「データベース・エンジニアの"孤独"を"鼓動"に変える」――オラクル製品の公認ユーザー・グループ「JPOUG」が発足!!

2011年10月、オラクル製品を扱うエンジニアのためのユーザー・グループとして、「Japan Oracle User Group(JPOUG)」が発足した。同グループの設立趣旨は、「データベース・エンジニアの"孤独"を"鼓動"に変える」ことだという。では、データ ベース・エンジニアが抱える孤独とは何なのか、それを鼓動に変えるとはどういうことか――日本オラクル テクノロジーソリューションコンサルティング統括本部でソリューションリーダーを務める小田圭二氏に聞いた。(編集部)
小田圭二氏
日本オラクル コンサルティングサービス統括 テクノロジーソリューションコンサルティング統括本部 エンタープライズテクニカルアーキテクト部 ソリューションリーダーの小田圭二氏

データベース・エンジニアの孤独とは?

 JPOUG発足のきっかけは、あるセミナーにおいて、私を含む出席者の間で自然発生的にユーザー・グループを作ろうという話になったことです。 その背景にあるのは、セミナーなどの場で、「データベース・エンジニアは孤独である」と感じる機会が多かったことでした。勉強会などで議論を行う場を設け る度に、参加者であるデータベース・エンジニアの多くが、「ほかのデータベース・エンジニアの話や考えを聞きたい」、「自分の経験や苦労を話したい」とい う気持ちを持っていることに気づかされてきたのです。

 アプリケーション開発エンジニアの場合であれば、開発チームとして仕事に取り組むケースが多く、同種のエンジニアと話をする機会も多いでしょ う。それに対し、データベース・エンジニアは多くの場合、1~2人で業務に当たります。特に、客先に出向いて業務を行う派遣データベース・エンジニアの場 合、小さなシステムでは周りにいるのはすべてアプリケーション開発エンジニアという状況がよく発生します。そうすると、話も合わないし、自分の苦労もわ かってくれないという状況になりがちです。

 一方で、データベース・エンジニアには、スペシャリスト、専門家としてスキルを高めていくことが要求されます。つまり、非常に専門性が高く、奥 深い知識を身に付けなければならないのです。私が所属するコンサルタント・チームは、企業におけるデータベース・チームの立ち上げやデータベース・エンジ ニアの育成計画の作成なども支援しています。その中でエンジニアの育成計画を作る際、必要なスキル項目を検討していった結果、一人前のデータベース・エン ジニアを育てるには、少なくとも2年以上はかかることがわかっています。たとえ実務経験を積める環境があり、メンターに相当する人が存在する場合でも、最 短でそのくらいの期間がかかってしまうのです。

 このように、多くの場合、データベース・エンジニアは孤独な環境に置かれたまま、自らスキルアップに努めなければなりません。この状況を解消す るために、互いの苦労を理解して話をできる相手や、スキル面で学ぶべき先輩のいるコミュニティの必要性が高まっていると皆で考えました。そこで、オラクル 製品のユーザーが集まって交流が図れるようなユーザー・グループを作ろうということになったわけです。

Japan Oracle User Group(JPOUG)とOracle LOVERS
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JPOUGのWebサイト

 JPOUGは現在、International Oracle Users Group Community(IOUC) への登録が 完了し、いよいよ始動する段階にあります。「どんなことでもいい、皆が集まれば、何か新しいことができるんじゃないか」という想いで、ほかにはない技術セ ミナー、身近な疑問を一緒に考える技術相談会、素朴な意見や情報の交換会、そして"夜会"など、そこに集う皆の鼓動を一緒に楽しもうと画策しています。こ こに集うのは、オラクル製品にかかわるすべてのエンジニアです。

 ほかにもう1つの交流の場として、初めて参加した人も楽しめる内容を心掛けているOracle LOVERSが存在します。Oracle LOVERSは、主な活動としてオラクルの製品やサービスを題材にした勉強会を開催しています。最近では、昼食会を催ししたり、海外のOracle ACEメンバーが勉強会にビデオ・チャットで参加したり、彼らが来日した際にインタビューをしたビデオを公開したりしています。対象とする製品はOracle Databaseが中心ですが、Oracle Application Development Framework(ADF)などJava EEアプリケーション開発に関連した話題も扱っているので、ぜひhttp://www.facebook.com/oracle.lovers を「いいね!」してみてください。

 JPOUGとOracle LOVERSはいずれもベンダーからは独立した組織であるため、私は主に講師などのかたちで協力しています。このようなコミュニティ活動に参加している理 由は、オラクル製品のユーザーであるエンジニアを支援するのは、オラクル社員の責務だと思っているからです。このような考えを持っているのは私だけではな く、すでにOracle LOVERSには多くのオラクル社員有志がボランティアとして参加してくれています。まぁ、私の場合、単にこうした活動が大好きだからという理由もあるの ですが(笑)

「アーキテクチャの理解」がスキルアップのコツ
小田圭二氏
これまでオラクル社内だけで数百名のデータベース・エンジニアを指導してきた小田氏は、スキルアップのコツを「RDBMSのアーキテクチャを理解すること」だと断言する

 データベース・エンジニアの孤独を解消することがJPOUGの目的の1つですが、その先にあるのはスキルアップを支援することです。そこで、私 自身の経験や業務を通して得たスキルアップのコツを少し紹介しておきましょう。そのコツとは、ずばり「RDBMSのアーキテクチャを理解すること」です。

 データベースの仕事は、丸暗記では通用しません。私は5年間ほど社内の教育担当として数百名の新卒社員を指導してきましたが、それを通してわ かったことは、伸びる人と伸びない人は明確に分かれるということです。例えばコマンドなどを丸暗記するような人の場合、すぐに成長が頭打ちになってしまい ますが、アーキテクチャについて理解し、どのように動作するのかということまで考えて学ぶ人は、応用力を身につけて着々と成長していくのです。

 アーキテクチャを理解する方法としては、「イメージで理解する」ということをお勧めしています。ITで用いられる技術的な原理の数は限られてお り、ほとんどの技術は、それらのうちいくつかの原理を組み合わせて実現されています。RDBMSについても、基本的なアルゴリズムは、ほかのOSなどと同 様のものが使われています。ITの一般的な用語を使ってRDBMSのアーキテクチャを図示しながら考えることで、イメージによる理解が進むでしょう。

 もう1つ、「データベースを自分で作り、自分で壊す」ということを経験するのも重要です。一般に、書籍で学んだ知識だけでは、現場の仕事には対 応できないものです。オラクルの製品であれば、自由にダウンロードして試すことができるので、作っては壊し、作っては壊しということを繰り返しながら経験 することが可能です(createやbackup、recovery、データベースを壊すなど)。それにより、少なくとも現場の仕事を疑似的には体験する ことができ、習熟度や実践的な知識のレベルが大きく向上します。

 また、少し上のレベルに到達した人は、「ほかの人に教える」というのも効果的なスキルアップ方法となります。さらに、「トラブル対応」もスキル アップを図る良い機会です。私自身も社内では"火消し役"として仕事をしてきたのですが、トラブルの現場では確かな知識/実力が要求されるので、自然とス キルアップできます。

 もちろん、こういった経験を積む機会が得られない方もいらっしゃるでしょう。そのような方、とりわけ初心者には、「OTNセミナー オンデマンド コンテンツ」を強くお勧めします。また、本サイト(oracletech.jp)や、「KROWNディレクトリ・サービス」に も役に立つ情報が満載されています。特に後者は、運用系のデータベース・エンジニアには必ず読んでいただきたいコンテンツの1つです。これらのコンテンツ を活用しながら、さらに疑問や探求心のある方は、ぜひOracle LOVERSやJPOUGに参加してください。心からお待ちしています!!