優れたエンジニアに接することが成長への近道――幹事に聞く「JPOUG」の真の意義

国内におけるオラクル製品のユーザー・グループ「Japan Oracle User Group(JPOUG)」 の本格的な"離陸"に向け、現在、着々と準備が進められている。同ユーザー・グループの幹事を務める新久保浩二氏に、その進捗状況を聞いた。また、 Oracle ACEとして積極的な情報発信を行う氏に、さらなる成長を目指すデータベース・エンジニアへのアドバイスや、エンジニアとしての心構えなども語ってもらっ た。(編集部)
新久保氏
JPOUGの幹事を務める新久保浩二氏。Oracle ACEとして、Oracle Databaseに関するさまざまな技術情報を発信している。

 
2012年初夏のセミナーから本格始動
2011年10月、オラクル製品を扱うエンジニアのためのユーザー・グループとしてJPOUGが発足しました。その設立趣旨は、oracletech.jpの記事で日本オラクルの小田圭二さんが説明してくださっているように、「データベース・エンジニアの抱える"孤独"を"鼓動"に変える」というものです。私は、このJPOUGの発起人の1人であり、幹事を務めていますが、今回はJPOUGで予定している活動内容などについて、小田さんの話に少し補足しましょう。
 
 海外のオラクル・ユーザー・グループのカンファレンスに参加すると、オラクル社員以外のエンジニアが、現場レベルで非常に役立つ技術情報や" 裏技"、経験などを披露してくれるケースをよく目にします。私はそうした場を経験する度に、同様のナレッジは国内でも蓄積されているはずなのに、それらが エンジニアの間で広く共有されていないことに疑問を感じてきました。「国内でも有用なナレッジを共有し、エンジニア間の交流を図れる場を提供できないだろ うか」――こうした思いを親しいエンジニアらに伝えたところ、多くの方から賛同を得ました。その結果として発足したのがJPOUGなのです。
 

JPOUGは現在、ボード・メンバーがWebと現実世界のそれぞれにメンバーが集まれる場を準備している段階にあります。まず、 Webについては、オラクル製品のユーザーに対する告知用のホームページを用意します。そこから「Facebook」や「Googleグループ」に誘導 し、いずれかで登録を行えばJPOUGの会員になれるという形態にします。これについては2012年2月に準備が整う予定です。
 
 一方、現実世界の動きとしては、最初の大きな活動として2012年6~7月ごろに技術セミナーを開催する計画を進めています。セミナーの内容 は、オラクル製品を題材とした"重厚"なものになる予定です。あまり知られていない便利な機能を紹介したり、多くのエンジニアがぶつかっている問題に対す る解やヒントを提示したりと、これまでに蓄積されたナレッジを紹介するものになるでしょう。そのほかに、Oracle Databaseの内部構造について解説するセッションや、ユーザーによる講演会や討論会なども盛り込んでみたいですね。
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JPOUGのWebサイト

また、2012年4月4日~6日に開催される「Oracle OpenWorld Tokyo 2012」 でも、いわゆる"アンカンファレンス"のスタイルでイベントを実施する予定です。こちらは通常のセミナーとは異なり、特に決まった筋書きはなく、司会を務 めるJPOUGのメンバーと参加者との間でインタラクティブに対話するタイプのイベントとなります。日ごろ疑問に感じていることをちょっと質問してみたり するには絶好の機会だと思いますので、お越しの際はぜひのぞいてみてください。

なお、JPOUGはベンダーからは独立した組織であり、 オラクルの社員がボード・メンバーとして加わることはありません。とは言え、oracletech.jpなどのメディアを使った告知や、イベント会場の提 供といったかたちで日本オラクルから多くの協力を得ています。そして何より、日本オラクルの有志の方々が人的リソースとしてJPOUGに参加し、お手伝い していただいていることが大きな助けとなっています。

JPOUGに参加する最大のメリットですか? やはり、優れたエンジニアと身近に接することができる点でしょう。JPOUGでは、彼らがどのようにして高いスキルを身に付けたのか、どうやって現在のポ ジションに就いたのかといったことを直々に学べるのです。また、自身のスキル・レベルを測る場にもなるでしょう。自分のスキルがどのくらいのレベルなのか は、他人と比較してみなければわかりません。JPOUGでは、参加者から情報を得たり、自分から情報を発信したりすることで、そうした比較が行えます。同 様に、ユーザー企業で働く方にとっては、現在付き合いのあるSIerや、そこに所属するエンジニアがどの程度のレベルなのかを測る場としても活用できると 思います。

「おら!オラ!Oracle」
おら!オラ!Oracle」 は、インサイトテクノロジーが運営する技術情報サイトであり、Oracle Databaseの話題を中心に、システム開発/運用に役立つ技術情報を提供している。「製品開発の中でOracle Databaseに関するさまざまな検証作業を行っていると、世間では"通説"とされている情報とは異なる検証結果が得られることが多々あります。『お ら!オラ!Oracle」では、主にそうした情報を発信しています」(新久保氏)。

「なぜ、そうなのか?」と問い続けることが成長の鍵

次に、私自身がどのようにキャリアを積んできたのか、どうやってスキルアップしてきたのかをお話ししましょう。
 
 私は、製薬会社の情報システム子会社でエンジニアとしてのキャリアをスタートしました。その会社でOracle Databaseを使った業務に携わっていましたが、3年ほど経ったころ、「自分は将来、どのようなエンジニアになりたいのか」ということを強く意識する ようになりました。そして、より大規模で複雑なデータベースを扱う仕事に携わっていきたいという気持ちが強くなっていったのです。
 
 そこで、現在勤めているインサイトテクノロジーに転職しました。インサイトテクノロジー入社後は、まず2年ほどOracle Databaseのコンサルタントを務め、その後、Oracle Databaseを利用するシステムの運用管理ソフトウェアの開発に5、6年携わりました。そして直近の1年ほどは、Oracle Databaseや自社製品、ハードウェアなどを含めて、最適なシステムをお客様に提案する仕事に携わっています。
 
 私は今の会社に入ってから、データベース・エンジニアとして大きく成長したと思います。ここで開発しているのは、Oracle Databaseの動作を監視し、何か問題があれば、そのことを通知したり、改善策を提示したりする製品なので、Oracle Databaseの中身を十分に理解している必要があります。その理解を導く鍵となるのは、Oracle Databaseの仕様や動作について、常に「なぜそうなのか?」と問い続けることです。
 
 例えば、「DBMSとはどのようなものか?」という問いに対しては、「データを入れる器」といったものをはじめ、さまざまな答え方があるで しょうが、私自身は「DBMSは単なるアプリケーションである」という答えを持つに至りました。皆さんは、DBMSはブラック・ボックスであり、万人がそ の内部に触れられる性質のものではないというイメージを持っているかもしれません。しかし、実際にはだれでも触ることができ、「なぜ?」、「なぜ?」とい う問いを繰り返していくと、既知のアーキテクチャで構成された1つのアプリケーションに過ぎないということが理解できます。このように、「なぜそうなの か?」という問いを繰り返すことが、エンジニアとして成長していくうえでの原動力になるのです。私は現在も、何事においても「なぜそうなのか?」という探 求を追求していくことをポリシーにしています。
 
 スキルアップのもう1つの秘訣としては、「優れたエンジニアの真似をすること」が挙げられます。国内外のトップ・レベルのエンジニアやコンサ ルタントと会って話をすると、しばしば「このレベルの人たちはこのような考え方をしているのか、このような『なぜ?』を持っているのか」ということに気づ かされます。そこで、少しでもそうした人たちのレベルに近づけるよう、彼らの考え方を真似するわけです。そのうえで問いを重ね、彼らとは異なる考え方や、 より優れた解を実現しようとすることが重要だと思っています。
 
 さらにもう1つ、私自身が常に念頭に置いていることをご紹介しましょう。それは、「チャレンジしなければ、大きなリターンは得られない」とい うことです。そのきっかけとなったのは、自社製品の開発をインドで行ったことでした。インドのエンジニアは優秀であることに加えて、強いハングリー精神を 持っています。彼らが必死になって仕事に取り組んでいる姿を見て、自分も必死にならなければ、世界で勝つことはできないと痛感しました。現在も、自分に とって専門外の領域にも積極的にチャレンジし、自分のものにしていくよう努力することを肝に銘じて日々の業務にあたっています。