「Oracleライフ」を満喫した秋の一日
ユーザー会主催「勉強会」レポート
製品や技術に関する理解/知識を深めることを目的に活動するユーザーコミュニティは多い。オラクル製品の場合も例外ではなく、多くのコミュニティが
勉強会などを定期的に行っている。本稿では、そうしたユーザー会の活動の中から、今年10月23日に開催された3つのユーザー会の勉強会を紹介する。(編
集部)
■勉強会に会場を無償で貸与
勉強会の会場は、日本オラクル青山センター(日本オラクル本社)13Fのセミナールームだ。この日は3つのユーザー
会が勉強会を実施した。ただし、これらのユーザー会と日本オラクルは直接関係しない。日本オラクルが月に5回ほどセミナールームをエンジニア・コミュニ
ティに無償で開放しているため、こうした勉強会をオラクル本社で開催するユーザー会の数は現時点でおよそ30に上っている。 勉強会の内容は、ユーザー会によって異なる。セミナー形式のものもあれば、グループワーキングのかたちで学習したり、皆で輪を作ってディスカッションを行ったりなど、さまざまだ。 このような勉強会をオラクルではユーザー支援の一環と位置づけ、勉強会で使用するオラクル製品を無償で貸し出すケースもあるという。ユーザー会のメンバーは製品に実際に触れながら理解を深めることができるわけだ。 それでは、3つの勉強会の様子を紹介しよう。 |
日本オラクルの本社が入るオラクル青山センター。セミナールームをユーザーの勉強会に無償で提供している。 |
■スペシャリスト資格の取得を目指す ~データベース友の会~
「データベース友の会」は、Quatrex氏(ペンネーム)が代表を務めるユーザー会だ。勉強会のタイトルは「第8回
データベーススペシャリスト勉強会 in
青山」。13時から始まった勉強会は、文字どおりデータベーススペシャリストの資格試験に合格することを目的としたもの。「この勉強会をはじめたきっかけ
は、私自身の不合格の経験」(Quatrex氏)だったそうだ。
勉強会はお互いの自己紹介から始まる。仲間意識を高め、グループワークでの活発な交流を促すためだ。
データベーススペシャリストの試験は、「午前」のマークシート問題、「午後1」「午後2」の記述問題と論述問題が出題される。勉強会もこの順序に沿ってカリキュラムが工夫されていた。
勉強会は、「午前」問題を全員で解くことから始まる。Quatrex氏が教壇に立ち、過去に出題された問題を紹介、参加者ひとりひとりに回答とその理由を聞いていく。指名された会員が自分の言葉で回答を選んだ理由を説明する。
中には「まったく分からないので勘です」という意見も出る。参加者のスキルレベルは本当にさまざまだ。学校の講義のような緊張感はなく、自由に発言し、意見交換が出る様は勉強会ならでは。誰もが参加しやすい雰囲気だ。
「午前」問題の講義。Quatrex氏は、参加者一人ひとりに回答とその理由を聞きながら、正解に到るための考え方や知識などを導いていく。テンポよく分かりやすい説明に、ついつい引き込まれてしまう。
講義形式の「午前」問題の学習が終わると、今度はグループワークになる。「午後1」「午後2」の問題に対応して4つのグループに分かれて問題を解くというスタイルに変わる。
「午後1」の問題をグループで解く。データベーススペシャリスト試験は、午後1の問題が合否を分けるポイントだけに、回答を導き出すために活発な意見が交換され、各自がメモを取る様子は非常に熱心だ。
「データベース友の会」の普段の活動は、mixiのコミュニティやメルマガ配信などが中心だ。勉強会は今年1回目の開催となるが、今後は試験に向けて月1回以上の開催を予定しているという。
同勉強会からは、見事にも続々と合格者が出ている。現在会員は100名にまで膨らんだ。合格者が自らの意思で後輩の指導を目的に参加するケースも出てきており、これからのも盛り上がりが楽しみなコミュニティだ。
データベース友の会
■コミュニティに参加することの楽しさを追求 ~わんくま同盟~
中博俊氏が代表を務める「わんくま同盟」の勉強会のタイトルは「わんくま同盟 東京勉強会 #52」。 「わんくま同盟」の勉強会は、ほぼ毎週土曜日に開催されている。約30名の参加者があり、最も広いセミナールームを使用していた。 オンラインではブログやサイトを活用して活動し、オフラインでは年間40回、国内4カ所(東京、名古屋、大阪、福岡)を中心に各地で勉強会を開催してい る。勉強会の内容はWebに掲載するほかUstreamでの中継も行う。会員総数は約450名を抱える大きなコミュニティだ。 会場に 入ってまず目に付いたのがセーラー服姿やメイド姿の参加者たち。この勉強会はドレスコードがなく、コスプレ大歓迎なのだ。このユーザー会では、「スキル アップだけでなく、コミュニティ活動で楽しさを感じてもらう」(中博俊氏)ことを主旨としており、コスプレもコミュニケーションのきっかけとして役立って いるようだ。 |
わんくま同盟の会員はエンジニアに限らず幅広い職種の人たちから構成されている。勉強会の参加スタイルも自由だ。 |
勉強会は午前中から始まり、まずは参加者が好きなことを5分ずつ話す「LT(ライトニングトーク)」が繰り広げられた。参加者の緊張を和らげるととともに、コミュニケーションの一助となるよう配慮されていた。
午後はセミナーとなるが、セミナーの「お題」も非常に自由。今回は「プログラミング言語」ということでPerlやRESTful Webサービス、Fiddlerなどのセミナーが行われた。
また今回は、日本オラクル社員の石丸氏による「Oracle Application Express(APEX)4.0
の使い方」も行われた。APEXの概要やAPEX
4.0の新機能などがデモとともに紹介されるという本格的なセミナーで、参加者は真剣に耳を傾けていた。
チュートリアル形式で進むAPEXのセミナーでは、Ustreamの中継でも発言が相次いだ。途中、中継が中断し、全国からの視聴者が騒ぎ出す一幕も。
勉強会の次回のテーマは「10年後を予測しよう」、その次は「宇宙」であるという。技術者の集まりではあるが、コミュニティ活動の楽しさや幅広い
知識に触れることを重視していることが特長。もちろん、IT技術に関する勉強会も各地でひんぱんに開催されており、さまざまな技術や製品を取り上げてい
る。
わんくま同盟
■DBマガジン編集者との熱きディスカッション ~Oracle LOVERS~
株式会社リーンシステムの吉田基崇氏が代表を務める「Oracle
LOVERS(オラクルラバーズ)」も、定期的に勉強会を開いているユーザー会だ。ほぼ月1回のペースで東京と福岡で勉強会を開催しており、実際に機器に
触れながら勉強する回と、オラクルに関わるニッチな方を呼んでスピーチをしてもらう回に大きく分けているという。
この勉強会は、当初の会員の集め方がおもしろい。吉田氏が会員をmixiで検索し、東京と福岡それぞれの在住者にダイレクトメッセージを送ったのだ。そ
の努力が実り、いまや毎回20名以上が集まる勉強会に育った。その活動は、mixiでのコミュニティ「DBならOracleでしょ♪」が基盤になってい
る。参加希望者は、mixi(http://c.mixi.jp/oracle)で探してみていただきたい。Twitterが主流のこの時代に、mixiだけで活動しているのは、吉田氏の「出会った人とそのあとも、交流を深めたい」というこだわりだそうだ。
今回の「Oracle LOVERS勉強会
第24回」は、翔泳社「DBマガジン」の編集者である市古明典氏のトークイベント「DBマガジンの読者へむけた、これまでと、これから」だった。市古氏は
長年オラクルに関わる、まさにニッチな人だ。惜しまれつつも2010年9月号で休刊となったDBマガジンの話題が中心のイベントとなった。
営業マンから翔泳社の編集者に転身したユニークな経歴をもつ市古氏。当 人の転職の理由からDBマガジンの歴史、雑誌が企画から書店に並ぶまでの流れの説明、成功した企画、売れなかった企画などを包み隠さず紹介するという、和 やかな温かいトークイベントとなった。まさに、ニッチな話がもりだくさん。参加者は思い思いの場所に椅子を置いて耳を傾け、自由気ままな暖かい雰囲気で、 真剣な質問中にも時折笑いも起きつつ、楽しい時間が過ぎていった。
続いて市古氏と参加メンバーによるディスカッション(吉田氏はこれをおしゃべりタイムと呼んでいた)が行われた。トークは、参加者がボードに書い た質問の中から市古氏がテーマを選んで回答するという形式(吉田氏は、明石家電視台のようなものだと説明していた)だ。参加者から「黒本を電子化して欲し い」というリクエストがあり、逆に古市氏から参加者へ「電子化の一番のメリットは何か」という質問や、「弊社のメダル本って知ってますか?」といった宣伝 があるなど、活発なおしゃべりで盛り上がった。さらに話題は「ライターをどうやって発掘するのですか?」、「ライターは翔泳社以外の出版社で原稿を書いて もよいのか?」など、さまざまに展開し、時間を気にしながらの進行となった。
思い思いのディスカッションテーマが書かれたワイトボード。内容はさまざまだ。やはりDBマガジン廃刊を惜しむ声は多く、「バックナンバーを電子化できないか?」「電子書籍で復刊できないか?」といった質問が相次いだ。そのうち、議論は電子書籍の可能性にまで発展。
滅多に会えないニッチな有名人や著名人から直接話を聞くことができることが、オラクルラバーズの魅力だと感じた。初心者の技術者のみならず熟練者にも役に立つと感じたセミナーだった。
(インタビューに続く)
- 「Oracleライフ」を満喫した秋の一日 ユーザー会主催「勉強会」レポート
- ユーザー会インタビュー1 「データベース技術者が集まる場を作りたかった」「データベース友の会」主宰者 Quatrex氏
- ユーザー会インタビュー2 「ドレスコードがなく、コスプレありの勉強会です」「わんくま同盟」主宰者 中 博俊氏
- ユーザー会インタビュー3 「『技術で世の中を良くしたい』と思う人が集まれば、何かが変わる」 「Oracle LOVERS」主催者 吉田 基崇氏
- ユーザーコミュニティ座談会(前編)「データベーススペシャリスト資格不合格が勉強会のきっかけでした」
- ユーザーコミュニティ座談会(後編)「会社の外に出ていろいろな世界が広がっていることを知ることも大事」