからどう減らしていくか、いつも頭を悩ませています。内容の取捨選択に役に立つのが、社内のエンジニアたちとの普段 の会話です。どんなところに躓くのかがよくわかって、非常に参考になります。

 

■若手エンジニアへのアドバイス

若いエンジニアのみなさんには、自分たちの技術力をお客様のビジネスにどのように役立てられるのかということをいつも考えて欲しいと思います。裏付けの ある知識があれば自信をもって提案できます。そうした自信はお客様にはすぐに伝わります。ただし内容が正確であるというだけでは不足です。心がけてほしい ことは簡単に言うと「相手が分かるように話す」ということ。同じお客様先でも、部長さんと担当エンジニアでは、立場も違えば必要とする情報も違います。そ ういう違いをよく踏まえて、最適な伝え方を考える必要があります。

自分のスキルセットについては、もっと視野を広く持って考えて欲しいと思っています。専門分野を早々と決めて脇目も振らずにそれだけを勉強する人もいま すが、それでは最終的には深い知識にはつながらないでしょう。例えばデータベースの基盤としてOSやハードウェアがあり、ビジネス要求、アプリケーション 開発の方法論、ネットワークやセキュリティ、さらにプロジェクト管理など多くの専門分野があります。それらが全部つながってひとつのシステムができる訳 で、データベースはほんの一部に過ぎません。そんな細かいところだけ知っている専門家でいては成長できません。視点を高く持って複数の周辺技術についても 押さえていてほしいと思います。

もちろん、自分の専門領域については深く知っている必要があります。例えばデータベースの機能なら「その機能はどのように実現されているのか」という HOWの視点と「その機能がなぜ必要とされるのか」というWHYの視点から検証してみるとよいのではないでしょうか。機能を実現する内部的なしくみを把握 していればその利点も弱点も分かりますし、その機能が必要とされる背景が分かればシステム提案の際に応用が効きます。

勉強会に出るとか本を読むということも必要ですが、「知っている」というだけでなく、自分の頭できちんと考えることが大切でしょう。

 

■TwitterやBlogで伝えられないこと

Oracle ACEの称号ですが、ちょっと大げさに言うと、これはエンジニアの地位向上に役に立てていきたい。私を含めたOracle ACEがエンジニアのアイコンとなっていくことで、この職業自体の重要性をアピールできたらいいと思っています。私自身は、今まで通り著作を通じた情報発 信に注力していきます。TwitterとかBlogというメディアもありますが、私としてはリアルタイム性よりもきちんと推敲された質の高い情報を出して いきたいと考えています。正確でわかりやすくきちんと検証できる情報を提供するメディアとして、技術書の果たす役割は今まで以上に重要だと感じています。

エンジニアの技量を広く知らせるためには、知識だけではなく資格も重要です。資格という点では私自身、2004年にORACLE MASTER Platinum Oracle9i Databaseを取得しています。私ともう一名が日本HP社内で最初のPlatinum資格取得者でした。現在は、社内でもPlatinum資格を取得 する人も増えていますが、そのきっかけにはなったでしょう。経験を積んだ先輩として、そういう先駆け的な役割を率先して果たしていこうと思います。

今後は、最新のテクノロジーを自分自身の目で検証しつつお客様に提供していきたいと思っています。社内ではそういう話が来ることも多いので、チャンスを活かしていきたいですね。

社内ではそういう話が来ることも多いので

Oracle Database関連書籍の執筆は、帰宅後や休日など業務外の時間で。

「家族には、多分迷惑をかけていますね」と笑う。

Oracle ACEインタビューINDEXに戻る