ユーザー会インタビュー3
「『技術で世の中を良くしたい』と思う人が集まれば、何かが変わる」
「Oracle LOVERS」主催者 吉田 基崇氏
首都圏でも秋の深まりが身近に感じられた今年10月23日、3つのユーザー会が日本オラクル本社で勉強会を開催した。編集部では、データベースの技術者が集う「Oracle LOVERS(オラクルラバーズ)」の主催者、吉田基崇氏に、ユーザー会の活動内容や意義などについて話を聞いた。(編集部)
――ユーザー会を始めたきっかけを教えてください。
「Oracle LOVERS」の主宰者、吉田 基崇氏。ユーザー会を立ち上げるにあたって、氏はmixiで会員をスカウト
|
吉田氏:
実は私、オラクルの社員でした。2003年にオラクルを退社し、2008年からは東京へ出てきてITコーディネーターの仕事に就き、毎月一回程度、東京と福岡を往復する日々を送っていました。
東京は日本の中心ですが、福岡の人は福岡がアジアの中心と考えています(笑)。そんな福岡を元気にしたい、エンジニアも元気にしたいという思
いが以前からありました。せっかく東京と福岡を行き来しているのだから、双方のエンジニアのお役に立てればと思い、技術者の交流、情報交換の場として双方
で勉強会を開催したのがきっかけでした。
――活動内容や会員について教えてください。
吉田氏:
勉強会は今回で24回目です。東京と福岡で半分ずつ実施しています。勉強会では「技術を身につけること」「人と出会うこと」の楽しさと重要性
を参加者に知ってほしいと考えています。いろいろな技術について実機を使用して検証したり、Webページや本を書いている人などをお呼びしてスピーチして
もらったりすることで、オラクルの技術を中心に人と人が出会う場所にしたいのです。また、「会員を置いてきぼりにしないこと」をモットーにしており、競争
ではなく助け合う、みんなで関わっていくことを重視しています。
実機での検証は、いまでこそAmazon
EC2上でオラクル製品を動かしていますが、以前は、勉強会用のサーバーを購入して検証に利用していました。重いサーバーを抱えて東京と福岡の間を行き来
していたわけです!(笑)。どうしてこんな苦労をしたかといいますと、ファミリーレストランや喫茶店に集まって情報交換するのではなく、実際に実機を触っ
て検証しながら行う勉強会を開催したかったからです。そこで、当初は品川に部屋を借り、サーバーを持ち込んで勉強会をやっていました。6畳程度の部屋で空
調もなく、みんな汗だくでした。
それが、ある機会にオラクルの方から本社のセミナールームを使っていいとおっしゃっていただき、2009年4月以来、利用させていただいてい
ます。無線を含むネットワーク環境や空調も完備されていますし、東京の真ん中で利便性も高い。このようなところをお借りできるのは、非常に感謝していま
す。
勉強会は、思わぬ場面で役立つことがあります。以前、お客様から8CPUのマシン上で動作しているオラクル製品でトラブルが発生したという連
絡を受けたとき、Amazon EC2上で環境を再現して解決することができました。実際に8CPUのマシンを用意するのは大変ですが、Amazon
EC2を勉強会で活用していた経験が仕事でも役立ったのです。こういう「つながり」を経験するのは楽しいですね。なお、このことを「Oracle
Database Developer Days」というイベントで話すことになっています。
会員は東京と福岡にて、それぞれmixiを使って検索し、ダイレクトメッセージを送って募りました。自己アピールが出来る人に参加してもらい
たかったので、mixiは目的に合致していたのです。現在も告知や募集はmixi経由のみで行っています。特に「会員」という形はとっていませんが、これ
までの勉強会の参加者は、のべ60名くらいでしょうか。会員は20代後半から30代の技術者が中心で、中堅から大規模企業のSEが多いようです。もちろん
若い世代の方もおりますし、オラクルを知らないという方もいらっしゃいます。そういった方々にも楽しんでいただけるように工夫を凝らしています。そして参
加者の方々に共通していることは、やはり「技術を身につけること」「人と出会うこと」の楽しさと重要性を知っているということで、これこそ勉強会の主旨で
もあるのです。
――今回の勉強会はどのような内容でしょうか?
吉田氏:
今回は、休刊になってしまった「DBマガジン」の編集者をお呼びして、技術者でなく編集者の視点でオラクル製品やデータベースについて語って
いただきました。勉強会のテーマの選定は、そのときのトレンドや、いま会いたい人物を候補にあげることにしています。アポが取れたらそれに合わせて開催す
ることも多いです。
勉強会の開催は月に一回。東京と福岡でそれぞれ開催しています。以前は出張に合わせて開催していましたが、最近では勉強会だけのために行くことも多くなっています。勉強会が東京と福岡の橋渡しになってくれたら嬉しいと考えています。
――勉強会の今後の展望がございましたら教えてください。
吉田氏:
Oracle
LOVERSが開催する勉強会の大きな特長は、「オラクル社内で開催するので、オラクル製品を実際に使える」ということと、「オラクルを支える人たちを呼
んでスピーチしてもらえる」ということです。みんな一緒に製品に触れて勉強できることは大きなメリットで、普通のメーカーでは絶対にあり得ないことだと思
います。また、普段はなかなか会えない「ネ申」と呼ばれる人に会えるというのも、Oracle LOVERSならではのことです。
技術者は、ときに派遣切りなどの精神的なプレッシャーにさらされることもありますが、基本的には技術が好きな人ばかりです。仕事のストレスもあるけど、技術が好きな人は技術に触れることで喜ぶ、元気になれる。勉強会は、その楽しさを分かち合う場となっています。
技術者に必要なのは、「広く浅く知っておく基礎力」と「コミュニケーション能力=質問力」、そして「常に10年後をイメージすること」。そう
私は考えています。たとえJavaの開発者でもネットワークやハードウェアは知っておくべきですし、どのタイミングでどんな質問をするか、状況を見ながら
質問の設計ができる「質問力」も重要です。
さらには、今必要なものではなく、10年後がどうなっているか、そのために必要なことは何かを常に考え、今やるべきことを決断するのも大事で
す。自分が「こうなりたい」とアピールしていけば、周囲がアドバイスしてくれます。それをちゃんとしたコミュニケーションで受け取って実践していくことが
重要だと思います。
勉強会では、オラクル製品の「技術的な部分」とオラクル製品やデータベースに
関する本を書かれた方など「人の部分」の「二本柱」を充実させながら続けていきます。今後も東京と福岡で開催予定ですが、オラクルの支社は全国に6、7カ
所ありますので、全会場でも開催してみたいですね。
現在、特に興味を持っているのは「Oracle
Coherence」です。ヨドバシカメラが、自社通販サイトのパフォーマンス改善のために採用したことでも知られています。これを実際にAmazon
EC2上に構築して触ってみたり、オラクルの製品担当などの方にスピーチしてもらうなどといったことをやりたいと考えています。こういった「技術に実際に
触れる」「人と出会う」場を提供していきたいです。
サラリーマンやエンジニア、パートであっても、たとえオラクルを知らなくても、「技術で世の中を良くしていきたい」と思っている人は参加して
ほしい。現在もそういう人たちが集まっているので、ぜひ出会ってほしいと思います。技術を有している人が動けば、何かが変わっていきます。
(完)
- 「Oracleライフ」を満喫した秋の一日 ユーザー会主催「勉強会」レポート
- ユーザー会インタビュー1 「データベース技術者が集まる場を作りたかった」「データベース友の会」主宰者 Quatrex氏
- ユーザー会インタビュー2 「ドレスコードがなく、コスプレありの勉強会です」「わんくま同盟」主宰者 中 博俊氏
- ユーザー会インタビュー3 「『技術で世の中を良くしたい』と思う人が集まれば、何かが変わる」 「Oracle LOVERS」主催者 吉田 基崇氏
- ユーザーコミュニティ座談会(前編)「データベーススペシャリスト資格不合格が勉強会のきっかけでした」
- ユーザーコミュニティ座談会(後編)「会社の外に出ていろいろな世界が広がっていることを知ることも大事」