応募者追跡システムとは

応募者追跡システムとは

応募者追跡システム(ATS)は、リクルーターや企業が人材募集および採用プロセス全体で求職者を追跡するためのソフトウェアです。このソフトウェアには、シンプルなデータベース機能から各種ツールのフルサービス・スイートに至るまで、さまざまな機能が備わっており、あらゆる規模の企業が求職者を容易に選別、管理、分析できます。

応募者追跡システムを使用する理由

組織はそれぞれに違いがありますが、組織は優秀な人材を引き付け、採用し、最大限に活用することで力強く成長します。多くの企業は、採用プロセスまたはオンボーディング・プロセスのある時点で大きな課題に直面します。ATSが提供するさまざまな機能を使用することで、組織は最適な求職者を見つけ、採用し、定着させることができます。ATSには、次のようなメリットがあります。

優秀な求職者の調達と確保

組織によっては、優秀な求職者とつながるためのリーチがなかったり、マーケットプレイスにおいて十分に大きな規模で人材を探したりできない場合があります。また、特定の求職者を見つけるための適切なチャネルの重要なデータが欠落している組織もあれば、ブランド認知度やそれを高める手段がない組織もあります。ATSは、求職者に関するこのような重要な課題に対処するのに役立ちます。一部のシステムは、人工知能(AI)と機械学習によって機能が強化され、理想的な求職者のプロフィールを作成したり、スキルを評価および識別したり、成功要因を予測したりすることにより、各採用の効果を最大限に高めることができます。これにより、組織は求職者の行動をより深く理解し、ブランド認知度を高め、求職者が最も多く使用するプラットフォームやチャネルで特定の求職者にターゲティングすることができます。

求職者のエンゲージメントの向上

求職者を最初の接触から就業開始日までのジャーニーを歩ませることは、人間的な触れ合いが重要なプロセスです。応答に時間がかかったり、面接スケジュールに関するエンゲージメントが低かったりすると、優秀な求職者を簡単に失う可能性があります。ATSにより、応募者のライフサイクル全体の可視性が向上するため、タッチポイントを見落としません。

効率の向上とコストの削減

効率の悪い手動プロセスへの依存、採用チーム間のコラボレーション不足、および主要な採用関係者との連絡ミスは、応募者が、採用プロセスの進行が遅いと感じる原因になります。これにより、採用にかかるコストと時間が増加します。ATSを使用することで、手動プロセスを自動化し、採用チーム全体での採用サイクルの可視性を高め、求職者ジャーニー全体にわたるコミュニケーションを増やす機会が得られます。

ATSを使用しているリクルーターの78%が、採用する求職者の質が向上したと回答しています2

堅ろうなATSのさまざまな機能の詳細を見る(4:02)

競争力の維持

2019年の時点で、フォーチュン500企業の99%が採用プロセスにATSを使用していました。1これらの企業は、優秀な人材を獲得するための競争力となるブランド認知度とリソースをすでに持っています。ATSを使用すると、求職者のために適切かつ迅速なアクセス方法を作成して、他の企業と互角に競争できます。

オンボーディング・プロセスの最適化

適切なATSはオンボーディングにも役立ち、採用を受け入れた求職者が、初日から影響力を発揮するのに必要なすべての情報を手に入れることができ、全体的な生産性と定着率が向上します。

求職者にとっての応募者追跡システムのメリット

競争の激しい求人市場において、リクルーターとハイアリング・マネージャーは、潜在的なすべての優位性を活用して最適な人材の獲得を目指しています。多くの組織がリモート・ワークに移行しているため、このニーズはさらに重要になっています。この競争の舞台は広がっています。地理的な障壁が取り除かれ、最適な応募者にとっての選択肢がさらに増えています。ATSは、洞察力のある求職者にとって重要な差別化要因となる可能性があります。次のようなメリットがあります。

求職者エクスペリエンスの向上

求職者は、検索の際にスムーズなデジタル・エクスペリエンスを期待しています。優れたATSは、自動入力可能なオンライン・アプリケーション、セルフサービスでの面接スケジューリング、および採用チーム全体のシームレスで一貫性のあるコミュニケーションを提供することで、求職活動での最も煩雑な側面の多くを自動化します。

リクルーターの86%が、ATSを使用して採用にかかる時間を短縮したと回答しています。3

ATSのジャーニーを通じて求職者エクスペリエンスを向上させるメリットの詳細(12:19)

採用プロセスの効率の向上

求職者エンゲージメントが低いのは、多くの場合、採用チームの連携が取れておらず、採用チームが効果的にコラボレーションできないか、求職者が採用プロセスのどの段階にあるのかに関する可視性に欠けているか、または重要な情報を求職者に提供できないことが原因です。これは、エクスペリエンスのあらゆる側面に基づいて仕事を受け入れるかどうかを決定する優秀な応募者にとって、大きなフラストレーションになります。ATSは、悪影響を与える問題を避け、応募者の採用を迅速化し、ブランドの口コミをよりポジティブなものにするのに役立ちます。

採用直後から能力を発揮

優秀な人々は、すぐにでも新しい仕事に取り組むことを望んでいます。ATSは求人と採用を支援するだけでなく、オンボーディング・プロセスを効率化する多数のツールも提供します。これにより、求職者からフルタイム従業員への移行がスムーズになります。

最適な応募者追跡システム: リクルーターと企業にとってのメリット

適切なATSは、リクルーターの活動の有効性に大きな影響を与える可能性があり、次のことができるよう支援します。

より強力な職務内容説明の作成

組織が人材募集を行うのは、現在の人員レベルでは対応できない重要なビジネス・ニーズを特定しているからです。職務内容説明では、このビジネス・ニーズを主要な職責として記述する必要があります。ただし、最も優秀な求職者の注意を引き付けることも必要です。ATSには、職務内容説明を作成するための豊富なキーワードを含むテンプレートがあり、それを使用することで、優秀な求職者がよく参照する場所において、適切なタイミングで適切な注意を引き付けることができます。

リクルーターのリーチ拡大と障壁の削減

ATSを使用すると、リクルーターは求人をジョブ掲載サイトおよび特定の候補者に最も適したソーシャルメディア・チャネルに適合させることができます。また、ATSは、社内の求人案内の可視性を最大限に高めるとともに、必要なクリック数を減らし、見込みのある従業員にとっての障壁を取り除きます。

自動化と効率化

ATSにより、求人情報の投稿やコミュニケーションの自動化およびデジタル化された柔軟な面接スケジューリングなどのツールにより、採用サイクル全体で手動プロセスを変革し自動化できます。企業は、紙やメールを使用した一元化されていないプロセスへの依存を減らすことができます。これにより、優秀な求職者を見落とすのを防ぐことができます。また、採用ファネルを通じて応募者の処理を迅速化し、採用コストの指標を改善しながら、ミスと停滞を排除できます。機密データをデジタル化および一元化すると、そのようなデータのセキュリティも向上します。

採用チーム全体の可視性とコラボレーションの向上

求職者と同様に、採用チームの分散化も進んでいます。多くの組織では、一貫性のないプロセスや非効率的なツールが原因でコラボレーションが不十分であり、効率の低下に苦労しています。ATSを使用すると、求職者がプロセスのどの段階にあるのか、どのようなタッチポイントが発生したか、残りのステップは何かを採用チーム全体が確認できます。アラートを設定できるため、重要な職務を見落としたり、優れた求職者を失ったりすることがありません。

応募者追跡システムを選択する際に知っておくべきこと

ATSのオプションにはさまざまなものがあるので、組織は、投資を最大限に活用するために、いくつかの要素を評価してから最適なツールを決定する必要があります。

解決する必要がある問題の把握

非常に多くのATSのオプションがあるため、ソリューションがターゲットとする真の課題を特定することが重要です。たとえば、

  • 組織が非常に優秀な人材の特定と採用に苦労している場合、魅力的な職務内容説明の作成、面接前のスキル評価の自動化、およびAIを使用した堅ろうなスキル・プロファイルの作成が可能なATSソリューションを探す必要があります。
  • 採用プロセス全体でコミュニケーションと求職者エンゲージメントに苦労している組織は、求職者ジャーニーに沿って、より多くのヒューマン・タッチポイントと進ちょくベンチマークを提供するATSを特定する必要があります。
  • ATSは、グローバルに採用を行う組織のための複数言語のサポートなど、よりニッチなサービスを提供できます。

組織の能力と投資の一致

ソフトウェアやテクノロジーへの投資と同様に、まず組織の能力を明確に把握してください。企業は、自社における、変化に対する欲求と新しいツールを採用する意欲を知る必要があります。また、企業は予算の制約に従うとともに、コストと時間に関して期待される投資利益率(ROI)についての鋭敏さを持っている必要があります。

ITインフラストラクチャの理解

ATSのオプションは、対象とする範囲に応じて異なる可能性があります。より包括的でフルサービスの製品は、非常に複雑である場合があります。ほとんどの高度なATSは、すぐに利用可能なソリューションではないため、会社に数か月または数年かかるプロセスに専念する時間とITリソースがあることを確認することが重要です。プロセスの導入と統合が、既存のITインフラストラクチャを超えて拡大する可能性もあります。ATSでは、採用プロセスに通常欠かせないが、追跡システムに含まれていない外部ソフトウェアとのインタフェースが必要になる場合があります。これには、雇用前の薬物検査や経歴確認などが含まれます。企業は、適切なソリューションを特定するために、自社の環境を知っておく必要があります。

応募者追跡システムの未来

応募者追跡システムは、従業員の変化のペースとニーズに合わせて革新を続ける堅ろうなツールです。最高レベルのシステムは、現時点でこれらの課題に対応していますが、将来的には以下の特徴を共通して持つようになることでしょう。

モバイルファースト、豊富な情報、迅速な適応性

さまざまな年齢層で構成された従業員のニーズは常に変化しており、ATSはこれらの期待にこたえる柔軟性と適応性を備えている必要があります。優秀な求職者はシームレスで完全にモバイルなインタラクションを求めているため、ATSマーケットプレイスのリーダー企業は、携帯電話や外出先など、場所や方法を問わない検索や応募についてのニーズにこたえています。また、求職者は、雇用前の数多くの質問に対して詳しい回答が得られることを期待しているため、ATSの検索性の向上、よくある質問に回答するためのライブ・サポートの提供やボットの採用、リアルタイムで新しいニーズに対処するためのカスタマイズ機能の提供が促されています。

強化されたユーザー・エクスペリエンス

ATSは求職者ジャーニーを継続的に改善し最適化します。より直感的でシンプルなインタフェース、履歴書から情報を自動的に抽出する機能、および面接スケジュールのセルフサービスは、見込みのある従業員向けの差別化機能であり続けるでしょう。また、リクルーターは、求人の投稿からタスク管理に至るまで、さまざまな面でよりシームレスなエクスペリエンスを享受できます。

ソーシャル・プラットフォームを活用する機能の向上

ソーシャル・ネットワークは採用プロセスに不可欠なため、ATSはソーシャル・メディアとより深く統合され、非常に優秀で受動的および能動的な求職者を特定できるだけでなく、組織が強力なソーシャル・ブランドを構築するのにも役立ちます。

AIによる有効性の向上

AIは効率の向上に不可欠です。AIが組み込まれたATSは、複雑なデータセットを処理できるため、組織内の優秀な人物を差別化するスキルを特定するのに役立ちます。成功を左右する要素を分離することで、企業とリクルーターは、よりターゲットを絞った求人情報を作成し、より詳細なレベルでスキルを選別および評価して、採用プロセスの弱点に対処できます。高度なアルゴリズムは、理想的な求職者のより微妙で詳細な人物像を提供し、求職者のためによりパーソナライズされたスムーズなエクスペリエンスを作成します。

クラウドベースの完全に統合されたエコシステム

ATSは将来的にクラウド化されるため、サードパーティのインフラストラクチャ、スケーラビリティ、およびセキュリティ機能を活用できるとともに、オンプレミスのメンテナンスと管理が不要になります。また、主要なATSは、幅広いテクノロジー・スタックと統合されるため、企業は採用プロセスがビジネスに与える影響をより深く理解できます。

ダイバーシティとインクルージョンの強化

さまざまな従業員や包括的な文化は、組織を強くするだけでなく、企業や求職者に期待されることでもあります。ATSは、データおよび採用パターンを使用して、採用プロセスにおける本質的な偏りを特定および排除し、スキルを持った、よりさまざまな応募者に企業で働く機会を提供します。


1 Linda Qu、「フォーチュン500社の99%が応募者追跡システム(ATS)を利用」、Jobscan、2019年11月7日

2 Karen McCandless、「採用戦略レポート: 従業員による紹介への投資と、ブランドのより適切な売り込み」、GetApp、2017年10月3日。

3 McCandless、「採用戦略レポート」